トップ > 特集・連載 > 知るコレ! > 記事一覧 > 記事

ここから本文

知るコレ!

伝統や文化 「物語」で発信 日本遺産

写真

 「日本遺産(いさん)」という言葉(ことば)を聞いたことがありますか? ある地域(ちいき)の古い建物(たてもの)や伝統芸能(でんとうげいのう)などの文化財(ぶんかざい)を一つのテーマで物語(ものがた)り、魅力(みりょく)を発信(はっしん)する仕組(しく)みです。各地(かくち)が申請(しんせい)した候補(こうほ)を国の役所(やくしょ)の文化庁(ちょう)が審査(しんさ)し、年1回、認定(にんてい)しています。昨年認(さくねんみと)められた「忍(しの)びの里 伊賀(いが)・甲賀(こうか)」を例(れい)に、どんなものが認められ、認められるとどうなるのか見てみましょう。 (佐橋大(さはしひろし))

 滋賀県南部(しがけんなんぶ)の甲賀(こうか)市と三重(みえ)県西部の伊賀(いが)市は「忍者(にんじゃ)ゆかりの地」として知られています。昨年(さくねん)四月、文化庁(ぶんかちょう)は、二つの市が申請(しんせい)した「忍(しの)びの里 伊賀・甲賀」を日本遺産(いさん)に認定(にんてい)しました。副題(ふくだい)(テーマ)は「リアル忍者を求(もと)めて」です。

 忍者というと、奇抜(きばつ)なアクションで敵(てき)と戦(たたか)い、忍術(にんじゅつ)で姿(すがた)を隠(かく)すシーンを思い浮(う)かべるかもしれません。「でも実際(じっさい)は、もう少し地に足のついた存在(そんざい)だったのかも」と甲賀市教育委員会歴史文化財課(きょういくいいんかいれきしぶんかざいか)の長峰透(ながみねとおる)課長は話します。

 武士(ぶし)が各地(かくち)で争(あらそ)っていた戦国時代(せんごくじだい)。甲賀や伊賀には、それぞれ小さな土地を治(おさ)める「地侍(ぢざむらい)」がたくさんいて、協力(きょうりょく)して地域(ちいき)を守(まも)っていました。長峰さんは「忍者の実像(じつぞう)は、地侍だった」と言います。

 地侍は外敵の襲来(しゅうらい)に備(そな)え、そこかしこに城(しろ)を築(きず)きました。山で心身(しんしん)を鍛(きた)える山岳宗教(さんがくしゅうきょう)が盛(さか)んな土地なので、そこで身(み)に付(つ)けた体力や技術(ぎじゅつ)、薬草(やくそう)などの知識(ちしき)が、忍術につながったとの見方もあります。「地侍同士(どうし)でも、相手(あいて)の腹(はら)の探(さぐ)り合いがあったでしょう。そうして磨(みが)いた技術で、各地の大名に仕(つか)える人もいました」

 そんな忍者の実像を物語(ものがた)るのに欠(か)かせない歴史的(てき)な場所(ばしょ)や資料(しりょう)などが、日本遺産に認(みと)められました。地侍の合議(ごうぎ)の場であり、心のよりどころでもあった「油日神社(あぶらひじんじゃ)」(甲賀市甲賀町)や、地侍が拠点(きょてん)にした小さな城跡(しろあと)、薬(くすり)の古い資料などです。山岳宗教の修練(しゅうれん)の場も含(ふく)まれます。

 それほど有名(ゆうめい)ではない建物(たてもの)やその跡でも「忍者」という海外にも広く知られたキーワードでくくることで、多くの人に関心(かんしん)を持(も)ってもらえるのではと、両(りょう)市は申請しました。甲賀市観光企画推進(かんこうきかくすいしん)課の担当者(たんとうしゃ)は「忍者のさまざまな側面(そくめん)に思いをはせてもらえれば」と話します。

 甲賀市、伊賀市や観光協会でつくる協議会は、忍者関連(かんれん)の文化財を「点」ではなく「面(めん)」で紹介(しょうかい)するパンフレットを、日本語と英語(えいご)で作りました。文化財に導(みちび)くように統一(とういつ)したデザインの案内板(あんないばん)も立てました。ガイドも養成(ようせい)する予定(よてい)です。文化庁は二〇一八年度(ねんど)の予算(よさん)に十三億(おく)円を盛(も)り込(こ)み、こうした全国(ぜんこく)の自治体(じちたい)の取(と)り組みを応援(おうえん)しています。

 日本遺産(いさん)は、観光客(かんこうきゃく)を増(ふ)やし、地域(ちいき)を元気にしようと三年前に国が始(はじ)めました。

 名前の似(に)ている「世界(せかい)遺産」は遺産の保護(ほご)も目的(もくてき)にしているので、その名にふさわしい価値(かち)があるかが厳(きび)しく審査(しんさ)され、遺産を保存(ほぞん)する体制(たいせい)の整備(せいび)も求(もと)められます。一方、日本遺産は「地域の特色(とくしょく)だけでなく日本の魅力(みりょく)も伝(つた)える内容(ないよう)か」「地域づくりの具体的(ぐたいてき)な方策(ほうさく)が示(しめ)されているか」「地域活性化(かっせいか)を進(すす)める体制があるか」という主(おも)に三つの基準(きじゅん)を満(み)たすかをチェックされます。保全(ほぜん)体制の整備までは求められません。

 昨年度(さくねんど)までの三年で、延(の)べ二百二十九件(けん)の申請(しんせい)があり、認定(にんてい)された日本遺産は五十四件。北海道(ほっかいどう)から福井県(ふくいけん)までの日本海側(がわ)の七道県にまたがる「北前船寄港地(きたまえぶねきこうち)・船主集落(せんしゅしゅうらく)」や、愛知(あいち)県常滑(とこなめ)市の常滑焼(やき)や同県瀬戸(せと)市の瀬戸焼など古くからの焼(や)き物(もの)の産地を結(むす)んだ「日本六古窯(ろっこよう)」、岐阜(ぎふ)市の「『信長公(のぶながこう)のおもてなし』が息(いき)づく戦国城下町(せんごくじょうかまち)・岐阜」などが選(えら)ばれています=表(ひょう)。

 文化庁(ぶんかちょう)は、東京五輪(とうきょうごりん)・パラリンピックが開(ひら)かれる二〇二〇年までに百件に増やしたいといいます。今年も近く、新たな日本遺産が発表(はっぴょう)される予定(よてい)です。

忍者(にんじゃ)ゆかりの地を紹介(しょうかい)するパンフレット。英語(えいご)や子ども向(む)けにも作った

写真
 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索