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知るコレ!

神に感謝日中に断食 ラマダン

日没(にちぼつ)後の食事(しょくじ)「イフタル」の食卓(しょくたく)を囲(かこ)む人たち=2016年、名古屋(なごや)市中村区(なかむらく)の名古屋モスクで(写真(しゃしん)は名古屋モスク提供(ていきょう))

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 「ラマダン」という言葉(ことば)を見聞きするようになりました。イスラム教徒(きょうと)が使(つか)う暦(こよみ)の9番目の月のことで、人々は約(やく)30日間、日の出から日没(にちぼつ)までサウム(断食(だんじき))を行い、食べたり飲(の)んだりしません。今年は5月15日ごろ始(はじ)まります。イスラム教徒の人たちはどのように過(す)ごしているのでしょう。 (辻紗貴子(つじさきこ))

 イスラムの暦(こよみ)は日本の私(わたし)たちが使(つか)う太陽暦(たいようれき)と違(ちが)い、月の満(み)ち欠(か)けに基(もと)づく太陰暦(たいいんれき)。ラマダンは毎年およそ十日ずつずれてやってきます。日の長い夏は断食(だんじき)する時間もより長くなります。アジアや中東地域(ちゅうとうちいき)など世界中(せかいじゅう)に約(やく)十六億(おく)人いるというイスラム教徒(きょうと)が同じようにラマダンを経験(けいけん)します。

 イスラム教の礼拝所(れいはいじょ)、名古屋(なごや)モスク(名古屋市中村区(なかむらく))を訪(たず)ねると、理事(りじ)サラ・クレシ好美(よしみ)さんが「ラマダンの断食はイスラム教徒の五つの義務(ぎむ)の一つ。神(かみ)の恵(めぐ)みに感謝(かんしゃ)し、貧(まず)しい人々の苦労(くろう)を知る意味(いみ)もあります」と教えてくれました。

 つらくはないのでしょうか。「当たり前のこととして好(す)きですることです」とクレシさん。「やるという気持(きも)ちが大事。体調(たいちょう)の悪(わる)い人は無理(むり)に全(まっと)うする必要(ひつよう)はなく病人(びょうにん)や妊婦(にんぷ)はやりません。途中(とちゅう)でできなくなっても別(べつ)の日にやり直せます。世界中のイスラム教徒との連帯(れんたい)も感じられます」

 日没(にちぼつ)後にはお楽しみもあります。普段(ふだん)より豪華(ごうか)な食事「イフタル」が出され、家族(かぞく)や親戚(しんせき)、友人と集(あつ)まり毎晩(まいばん)パーティーのようになります。名古屋モスクでも各国(かっこく)のごちそうを持(も)ち寄(よ)って大勢(おおぜい)で楽しむそうです。

 期間中(きかんちゅう)は貧しい人に食事を振(ふ)る舞(ま)うことも勧(すす)められるので、イスラム地域(ちいき)は一年のうちで最(もっと)も食品(しょくひん)の売り上げが伸(の)びます。夜中に食事をするので太る人も。「ダイエットには向(む)かない時期かもしれません」。ラマダン明けには「イード」というお祭(まつ)りがあり、子どもにお小遣(こづか)いをあげたり服(ふく)や下着(したぎ)を新調(しんちょう)したりと、日本のお正月にも似(に)ています。

 断食は一般的(いっぱんてき)に十歳(さい)前後で始(はじ)めます。日本では子どもが「体に悪(わる)いから水だけでも飲(の)みなさい」などと学校から注意(ちゅうい)を受(う)けることもあるそうです。「いろんな文化(ぶんか)や宗教(しゅうきょう)の人がいるという理解(りかい)が進(すす)むといいですね」とクレシさんは願(ねが)います。

 イスラム教徒(きょうと)にとって大切なラマダンですが、テレビのニュースなどで「ラマダン期間中(きかんちゅう)はテロの増加(ぞうか)に注意(ちゅうい)を」といった言葉(ことば)を聞くことがあります。テロとは、政治的(せいじてき)な目的(もくてき)を果(は)たすために暴力(ぼうりょく)が振(ふ)るわれること。なぜでしょうか?

 現代(げんだい)イスラム研究(けんきゅう)センター(東京都調布(とうきょうとちょうふ)市)理事長(りじちょう)の宮田律(みやたおさむ)さん(62)は「近年、六月から十月の季候(きこう)の良(よ)い時期にラマダンが多かったためかもしれません」と話します。人出が多いほどテロは効果(こうか)が高まり、起(お)こりやすくなります。その時期にラマダンが重(かさ)なり、「ラマダン=テロ」の印象(いんしょう)が強まったというのです。

 国によっても違(ちが)います。アメリカのメリーランド大がまとめた「グローバル・テロリズム・データベース」に基(もと)づきオランダの調査機関(ちょうさきかん)が調(しら)べたところ、二〇〇五〜一六年のエジプトとイスラエルではラマダン中のテロは、それ以外(いがい)の期間の倍(ばい)でしたが、バングラデシュやイランなどは約(やく)半分。「警戒(けいかい)は必要(ひつよう)ですが、ラマダンとテロの関連(かんれん)を強調(きょうちょう)するのは適切(てきせつ)ではない」

 一五〜一七年には過激派組織(かげきはそしき)「イスラム国」(IS(アイエス))が、ラマダン中のテロを呼(よ)び掛(か)ける声明を出しました。ラマダン中に善(よ)い行いをすると天国に行ける可能性(かのうせい)が高くなるという教義(きょうぎ)を悪用(あくよう)したのです。「本来の教えは『神(かみ)の創造物(そうぞうぶつ)である人を殺(ころ)してはいけない』とあり、許(ゆる)されないこと。イスラム教全体(ぜんたい)に厳(きび)しい目が向(む)けられたのは残念(ざんねん)です」

 異(こと)なる文化(ぶんか)を理解(りかい)するには物事(ものごと)の一面(いちめん)だけを見て判断(はんだん)しないことが大切です。

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