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知るコレ!

「悪い予感」に脳が反応 緊張

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 春は、新しい生活が始(はじ)まる季節(きせつ)。入学や進級(しんきゅう)でみんなの前であいさつすることも増(ふ)えますね。そんな時、胸(むね)がドキドキしたり、声が上ずったりと緊張(きんちょう)する人も多いかもしれません。今回は、この緊張がどのようにして起(お)こるのか、抑(おさ)える方法(ほうほう)はあるのか調(しら)べてみました。 (芦原千晶(あしはらちあき))

 「緊張(きんちょう)って、他人(たにん)の前で失敗(しっぱい)するんじゃないか、嫌(いや)なことが起(お)こるんじゃないか、という悪(わる)い予感(よかん)から始(はじ)まるんですよ」

 そう教えてくれたのは、愛知県岡崎(あいちけんおかざき)市の生理学研究所(せいりがくけんきゅうじょ)で、脳(のう)を研究している神経内科医(しんけいないかい)の柿木隆介(かきぎりゅうすけ)さん(64)です。悪い予感がすると、脳の中の扁桃体(へんとうたい)という部分(ぶぶん)が反応(はんのう)。「扁桃体は緊張や不安(ふあん)、怒(いか)りなどの感情(かんじょう)をコントロールする部位(ぶい)。ネズミのような小動物(しょうどうぶつ)にもあり、敵(てき)に襲(おそ)われて闘(たたか)ったり逃(に)げたりする時に活動(かつどう)します」。その後、扁桃体は視床下部(ししょうかぶ)という場所(ばしょ)に命令(めいれい)を出し、腎臓(じんぞう)のそばにある副腎(ふくじん)などに働(はたら)き掛(か)け、複数(ふくすう)のホルモンが出ます。

 このうちアドレナリンやノルアドレナリンは、心拍数(しんぱくすう)や血圧(けつあつ)を上げ、筋肉(きんにく)を興奮(こうふん)させます。緊張して、自分で分かるほど心臓がドキンドキンとしたり、手が震(ふる)えたりするのは、そのせいだそうです。「体中に栄養(えいよう)と酸素(さんそ)を行き渡(わた)らせた最高(さいこう)の状態(じょうたい)でもあるんですよ。この2つのホルモンは怒(おこ)っている時にも出ます。怒りで血圧が高くなったり手が震えたりするでしょ。怒りと緊張は似(に)ています」と柿木さん。

 一方、不安にさせるステロイドというホルモンも出ます。そうすると悪い予感がどんどん増(ふ)え、昔(むかし)の失敗した記憶(きおく)もよみがえり、パニックに陥(おちい)って普通(ふつう)に考えられなくなることも。「人は脳の前頭葉(ぜんとうよう)という理性(りせい)をつかさどる部分が発達(はったつ)していますが、緊張し、パニックになると前頭葉が働かなくなるからです」と話しました。

 では、緊張を減(へ)らす方法(ほうほう)は。「気を紛(まぎ)らわせること。スポーツ選手(せんしゅ)も試合(しあい)前に音楽を聴(き)いたり、体を動(うご)かしたりしているでしょ」。深呼吸(しんこきゅう)や手を少しつねって気をそらせるのもOK(オーケー)。字を書く、簡単(かんたん)な計算やゲームをするなど、前頭葉が働きそうなことをするのもいいそうです。

 もう一つ、自信(じしん)を付(つ)けて、悪い予感をなくすことも大切。幼(おさな)いころは失敗してもへっちゃらですが、10代(だい)になると羞恥心(しゅうちしん)も強くなります。日本人は、遺伝的(いでんてき)に緊張しやすい人が多いことも分かっています。「緊張は外から見ても分かりにくいけど、他(ほか)の人もそうだと思うと気が楽になりますよ。家族(かぞく)や仲(なか)の良(よ)い友達(ともだち)の前であいさつなどを練習(れんしゅう)して、成功体験(せいこうたいけん)を重(かさ)ねて自信に変(か)えてくださいね」

 緊張(きんちょう)の度合(どあ)いが強すぎて、学校や大勢(おおぜい)の人がいる場所(ばしょ)に行けなくなったり、人と食事(しょくじ)するのが怖(こわ)くなったりする病気(びょうき)もあります。「社交不安症(しゃこうふあんしょう)といい、小学校高学年から中学生で発症(はっしょう)することが多いです」と語ったのは、不安症の専門家(せんもんか)で「なごやメンタルクリニック」(名古屋(なごや)市中村区(なかむらく))理事長(りじちょう)の貝谷久宣(かいやひさのぶ)さん(74)。

 社交不安症にかかる人は全世界(ぜんせかい)で5%ほどいて、先進国(せんしんこく)では開発途上国(かいはつとじょうこく)の3倍(ばい)多いそうです。「引きこもりとの関(かか)わりが指摘(してき)されているほか、うつや、まれに統合失調(とうごうしっちょう)症になる人もいます」。以前(いぜん)は緊張しやすい性格(せいかく)の問題(もんだい)とされていましたが、約(やく)15年前、社交不安症によく効(き)く薬(くすり)が見つかり、治療(ちりょう)できる病気と認識(にんしき)されるようになってきました。

 貝谷さんも、緊張を和(やわ)らげるには、3分間ほどの腹式呼吸(ふくしきこきゅう)が効果的(こうかてき)と言います。「でも、緊張による苦痛(くつう)が強く、日常(にちじょう)生活が送(おく)れないほど困(こま)っている時は、1人で悩(なや)まないで、社交不安症を専門に診(み)る精神科(せいしんか)や心療内科(しんりょうないか)を受診(じゅしん)してね」と助言(じょげん)してくれました。

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