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知るコレ!

日本国内にも6カ所 氷河

登山道(とざんどう)からも間近に見られる内蔵助雪渓(くらのすけせっけい)=富山県立山(とやまけんたてやま)町で

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 氷河(ひょうが)というと、ヒマラヤ山脈(さんみゃく)のように、とても寒(さむ)く、高い場所(ばしょ)にあるイメージがありませんか。実(じつ)は、日本にもあるのです。1月に、新たに3カ所が氷河だとする論文(ろんぶん)が日本地理学会(ちりがっかい)の専門誌(せんもんし)に掲載(けいさい)され、国内の氷河は6カ所になりました。万年雪との違(ちが)いや、調査(ちょうさ)の方法(ほうほう)について専門家に聞きました。 (佐橋大(さはしひろし))

 富山県(とやまけん)、長野(ながの)県などにまたがる北アルプスには、谷やくぼみに夏まで残(のこ)った雪「雪渓(せっけい)」がいくつもあります。多くは標高(ひょうこう)二千メートル以上(いじょう)にあり、一年中消(き)えないと「万年雪」といいます。このうち、富山県立山(たてやま)町の立山近くにある内蔵助(くらのすけ)雪渓など、三つの万年雪が氷河(ひょうが)だと新たに分かりました。

 氷河は、積(つ)もった雪が固(かた)まって氷(こおり)の塊(かたまり)になり、その重(おも)みで氷が一年を通じて低(ひく)い方に動(うご)く状態(じょうたい)を指(さ)します。傾斜(けいしゃ)にもよりますが、氷河になるには氷の厚(あつ)さが二十五メートル以上必要(ひつよう)といいます。これより薄(うす)いと、氷が動かないことが計算で分かっています。研究者(けんきゅうしゃ)は特殊(とくしゅ)なレーダーを使(つか)って、氷の厚さを測(はか)り、氷河かどうか見通しを立てます。

 例(たと)えば、日本三大雪渓の一つで、長野県白馬(はくば)村にある万年雪「白馬大雪渓」には、氷がほとんどなく、氷河の可能性(かのうせい)はありません。国内六つの氷河の調査(ちょうさ)すべてに関(かか)わった富山県立山カルデラ砂防博物館(さぼうはくぶつかん)(立山町)の飯田肇学芸課長(いいだはじめがくげいかちょう)(62)は「雪渓の広さと、氷河のできやすさは、必(かなら)ずしも関係(かんけい)ありません。白馬大雪渓は、谷が広く、雪解(ゆきど)け水が谷筋(たにすじ)に多く集(あつ)まり、氷が下から解(と)かされてしまいます」と説明(せつめい)します。

 厚い氷があると分かったらそれが動いていることを研究者は確認(かくにん)します。衛星利用測位(えいせいりようそくい)システム(GPS(ジーピーエス))を使い、氷の塊に突(つ)き刺(さ)した数メートルの棒(ぼう)の先の位置(いち)を測り、約(やく)一カ月後に再(ふたた)び位置を調(しら)べます。位置のずれが、動いた距離(きょり)です。

 秋に主(おも)な調査をします。氷の上の雪が一番薄い時期(じき)で、この時に動いていれば、年中動いていると判断(はんだん)されるためです。

 調査の結果(けっか)、長野県大町(おおまち)市の鹿島槍ケ岳(かしまやりがたけ)(二、八八九メートル)の中腹(ちゅうふく)にあるカクネ里(ざと)雪渓の氷は厚さが三十メートルを超(こ)え、一年で二メートル以上、動いていることが分かりました。一方、内蔵助雪渓では、氷は厚さ約二十五メートルで年間約三センチの移動(いどう)にとどまるものの、水流(すいりゅう)でつくられた氷河独特(どくとく)の縦穴(たてあな)「ムーラン」が確認されています。

 国内で初(はじ)めて氷河が認(みと)められたのは二〇一二年。調査機器(きき)が小型化(こがたか)し、険(けわ)しい場所にある雪渓に近づきやすくなったのと、GPSが導入(どうにゅう)され、氷の移動が正確(せいかく)に記録(きろく)されるようになったことが調査の進(すす)んだ要因(よういん)といいます。

 日本のような温暖(おんだん)な地域(ちいき)で、ヒマラヤのような四千メートルを超(こ)える高地でもないのに氷河(ひょうが)ができるのは、実(じつ)は、とても珍(めずら)しいと飯田(いいだ)さんは説明(せつめい)します。

 氷河を成(な)り立たせているのは、冬に降(ふ)る大量(たいりょう)の雪です。富山県(とやまけん)などの北陸(ほくりく)地方は世界(せかい)でも有数(ゆうすう)の豪雪(ごうせつ)地域。東側(ひがしがわ)の斜面(しゃめん)で、多くの氷河が確認(かくにん)されています。「東側は、冬の季節風(きせつふう)の風下で、雪が吹(ふ)きだまりやすいから」と飯田さん。日本には、かつて氷河が削(けず)った地形が各地(かくち)にあり、一万年以上(いじょう)前には、今より多くの場所(ばしょ)に氷河がありました。今は、十分な量の雪に加(くわ)えて、谷の向(む)きや広さなど地形の条件(じょうけん)が重(かさ)なったところに氷河が残(のこ)っています。

 氷河が確認されたことは、氷河研究(けんきゅう)の第一歩(だいいっぽ)といいます。「今後、調査(ちょうさ)を続(つづ)けることで、日本の氷河の特性(とくせい)が分かるかもしれない。氷(こおり)は過去(かこ)の空気などを閉(と)じ込(こ)めていて、昔(むかし)の環境(かんきょう)を知る手がかりにもなる」と飯田さんは、研究の意義(いぎ)を語ります。

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