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知るコレ!

低コストで超小型衛星を 電柱ロケット

超小型衛星(ちょうこがたえいせい)を搭載(とうさい)し打(う)ち上げられる小型ロケット「SS(エスエス)−520」5号機(ごうき)=3日午後2時3分、鹿児島県(かごしまけん)の内之浦宇宙空間観測所(うちのうらうちゅうくうかんかんそくしょ)で

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 今月初(はじ)め、宇宙航空研究開発機構(うちゅうこうくうけんきゅうかいはつきこう)(JAXA(ジャクサ))が衛星(えいせい)を搭載(とうさい)したロケットとしては世界最小級(せかいさいしょうきゅう)の「SS(エスエス)−520」5号機(ごうき)を打(う)ち上げて注目(ちゅうもく)を集(あつ)めました。大きさはなんと「電柱(でんちゅう)サイズ」。「電柱ロケット」とも呼(よ)ばれるこれほど小さなロケットが出てきた理由(りゆう)とは? 宇宙開発の今を探(さぐ)ってきました。 (世古紘子(せこひろこ))

 「SS(エスエス)−520」5号機(ごうき)は3日午後2時3分、鹿児島県(かごしまけん)の内之浦宇宙空間観測所(うちのうらうちゅうくうかんかんそくしょ)から打(う)ち上げられました。直径(ちょっけい)52センチ、長さ9・54メートルで、重(おも)さは2・6トン。日本の主力(しゅりょく)ロケット「H2A(エイチツーエー)」と長さを比(くら)べると5分の1とコンパクトです。

 「このロケットは、超小型衛星(ちょうこがたえいせい)を低(てい)コストで打ち上げるため、実験(じっけん)用に開発(かいはつ)されました」。そう話すのは、ロケットの研究(けんきゅう)・開発を担当(たんとう)したJAXA(ジャクサ)宇宙科学研究所(けんきゅうしょ)(神奈川(かながわ)県相模原(さがみはら)市)の羽生宏人准教授(はぶひろとじゅんきょうじゅ)(48)。

 実(じつ)はロケットは、先端部分(せんたんぶぶん)に東京(とうきょう)大が開発した重さ3キロの超小型衛星を載(の)せていました。2段目(にだんめ)、3段目とエンジンを切り離(はな)しながら上昇(じょうしょう)し、7分半後には地球(ちきゅう)を回る軌道(きどう)に衛星を乗(の)せることに成功(せいこう)しました。

 超小型衛星は近年、日本やアメリカなどの会社が手掛(てが)け、専用(せんよう)に打ち上げる小型ロケットの開発が盛(さか)んになっています。お金をかけず、衛星を軌道に乗せられる小型ロケットを造(つく)るには−。そんな課題(かだい)に挑(いど)んだ羽生さんらはJAXAが前から所有(しょゆう)する観測用ロケット「SS−520」を活用。衛星を軌道投入(とうにゅう)できるまで加速(かそく)するよう2段式(しき)を3段式にして対応(たいおう)しました。

 もう1つ、費用(ひよう)を抑(おさ)えるために挑戦(ちょうせん)したのが家電製品(せいひん)などに使(つか)われる一般(いっぱん)用部品を使うことでした。「通常(つうじょう)はロケット専用の特注(とくちゅう)品を用います。でも今回は、もともと品質(ひんしつ)が高い日本の部品をそのまま転用(てんよう)し、機能(きのう)するかを確(たし)かめました」

 車やスマートフォン、デジタルカメラといった身近(みぢか)な製品の部品を組み込(こ)んだ結果(けっか)、費用は衛星も含(ふく)め5億(おく)円程度(ていど)に。羽生准教授は「通常は何10億とかかる。準備期間(じゅんびきかん)も約(やく)2年と早く実現(じつげん)できました」と成果(せいか)を説明(せつめい)します。JAXAは、今回の打ち上げで得(え)られたデータを民間企業(みんかんきぎょう)にも提供(ていきょう)する予定(よてい)で「小型ロケット開発のヒントにしてほしい」と活用を呼(よ)び掛けます。

 新たなロケット開発(かいはつ)を促(うなが)す超小型衛星(ちょうこがたえいせい)とは、どんなものなのでしょうか。衛星の設計(せっけい)から製造(せいぞう)、運用(うんよう)まで手掛(てが)けるベンチャー企業(きぎょう)「アクセルスペース」(東京都中央区(とうきょうとちゅうおうく))広報担当(こうほうたんとう)の三宮文香(さんのみやふみか)さん(44)は「重(おも)さが100キロ以下(いか)が超小型とされています」と説明(せつめい)します。

 人工衛星は1957年に世界(せかい)で初(はじ)めて打(う)ち上げられて以降(いこう)、気象観測(きしょうかんそく)や軍事(ぐんじ)などの目的(もくてき)で、各国(かっこく)が開発を進(すす)めてきました。大きさは市バスくらいで、重さも数トン。「超小型衛星は小型冷蔵庫(れいぞうこ)ほど。費用(ひよう)も約(やく)100分の1の数億(おく)円で造(つく)れます」

 民間(みんかん)で手掛ける会社は国内では2社だけ。10年前にできたアクセルスペースは2013年から、気象情報(じょうほう)会社などの要望(ようぼう)を受(う)けて計3基(き)を打ち上げてきました。いずれもカメラや通信機(つうしんき)を載(の)せて地球(ちきゅう)上を回り、北極海(ほっきょくかい)の氷(こおり)や火山活動(かつどう)、台風の観測といった目的を果(は)たしています。

 22年までに最新(さいしん)の超小型衛星50基を打ち上げる計画も進めています。大きさ2・5メートルのものを見分けられる精度(せいど)があり、地球全土(ぜんど)の3分の2ほどをカバー。撮影(さつえい)した画像(がぞう)や、そこから人工知能(ちのう)(AI(エーアイ))が分析(ぶんせき)した情報を販売予定(はんばいよてい)です。農作物(のうさくもつ)の育成状況(いくせいじょうきょう)を確認(かくにん)したり、災害(さいがい)時の被害(ひがい)を把握(はあく)したりと多方面(たほうめん)で活用が期待(きたい)されています。

 三宮さんは「10年後くらいには、みなさんが超小型衛星から得(え)られた情報を使(つか)うのが当たり前になっているかもしれません」と未来(みらい)を想像(そうぞう)します。

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