トップ > 特集・連載 > 知るコレ! > 記事一覧 > 記事

ここから本文

知るコレ!

パラ五輪で新競技に 障害者スノボ

ゲレンデを滑(すべ)り降(お)りる義足(ぎそく)のスノーボーダー山口明美(やまぐちあけみ)さん

写真

 熱戦(ねっせん)を繰(く)り広げる平昌冬季五輪(ピョンチャンとうきごりん)に続(つづ)き、3月9日からは障害者(しょうがいしゃ)スポーツの祭典(さいてん)、平昌冬季パラリンピックが始(はじ)まります。今回から競技(きょうぎ)として新たにスノーボードが加(くわ)わり、日本人選手(せんしゅ)のメダルも期待(きたい)されています。障害者スノーボードを取材(しゅざい)しました。 (芦原千晶(あしはらちあき))

 スイ、スイ、スーイ。二月七日、岩手県八幡平(いわてけんはちまんたい)市の安比高原(あっぴこうげん)のスキー場。右に左に弧(こ)を描(えが)きながら、真(ま)っ白なゲレンデを気持(きも)ちよさそうに滑(すべ)り降(お)りてくるスノーボーダーの中に、神奈川(かながわ)県横浜(よこはま)市瀬谷区(せやく)の調理師山口明美(ちょうりしやまぐちあけみ)さん(60)がいました。「どっちの足が義足(ぎそく)か分かりますか」。滑る姿(すがた)を見てもウエアのパンツ姿を見ても分からず、首をかしげている記者(きしゃ)を見て、にっこり笑(わら)いました。

 山口さんは十二年前、バイクに乗(の)っていて事故(じこ)に遭(あ)い、左脚(あし)の膝(ひざ)から下を切断(せつだん)しました。「みんなの前では明るくしていましたが、一人になると涙(なみだ)が出ました」。けれども「バイクもスノボもやっている義足の人がいるよ」という看護師(かんごし)の言葉(ことば)で希望(きぼう)を持てたと言います。スノボは経験(けいけん)があり、事故の約(やく)五年前に始(はじ)めていたそうです。

 事故から半年ほどで義足を付(つ)け、リハビリに励(はげ)み、一年半後に雪山へ。スノーボードはブーツをはき、滑る板(いた)に両足(りょうあし)を固定(こてい)して滑ります。「足腰(あしこし)を含(ふく)めた全身運動(ぜんしんうんどう)なので、体のバランスも良(よ)くなり、歩行も楽になりました」

 自転車(じてんしゃ)も陸上競技(りくじょうきょうぎ)もこなし、スノボは専用(せんよう)の義足を作るほど好(す)きと言います。「冬の大自然(だいしぜん)の中で滑る爽快感(そうかいかん)が魅力(みりょく)。左右にきれいにターンしたり、大きなこぶを跳(と)んだり、スノボには一つずつできるようになる喜(よろこ)びがあり、障害は関係(かんけい)ありません。死(し)ぬまで滑っていきたい」

 「多くの障害者(しょうがいしゃ)にスノボを楽しんでほしい」−。山口(やまぐち)さんの願(ねが)いを機(き)に、二〇一二年に「障害者スノーボード協会(きょうかい)」(京都(きょうと)市)を立ち上げたのは、以前(いぜん)から山口さんを指導(しどう)していた代表理事(だいひょうりじ)の二星謙一(にぼしけんいち)さん(46)。長野五輪(ながのごりん)(一九九八年)の強化指定選手(きょうかしていせんしゅ)になった実力者(じつりょくしゃ)で、八年後のトリノ五輪ではコーチも務(つと)めました。

 協会には、障害のある二十〜四十代(だい)の約(やく)二十人と、健常(けんじょう)者のサポーター約三十人が所属(しょぞく)。義足(ぎそく)になって初(はじ)めてスノボをする人も多いそうです。「膝(ひざ)下の義足ならばそのままで、膝上の義足ならば専用(せんよう)の部品(ぶひん)を使用(しよう)して始(はじ)められます」と二星さん。冬のスポーツはいろいろありますが「スノボは一枚(まい)の板(いた)に両足(りょうあし)をつけるので、健常な足で義足をカバーできるのが利点(りてん)です」。一五年には初めて国内大会を開催(かいさい)し、山口さんが唯一(ゆいいつ)の女子選手として出場しました。

 「視力(しりょく)の悪(わる)さを補(おぎな)うために眼鏡(めがね)を掛(か)けるのと同じで、障害があっても足りない機能(きのう)を補えば、普通(ふつう)にスノボが楽しめる。日常生活で力を使(つか)い切ってしまう障害者もいると思いますが、日常から再(ふたた)び一歩外へという気持(きも)ちを支(ささ)えたい」

 二星さんは、日本障害者スキー連盟(れんめい)の理事兼(けん)スノーボードチームのヘッドコーチとして、パラリンピックにも関(かか)わっています。平昌(ピョンチャン)大会では、コースを一人で滑(すべ)ってタイムを競(きそ)う「バンクドスラローム」と、二人同時に滑って争(あらそ)う「スノーボードクロス」の二種目(しゅもく)があり、障害の種類(しゅるい)や程度(ていど)で三クラス(女子は二クラス)に分かれています。

 日本からは、右太ももから下が義足の小栗大地(おぐりだいち)、今季(こんき)ワールドカップで優勝(ゆうしょう)した左膝の下からまひの成田緑夢(なりたぐりむ)、日本パラ陸上界(りくじょうかい)のエースで左太ももから下が義足の山本篤(やまもとあつし)−の男子三選手が出場し、高い技術(ぎじゅつ)を競います。

 「スノーボードの面白(おもしろ)さを感(かん)じてほしい。各(かく)選手の歩んできた背景(はいけい)も注目(ちゅうもく)です」と二星さんは話しました。

スノーボード用の義足(ぎそく)を持(も)つ山口(やまぐち)さん。義足でブーツをはき、ボードに固定(こてい)して滑(すべ)る=岩手県八幡平(いわてけんはちまんたい)市で

写真
 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索