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知るコレ!

CO2抑制へ 開発進む バイオジェット燃料

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 植物(しょくぶつ)などから作る航空機燃料(こうくうきねんりょう)「バイオジェット燃料」が注目(ちゅうもく)されています。化石(かせき)燃料よりも二酸化炭素(にさんかたんそ)(CO2(シーオーツー))排出量(はいしゅつりょう)を抑制(よくせい)でき、地球温暖化対策(ちきゅうおんだんかたいさく)につながると考えられているからです。日本では、二〇二〇年の東京五輪(とうきょうごりん)での導入(どうにゅう)を目指(めざ)し、開発(かいはつ)が本格化(ほんかくか)しています。 (今村節(いまむらせつ))

 バイオジェット燃料(ねんりょう)は、藻(も)や木くずなど、生物(せいぶつ)からできた有機性資源(ゆうきせいしげん)「バイオマス」を原料に作られる油(あぶら)です。もともとCO2(シーオーツー)を吸収(きゅうしゅう)して成長(せいちょう)した植物(しょくぶつ)や、植物の性質(せいしつ)をもつ単細胞(たんさいぼう)生物なので、燃(も)やしても、石油(せきゆ)や石炭(せきたん)などの化石(かせき)燃料に比(くら)べれば、CO2排出量(はいしゅつりょう)を減(へ)らせると考えられています。

 世界(せかい)で注目(ちゅうもく)されている原料の一つが、極小(ごくしょう)の藻「微細藻類(びさいそうるい)」。バイオマスの中でもトウモロコシなどと違(ちが)い、食料には多く使(つか)われないのが利点(りてん)です。アメリカや日本で研究(けんきゅう)が進(すす)みます。

 微細藻類のミドリムシ(学名・ユーグレナ)が含(ふく)む油は、研究されているほかの微細藻類に比べて、比重(ひじゅう)が軽(かる)く、ジェット燃料に向(む)いているそうです。ベンチャー企業(きぎょう)「ユーグレナ」は油を抽出(ちゅうしゅつ)する技術(ぎじゅつ)を研究し、三重県多気(みえけんたき)町に設置(せっち)したミドリムシの培養(ばいよう)プールを広げ、神奈川(かながわ)県横浜(よこはま)市の実証(じっしょう)プラントで年間百二十五キロリットルの燃料生産(せいさん)を計画。ただ「実用化(じつようか)には数百倍(ばい)の量が必要(ひつよう)です」と同社の研究担当者(たんとうしゃ)、岩田修(いわたおさむ)さん(34)。全日本空輸(ぜんにっぽんくうゆ)(ANA(エーエヌエー))グループの協力(きょうりょく)を得(え)て効率良(こうりつよ)く大量生産できる方法(ほうほう)を探(さぐ)っています。

 油をより多く含む微細藻類「高速増殖型(こうそくぞうしょくがた)ボツリオコッカス」でも、研究が進んでいます。増殖が速(はや)く、大量生産向き。航空機のジェットエンジンなどを手がける総合重機(そうごうじゅうき)メーカーのIHI(アイエイチアイ)と神戸(こうべ)大などが、共同(きょうどう)で取(と)り組んでいます。

 木くずを炉(ろ)でガス化し液体(えきたい)燃料にする方法もあります。大きな培養プールが要(い)る藻に比べ、省(しょう)スペースで生産可能(かのう)。三菱日立(みつびしひたち)パワーシステムズや中部電力(ちゅうぶでんりょく)、宇宙(うちゅう)航空研究開発機構(かいはつきこう)などが共同研究しています。

 綿(めん)を含んだ古着(ふるぎ)も原料になります。綿繊維(せんい)を分解(ぶんかい)し、できた糖分(とうぶん)を微生物で発酵(はっこう)。酒造(さけづく)りに似(に)ています。ベンチャー企業「グリーン・アース・インスティテュート」が公益財団法人地球環境産業(こうえきざいだんほうじんちきゅうかんきょうさんぎょう)技術研究機構と協力し、二〇二〇年の東京五輪(とうきょうごりん)までに試験飛行(しけんひこう)する計画です。

 バイオジェット燃料(ねんりょう)の開発(かいはつ)が進(すす)む理由(りゆう)の一つは温暖化対策(おんだんかたいさく)。航空(こうくう)分野のCO2排出量(シーオーツーはいしゅつりょう)を、国連(こくれん)の専門機関(せんもんきかん)「国際民間(こくさいみんかん)航空機関」(ICAO(イカオ))は二〇二〇年をピークに抑制(よくせい)し、世界(せかい)の航空会社でつくる「国際航空運送協会(うんそうきょうかい)」は五〇年までに〇五年比(ひ)で半減(はんげん)を目標(もくひょう)とします。共(とも)にバイオジェット燃料を必要(ひつよう)としています。

 二つ目はエネルギーの安定供給(あんていきょうきゅう)です。中東産油国(ちゅうとうさんゆこく)に頼(たよ)る石油以外(せきゆいがい)に、エネルギー源(げん)を自前で確保(かくほ)したいのです。アメリカは軍事的(ぐんじてき)な意味(いみ)からも開発が盛(さか)んで企業(きぎょう)を支援(しえん)しています。

 一一年のKLM(ケーエルエム)オランダ航空を皮切(かわき)りに、フランスやアメリカなど各国(かっこく)の航空会社が導入(どうにゅう)。日本では〇九年、日本航空がアジア初(はつ)の試験飛行(しけんひこう)を行い、ANA(エーエヌエー)、日本貨物(かもつ)航空が続(つづ)きましたが、通常(つうじょう)運航はまだです。

 世界で航空機燃料に占(し)める割合(わりあい)は1%程度(ていど)とみられます。普及(ふきゅう)の課題(かだい)は価格(かかく)。主力(しゅりょく)のバイオジェット燃料は一リットル当たり約(やく)十ドルで、一般(いっぱん)の燃料に比(くら)べ、およそ三十倍(ばい)と高額(こうがく)です。開発を支援する新エネルギー・産業技術総合(さんぎょうぎじゅつそうごう)開発機構(きこう)(NEDO(ネド))の担当者(たんとうしゃ)は「製造工程(せいぞうこうてい)が複雑(ふくざつ)なのが一因(いちいん)」と解説(かいせつ)。日本政府(せいふ)は三〇年ごろの普及に向(む)け、東京五輪(とうきょうごりん)でのフライトを目指(めざ)します。低(てい)コストで大量生産できる技術の確立(かくりつ)が求(もと)められます。

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