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知るコレ!

男女の役割表現 多様に 絵本とジェンダー

多様(たよう)なジェンダー表現(ひょうげん)に触(ふ)れられる絵本の数々=名古屋(なごや)市東区(ひがしく)のウィルあいち情報(じょうほう)ライブラリーで

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 ママとパパが協力(きょうりょく)して家事(かじ)をしたり、動物(どうぶつ)のオス同士(どうし)が愛(あい)し合ったり。絵本の世界(せかい)で、ジェンダー(社会的(しゃかいてき)・文化(ぶんか)的につくられた性別(せいべつ))を描(えが)く表現(ひょうげん)が多様(たよう)になってきました。クリスマスには絵本を贈(おく)られる人もいるでしょう。どんな表現になってきたのでしょう。 (今村節(いまむらせつ))

固定観念変え 家族の生活描く

 ジェンダーとは、女性(じょせい)には女性の、男性には男性の役割(やくわり)があると考えて決(き)められる「女らしさ」や「男らしさ」。社会や文化(ぶんか)によってつくられます。絵本でも、母と父の役割として「お母さんが家事(かじ)や育児(いくじ)をする」「お父さんが仕事(しごと)をする」という表現(ひょうげん)が多く用いられてきました。それが最近(さいきん)、変(か)わっています。

 仕事から帰ったお母さんを玄関(げんかん)で出迎(でむか)えるのはお父さん。子どもを寝(ね)かしつけるのも、お父さん−。今秋、改訂版(かいていばん)が出版(しゅっぱん)された絵本「えほん百科(ひゃっか)」(講談社(こうだんしゃ))に載(の)っている「あいさつ」の絵です。一〜四歳児(さいじ)を対象(たいしょう)に、身(み)の回りの物(もの)の説明(せつめい)や生活のマナーなどを伝(つた)える同書。改訂を機(き)に、家族(かぞく)の描(えが)き方がすっかり変わりました。以前(いぜん)は、出勤(しゅっきん)する父をエプロン姿(すがた)の母が見送(みおく)る絵だったのです。

 「働(はたら)く母親も専業主婦(せんぎょうしゅふ)もいます。多様(たよう)な家庭(かてい)で受(う)け入れられる絵本を目指(めざ)しました」と、編集者(へんしゅうしゃ)は現実(げんじつ)に即(そく)したと説明(せつめい)します。

 来年二月に出版される「ほしのさんちの おそうじ だいさくせん」(ポプラ社)では両親(りょうしん)が家を大掃除(おおそうじ)します。二〇一二年の「ぼくのママはうんてんし」(福音館書店(ふくいんかんしょてん))は運転士(うんてんし)の母と看護師(かんごし)の父が仕事も家事育児も協力(きょうりょく)。作者の大友康夫(おおともやすお)さん(71)は「今はパパも赤ちゃんを抱(だ)っこして歩くのが当たり前です」。

 「働く女性が増(ふ)え、子どもの目に映(うつ)る生活が変わってきたことが背景(はいけい)にあります」と、静岡(しずおか)市の児童(じどう)文学者、草谷桂子(くさがやけいこ)さん(74)。内閣府(ないかくふ)の統計(とうけい)によると、共働(ともばたら)き世帯(せたい)数は一九八〇年に六百十四万でしたが、二〇〇七年に一千万を突破(とっぱ)し、今も増え続(つづ)けています。

 絵本を作る側(がわ)の意識(いしき)も試(ため)されます。えほん百科改訂版を制作(せいさく)する過程(かてい)で、当初(とうしょ)「おしょうがつ」の絵には、上座(かみざ)に父、母の横(よこ)におひつが描かれていました。途中(とちゅう)で、母が奥(おく)に座(すわ)り、おひつを消(け)すよう修正(しゅうせい)。編集者は「最初(さいしょ)は不自然(ふしぜん)に思いませんでした。自分の固定観念(こていかんねん)に気付(きづ)かされました」と振(ふ)り返(かえ)ります。

LGBTテーマ 学校の教材も

 LGBT(エルジービーティー)がテーマの絵本も現(あらわ)れました。LGBTとは、女性(じょせい)を愛(あい)する女性(レズビアン)、男性を愛する男性(ゲイ)、女性も男性も愛する両性愛者(りょうせいあいしゃ)(バイセクシュアル)、体と心の性が一致(いっち)しない人(トランスジェンダー)です。

 二〇〇八年出版(しゅっぱん)の「タンタンタンゴはパパふたり」(ポット出版)は、雄(おす)ペンギン同士(どうし)のカップルが登場(とうじょう)します。LGBTを扱(あつか)った絵本としては日本でも早く、反響(はんきょう)は大きく、社長の沢辺均(さわべひとし)さんは「社会的(しゃかいてき)な関心(かんしん)が高まるにつれ、売れ行きも伸(の)びました」と語ります。王子と王子が結婚(けっこん)する「王さまと王さま」、女の子になりたいテディベアを描(えが)いた「くまのトーマスはおんなのこ」も出版し、学校教材(きょうざい)としても使(つか)われています。

 今年一月に翻訳(ほんやく)出版された「レッド」(子どもの未来社(みらいしゃ))は、ラベルは赤でも中身(なかみ)は青いクレヨンが主人公(しゅじんこう)。編集者(へんしゅうしゃ)は「自分がトランスジェンダーと気付(きづ)いた幼(おさな)い子も含(ふく)めて、『ありのままでいい』というメッセージを届(とど)けたい」と話します。周囲(しゅうい)から受(う)け入れられるまでの混乱(こんらん)や、生きにくさから解放(かいほう)される喜(よろこ)びが描かれました。

 「LGBTへの理解が広がる中で、こうした絵本は増(ふ)えてきました」と草谷(くさがや)さん。「幼いころから自分と違(ちが)う生き方に触(ふ)れ、多様性(たようせい)を受容(じゅよう)する心が育(はぐく)まれるのではないでしょうか」

 ただ、絵本は自由(じゆう)に楽しむもの。価値観(かちかん)を押(お)しつけるのではなく、さりげない描写(びょうしゃ)で思いを伝(つた)えています。

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