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知るコレ!

地球の自転と同じ周期 体内時計

隔離実験室内(かくりじっけんしつない)の個室(こしつ)を案内(あんない)する肥田(ひだ)さん。右上にあるのはカメラ=東京都小平(とうきょうとこだいら)市で

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 来月スウェーデンでノーベル賞(しょう)の授賞式(じゅしょうしき)があります。今年の医学(いがく)生理学賞を受(う)けるのは、体内時計の研究者(けんきゅうしゃ)。体の中に時計があるなんて不思議(ふしぎ)ですよね。研究の歴史(れきし)や成果(せいか)、暮(く)らしとの関(かか)わりについて調(しら)べてみました。 (芦原千晶(あしはらちあき))

 手で触(ふ)れると葉(は)が閉(と)じるオジギソウ。皆(みな)さんも遊(あそ)んだことがあるでしょうか。

 「体内時計の存在(そんざい)が初(はじ)めて報告(ほうこく)されたのは、オジギソウなんです」と語ったのは、植物(しょくぶつ)やラン藻(そう)で体内時計を研究(けんきゅう)してきた近藤孝男(こんどうたかお)・名古屋(なごや)大名誉教授(めいよきょうじゅ)(69)。18世紀(せいき)、フランスの天文学者(てんもんがくしゃ)がオジギソウの葉が昼間に開(ひら)き、夜に閉じる現象(げんしょう)に注目(ちゅうもく)しました。光の条件(じょうけん)で葉が変化(へんか)すると考えられていましたが、オジギソウを暗室(あんしつ)に持(も)っていくと…。

 「暗闇(くらやみ)の中でも、葉は昼の時間帯(じかんたい)に開き、夜には閉じる現象が何日も繰(く)り返(かえ)された。そこで、オジギソウ自身(じしん)の中に、24時間の時を刻(きざ)む時計があると考えられるようになりました」

 20世紀になると、昆虫(こんちゅう)や哺乳類(ほにゅうるい)の行動(こうどう)などでも、約(やく)24時間の周期(しゅうき)のリズムがあると分かり「概日(がいじつ)リズム」と名付(なづ)けられました。ドイツの洞窟(どうくつ)で長期間生活する実験(じっけん)から、人にもあることが判明(はんめい)。1984年、ショウジョウバエを使(つか)って体内時計をつかさどる「時計遺伝子(いでんし)」やタンパク質(しつ)を見つけ、その仕組(しく)みを解明(かいめい)したのがノーベル賞(しょう)を受(う)けるアメリカの研究者3人です。哺乳類や植物、ラン藻でも時計遺伝子は見つかり、研究は広がりました。

 今は哺乳類の体内時計の中枢(ちゅうすう)が、脳(のう)の中央(ちゅうおう)あたりの「視交叉上核(しこうさじょうかく)」にあることや、人の時計遺伝子は主(おも)なものだけで十数個(こ)あることなども分かっています。

 「体内時計は、地球(ちきゅう)の24時間の自転(じてん)による昼夜サイクルに合わせるために発達(はったつ)したと考えられています。皆さんが時計で時間を把握(はあく)しながら暮(く)らすように、動植物も体内時計を使って効率(こうりつ)よく行動したり光合成(こうごうせい)をしたり。でも体内時計が24時間を計るからくりはまだよく分かっていないんですよ」と近藤さんは教えてくれました。

 次(つぎ)に、国立精神(せいしん)・神経医療研究(しんけいいりょうけんきゅう)センター(東京都小平(とうきょうとこだいら)市)の精神生理研究部(ぶ)を訪(おとず)れました。

 肥田昌子(ひだあきこ)室長(46)が案内(あんない)してくれたのは、光の照度(しょうど)や温度(おんど)を自在(じざい)に変(か)えられる隔離実験室(かくりじっけんしつ)。「ここで人の体内時計を調(しら)べます。ベッドや机(つくえ)を置(お)いた個室(こしつ)には寝起(ねお)きの様子(ようす)などが分かるようにカメラを付(つ)け、脳波(のうは)も記録(きろく)しています」。この実験室で睡眠(すいみん)ホルモン「メラトニン」の分泌(ぶんぴつ)リズムを調べ、日本人の体内時計の平均(へいきん)の周期(しゅうき)は24時間7分だと分かりました。睡眠リズムが崩(くず)れる人の場合は24時間29分と、長いことも明らかになりました。

 では、体内時計に一番影響(えいきょう)を与(あた)えるのは? 「答えは光。夜遅(おそ)くに人工照明の光を強く浴(あ)びると、体内時計がずれてしまうので、夜は蛍光灯(けいこうとう)より間接(かんせつ)照明や暖色(だんしょく)の光がお薦(すす)め」。海外を旅(たび)した時に経験(けいけん)する「時差(じさ)ぼけ」も、体内時計の乱(みだ)れが原因(げんいん)です。旅先の時間に体内時計がすぐに合わせられず、夜に眠(ねむ)れなかったり体調(たいちょう)が悪(わる)くなったりします。

 「最近(さいきん)は社会的(しゃかいてき)な時差ぼけも問題(もんだい)です」と肥田さん。休日に遅くまで寝ていると、平日の生活リズムに慣(な)れていた体内時計が狂(くる)ってしまい、時差ぼけのようになるそうです。「休日に睡眠不足(ぶそく)を補(おぎな)うなら、起床(きしょう)や就寝(しゅうしん)の時間はなるべく変えず、午前中にしっかり光を浴び、昼すぎに1時間ほど寝ると良(よ)いですよ」

 20歳(さい)ごろまでは夜の方が活発(かっぱつ)な「夜型(よるがた)」が進(すす)み、その後年齢(ねんれい)とともに「朝型」になっていくことも分かってきました。「体内時計も他(ほか)の体質(たいしつ)と同じく一人一人違(ちが)い、年齢でも変わると知っていてね」と話しました。

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