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知るコレ!

音波を使い地形調べる 海底地図

「日本の技術力(ぎじゅつりょく)の高さを見せたい」と語る中谷武志(なかたにたけし)さん=神奈川県横須賀(かながわけんよこすか)市の海洋研究開発機構(かいようけんきゅうかいはつきこう)で

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 地球(ちきゅう)の表面(ひょうめん)の7割(わり)を占(し)める海ですが、その“底(そこ)”は今も謎(なぞ)に包(つつ)まれています。12月に海底(かいてい)地図作りの技術(ぎじゅつ)を競(きそ)う国際(こくさい)レースの予選(よせん)が始(はじ)まり、日本からは研究者(けんきゅうしゃ)らでつくる「Teamチーム KUROSHIOクロシオ」が挑(いど)みます。でもどうやって深海(しんかい)で地図を作るのでしょう。そもそも地図はなぜ必要(ひつよう)? 準備(じゅんび)を進(すす)めるメンバーに聞きました。 (世古紘子(せこひろこ))

 「海の深(ふか)さは平均約(へいきんやく)4000メートル。富士山(ふじさん)を逆(さか)さにして入れても先が届(とど)かないくらい深いんですよ」。そう話すのは海洋研究開発機構(かいようけんきゅうかいはつきこう)(神奈川県横須賀(かながわけんよこすか)市)技術(ぎじゅつ)研究員(いん)の中谷武志(なかたにたけし)さん(36)。大学や企業(きぎょう)など、8機関(きかん)の研究者(しゃ)と技術者ら約30人でつくるチームの共同代表(きょうどうだいひょう)を務(つと)めます。

 アメリカのNPO法人(エヌピーオーほうじん)が開(ひら)くレースは、海底(かいてい)の凹凸(おうとつ)など地形を表(あらわ)す立体地図を作る技術を高めるのが目的(もくてき)。予選(よせん)は水深(すいしん)2000メートルであり、日本やイギリスなど10カ国20チームが戦(たたか)います。ルールは(1)人間は海に入らずロボットで調査(ちょうさ)(2)持(も)ち込(こ)めるロボットはコンテナ(縦横(たてよこ)2.5メートル、長さ約12メートル)1個(こ)分−と明快(めいかい)です。

 チームはまず16時間以内(いない)に100平方(へいほう)キロメートル以上の海底地形を調(しら)べ、指定(してい)された5カ所(しょ)の写真(しゃしん)を撮(と)ります。調査後、地図を仕上(しあ)げるのは48時間と短時間(たんじかん)。「いかに広い範囲(はんい)を正確(せいかく)に、速(はや)く調べられるかが鍵(かぎ)です」

 深海では、さまざまな障害(しょうがい)が立ちはだかります。最大(さいだい)の壁(かべ)は水圧(すいあつ)。深いほど海水の重(おも)みで物(もの)にかかる力が大きくなり、水深2000メートルなら指先(ゆびさき)ほどの面積(めんせき)にかかる重さは約200キロも! 「人がダイビングなどで潜(もぐ)れるのは約40メートル。機械(きかい)はつぶれないよう耐圧容器(たいあつようき)が必要(ひつよう)です」。水中は電波(でんぱ)が使(つか)えず、携帯(けいたい)電話などでの通信(つうしん)は不可能(ふかのう)。太陽光(たいようこう)も届かず、「強い照明(しょうめい)でも見えるのは5メートル先」といいます。

 そんな深海でどうやって地図を作るのでしょう。日本チームは計4台の無人(むじん)ロボットを駆使(くし)します。

 うち深海で調査にあたるのは3台。設定(せってい)された道筋(みちすじ)通りに海中に潜り、海底から50〜100メートル上を人が歩く速さで進(すす)みます。その間、一度(いちど)に約200本の音波を海底に向(む)けて発射(はっしゃ)。跳(は)ね返(かえ)ってくるまでの時間から、ロボットと海底までの距離(きょり)を測(はか)ります。例(たと)えば深い所(ところ)は戻(もど)るまでの時間が長く、浅(あさ)い所は短(みじか)くなります。作業(さぎょう)を繰(く)り返しながら進むことで、地形が分かるのです。

 洋上の船型(ふねがた)ロボットは3台と音波で通信し、動(うご)きを制御(せいぎょ)します。さらに人工衛星(えいせい)を通してロボットの位置(いち)などを陸地(りくち)の中谷さんらへ送信(そうしん)。指示(しじ)も受(う)けます。作業を終(お)えたロボットが陸地に帰ったら、データを回収(かいしゅう)して地図にするのです。

 海底(かいてい)地図作りは1800年ごろに始(はじ)まりましたが、「詳細(しょうさい)な地図はまだ全体(ぜんたい)の1割程度(わりていど)しかできていません」と中谷(なかたに)さんは明かします。

 レースと異(こと)なり、通常(つうじょう)の地図作りでは研究者(けんきゅうしゃ)らが船に乗(の)り込(こ)んで指定(してい)された海域(かいいき)まで海中ロボットを運(はこ)んでいきます。「1台では1日に調査(ちょうさ)できる範囲(はんい)は10平方(へいほう)キロメートル。終(お)えるには1、2カ月かかるし、船酔(ふなよ)いもします」。陸地(りくち)に戻(もど)ってデータを処理(しょり)するため、さらに時間がかかります。

 一方で地図の必要性(ひつようせい)は高まっています。一番の理由(りゆう)は、石油(せきゆ)会社が深海(しんかい)で油田開発(かいはつ)をするため。「石油を送(おく)るパイプや掘(ほ)る装置(そうち)を設置(せっち)するとき、海底の詳(くわ)しい地形が重要(じゅうよう)です」。ほかにも通信(つうしん)用ケーブルを大陸(たいりく)間に引いたり、地形の変化(へんか)から地震(じしん)を研究したりとさまざまな面(めん)で活用が期待(きたい)されます。

 広範囲(こうはんい)の地図を、レース並(な)みに高速(こうそく)で作れるようになれば「日本の周(まわ)りの海を調(しら)べるのに1000年かかるところが10年に短縮(たんしゅく)できるかも」と中谷さん。レースを機(き)に「海中に広がる未知(みち)の世界(せかい)やロボット技術(ぎじゅつ)に興味(きょうみ)をもって」と呼(よ)び掛(か)けます。

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