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知るコレ!

世界で進む水銀対策 水俣条約

水銀(すいぎん)を含(ふく)む蛍光灯(けいこうとう)などを集(あつ)める有害(ゆうがい)ごみの回収(かいしゅう)コーナー=愛知県津島(あいちけんつしま)市で

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 人の体に有害(ゆうがい)な水銀(すいぎん)が大気や水、土壌(どじょう)に出ていく量(りょう)を減(へ)らすことを目指(めざ)す国際的(こくさいてき)な取(と)り決(き)め「水銀に関(かん)する水俣条約(みなまたじょうやく)」が八月、発効(はっこう)しました。日本では、水銀が公害病(こうがいびょう)の水俣病を引き起(お)こしたことを反省(はんせい)し、水銀を使(つか)う量や環境(かんきょう)に排出(はいしゅつ)される量を減らす対策(たいさく)が広く取られていますが、そうでない国もあります。条約が効力を持(も)ったことで、対策が進(すす)むと期待(きたい)されています。 (佐橋大(さはしひろし))

 「水俣条約(みなまたじょうやく)の趣旨(しゅし)に対応(たいおう)するためです」。水銀(すいぎん)を含(ふく)む、使(つか)い終(お)わった蛍光灯(けいこうとう)などを、十月から不燃(ふねん)ごみとは区別(くべつ)して集(あつ)める名古屋(なごや)市の担当者(たんとうしゃ)は、新たな分別の理由(りゆう)をこう説明(せつめい)します。

 蛍光灯や体温計(たいおんけい)…。水銀を含む物(もの)は身近(みぢか)にもあります。水俣条約に合わせて作られた法律(ほうりつ)は、自治体(じちたい)に水銀を含むごみを、適切(てきせつ)に回収(かいしゅう)する努力(どりょく)を求(もと)めています。ただ、三十年以上(いじょう)前から分別している愛知県津島(あいちけんつしま)市など、すでに分けて集める自治体は多く、環境省(かんきょうしょう)によると二〇一五年度(ねんど)、約(やく)七割(わり)の自治体が、他(ほか)のごみと区別して集めていました。水銀は専門(せんもん)の業者(ぎょうしゃ)が処理(しょり)します。

 工業製品(こうぎょうせいひん)を作るのに使う水銀も日本では大幅(おおはば)に減(へ)っています。最(もっと)も多かった一九六四年の約二千五百トンから、二〇一四年には五・四トンに。かつてはビニールの原料(げんりょう)を作るときに使われたり、電池(でんち)や薬品(やくひん)に入っていたりしましたが、他の材料(ざいりょう)への置(お)き換(か)えが進(すす)んだのです。

 その背景(はいけい)に、水俣病(びょう)があります。

 一九六〇年代(ねんだい)まで、熊本(くまもと)県水俣市の化学(かがく)工場は、ビニールの原料を作る際(さい)に生じた、水銀を含む毒性(どくせい)の極(きわ)めて強い物質(ぶっしつ)「メチル水銀」を海に垂(た)れ流(なが)していました。メチル水銀は魚に濃縮(のうしゅく)され、魚を食べた人や猫(ねこ)に、体が自由(じゆう)に動(うご)かせなくなるなどの症状(しょうじょう)が現(あらわ)れました。メチル水銀が脳(のう)の細胞(さいぼう)を壊(こわ)したのです。

 水俣病と呼(よ)ばれ、五六年、最初(さいしょ)の患者(かんじゃ)が確認(かくにん)されました。多くの人が亡(な)くなり、今も、苦(くる)しむ人がたくさんいます。

 条約は、こうした健康被害(けんこうひがい)を繰(く)り返(かえ)さないようにと、二〇一三年、多くの国が参加(さんか)する会議(かいぎ)で、まとめ上げられました。九月下旬(げじゅん)に開(ひら)かれた条約を結(むす)んだ国同士(どうし)の会議にも、水銀の影響(えいきょう)を受(う)け、生まれたときから水俣病を患(わずら)う坂本(さかもと)しのぶさんが出席(しゅっせき)。「水俣病は終わっていません」と述(の)べ、水銀から女性(じょせい)や子どもを守(まも)る対策(たいさく)を進めるよう訴(うった)えました。

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 水銀対策(すいぎんたいさく)は、発展途上国(はってんとじょうこく)ではあまり進(すす)んでいません。二〇一〇年に、世界(せかい)で約(やく)二千トンの水銀が空気中に出たと推測(すいそく)されています。

 原因(げんいん)で一番多いのは、手作業(てさぎょう)でする小規模(しょうきぼ)な金の採掘(さいくつ)です。東南(とうなん)アジアやアフリカなどの七十カ国以上(いじょう)で行われています。金を含(ふく)む岩を砕(くだ)いて、他(ほか)の金属(きんぞく)と結(むす)び付(つ)きやすい水銀や水を混(ま)ぜると、金と水銀の合金ができます。合金を熱(ねっ)すると、水銀が蒸発(じょうはつ)し、金が取(と)り出せます。こうした作業には女性(じょせい)や子どもら一千万〜千五百万人が携(たずさ)わっていて、健康被害(けんこうひがい)が心配(しんぱい)されます。

 次(つぎ)に多いのが石炭(せきたん)を燃(も)やして出る水銀です。石炭には、わずかな水銀が入っています。中国(ちゅうごく)などでは、煙(けむり)への対策が不十分(ふじゅうぶん)な火力発電所(はつでんしょ)で石炭が多く使(つか)われていて、そこから、水銀が多く出ています。

 水俣条約(みなまたじょうやく)を結んだ国は水銀を適切(てきせつ)に保管(ほかん)、処分(しょぶん)し、石炭火力発電所から出る水銀や金の採掘で使う水銀を減(へ)らす対策を取ることが求(もと)められます。条約は、水銀の貿易(ぼうえき)を制限(せいげん)し、一定(いってい)以上の水銀を含む蛍光灯(けいこうとう)などを作ることを二〇年までに原則(げんそく)、禁止(きんし)します。

 環境省(かんきょうしょう)によると、水銀の排出(はいしゅつ)が一番多い中国を含む、七十六カ国・地域(ちいき)が条約を結びました。日本政府(せいふ)は国内での管理を強化(きょうか)し、出ていく水銀を減らそうとする国に、技術(ぎじゅつ)や資金(しきん)で協力(きょうりょく)する方針(ほうしん)です。

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