トップ > 特集・連載 > 知るコレ! > 記事一覧 > 記事

ここから本文

知るコレ!

幸運呼びこむ縁起物 招き猫

 9月29日は、「来る(9)福(ふく)(29)」の語呂合(ごろあ)わせにちなむ「招(まね)き猫(ねこ)の日」。前足で「おいで」と手招きするポーズが特徴的(とくちょうてき)な縁起物(えんぎもの)で、一度(いちど)は見たことがあるはずです。招き猫について調(しら)べてみると、愛知県(あいちけん)との浅(あさ)からぬ縁もありました。

 (那須政治(なすまさはる))

 三重県伊勢(みえけんいせ)市の伊勢神宮(じんぐう)・内宮(ないくう)のそばで10月1日まで開催(かいさい)中の「来る福招(ふくまね)き猫(ねこ)まつり」。1995年の招き猫の日の制定(せいてい)に合わせて地元の企業(きぎょう)が始(はじ)めました。招き猫を載(の)せた山車(だし)が人目を引き、会場にはさまざまな招き猫が。外国人の姿(すがた)もありました。招き猫専門店(せんもんてん)の沢田泰人(さわだやすと)さん(27)は「小判(こばん)を抱(かか)えた定番(ていばん)の形や、笑(わら)っているように見える招き猫が人気です」と話します。

 招き猫は江戸時代末期(えどじだいまっき)、民間信仰(みんかんしんこう)に基(もと)づく縁起物(えんぎもの)として飾(かざ)られたとされます。由来(ゆらい)には複数(ふくすう)の説(せつ)があり、現在(げんざい)の東京(とうきょう)・浅草(あさくさ)の高齢女性(こうれいじょせい)が、夢(ゆめ)で飼(か)い猫から「自分(猫)の人形をまつれば幸運(こううん)がある」とお告(つ)げを受(う)け、実行(じっこう)したら幸(しあわ)せになったという話がその1つです。

 今の滋賀(しが)県東部(とうぶ)を治(おさ)めた彦根藩主(ひこねはんしゅ)の井伊直孝(いいなおたか)が、豪徳寺(ごうとくじ)(東京都世田谷区(とせたがやく))の門前で子猫の手招きに誘(さそ)われて寺を訪問(ほうもん)。雷雨(らいう)を逃(のが)れたことから、その幸運にあやかったとの説もあります。

 招き猫と一口に言っても、形や色で御利益(ごりやく)が異(こと)なります。右手を挙(あ)げていると「金招き」の意味(いみ)があり、左手挙げは「人招き」です。一般的(いっぱんてき)な白は「開運招福(かいうんしょうふく)」で、黒は「厄除安全(やくよけあんぜん)」、赤は「健康長寿(けんこうちょうじゅ)」。「満願成就(まんがんじょうじゅ)」の金や「恋愛(れんあい)成就」のピンク、オレンジ、「金運上昇(じょうしょう)」の黄などもあります。

 招き猫の愛好家団体(あいこうかだんたい)「日本招猫倶楽部(まねきねこくらぶ)」の世話役(せわやく)で、著書(ちょしょ)もある板東寛司(ばんどうかんじ)さん(66)は「御利益は、古くから伝(つた)わるというより、招き猫の売り手が付(つ)けた意味が定着(ていちゃく)したと考えられる」と教えてくれました。例(たと)えば右手でお金を扱(あつか)う人が多いから右手挙げが金運の意味とされます。

 招き猫づくりは東京から全国(ぜんこく)に広がり、約(やく)100年前に「陶器(とうき)の街(まち)」愛知(あいち)県瀬戸(せと)市で工業生産(こうぎょうせいさん)が開始(かいし)。本物の猫に近いほっそりした三頭身(さんとうしん)の「古瀬戸」タイプが有名(ゆうめい)です。

 戦後(せんご)の高度成長期(こうどせいちょうき)には愛知県常滑(とこなめ)市で大量(たいりょう)生産が始まり、今も全国有数の生産地。ふくよかな体に小判を抱えるギョロ目の二頭身は「常滑系(けい)」と呼(よ)ばれます。

観光客(かんこうきゃく)らを手招(てまね)きする「とこにゃん」=愛知県常滑(あいちけんとこなめ)市で

写真

 かつて格調(かくちょう)高い神棚向(かみだなむ)けや高級置物(こうきゅうおきもの)として飾(かざ)られた招(まね)き猫(ねこ)ですが、最近(さいきん)は「猫ブーム」も背景(はいけい)に、身近(みぢか)な縁起(えんぎ)物として定着(ていちゃく)しました。

 招き猫を活用したまちおこしも始(はじ)まり、常滑(とこなめ)市では壁(かべ)の上から手招きする高さ3.8メートルの「とこにゃん」が観光客(かんこうきゃく)を迎(むか)えます。

 瀬戸(せと)市では毎年「来る福(ふく)招き猫まつり」が開(ひら)かれ(今年は23、24日)、街(まち)が猫メークを施(ほどこ)した人でにぎわいます。創作(そうさく)招き猫のコンテストもあって芸術家(げいじゅつか)の発掘(はっくつ)に一役(ひとやく)買い、地元の私設博物館(しせつはくぶつかん)「招き猫ミュージアム」の館長鈴木政成(すずきまさなり)さん(66)は「焼(や)き物の街を、幸福(こうふく)を呼(よ)ぶ地としても発信(はっしん)したい」と唱(とな)えます。

 招き猫の魅力(みりょく)はどこにあるのでしょう。板東(ばんどう)さんと共著(きょうちょ)のある招猫倶楽部(まねきねこくらぶ)の世話(せわ)役荒川千尋(あらかわちひろ)さん(58)は「手を挙(あ)げた猫の置物」という型(かた)を守(まも)りながら、新しい形の招き猫が続々(ぞくぞく)と生まれる面(めん)に注目(ちゅうもく)します。

 「猫はかわいさ以外(いがい)に、神秘性(しんぴせい)や、暗闇(くらやみ)で目が光る不気味(ぶきみ)さがもたらすダークな力も兼(か)ね備(そな)えていますよね。その点も創作家の創意(そうい)を刺激(しげき)し、私(わたし)たちを引きつける要因(よういん)かもしれません」

写真
 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索