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知るコレ!

世界が恐れる日本の生物 国内発の「外来種」

大豆(だいず)の葉(は)を食べるマメコガネ=愛知県農業総合試験場(あいちけんのうぎょうそうごうしけんじょう)で(西本(にしもと)さんの提供(ていきょう))

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 この夏は、強い毒(どく)を持(も)つ南アメリカ原産(げんさん)の「ヒアリ」が名古屋港(なごやこう)などで見つかり、あらためて外来種(がいらいしゅ)に注目(ちゅうもく)が集(あつ)まりました。外国から来た生き物(もの)に目が行きがちですが、日本の昆虫(こんちゅう)や海藻(かいそう)などが海外で見つかったり、日本国内で移動(いどう)したりして影響(えいきょう)が心配(しんぱい)されています。今回は視点(してん)を変(か)えて「外来種」を考えてみましょう。 (世古紘子(せこひろこ))

 「日本コガネムシ 米中西部(ちゅうせいぶ)で繁殖(はんしょく)」。8月初旬(しょじゅん)、中日新聞にこんな記事(きじ)が載(の)りました。農作物(のうさくもつ)を食い荒(あ)らす日本在来種(ざいらいしゅ)「マメコガネ」がアメリカ・ミネソタ州(しゅう)で大量発生(たいりょうはっせい)したというのです。

 マメコガネは体長約(やく)1センチと小型(こがた)で鹿児島県(かごしまけん)の屋久島(やくしま)より北にいます。「果樹(かじゅ)や野菜(やさい)などいろんなものを食べるのが特徴(とくちょう)。特に大豆(だいず)やブドウの葉(は)、バラの花は被害(ひがい)が多い」と話すのは、愛知(あいち)県農業総合試験場病害虫防除室(のうぎょうそうごうしけんじょうびょうがいちゅうぼうじょしつ)の主任専門員(しゅにんせんもんいん)、西本浩之(にしもとひろゆき)さん(55)。試験場の大豆畑(ばたけ)でも葉に穴(あな)が開(あ)いていました。

 マメコガネは1910年代(ねんだい)、植物(しょくぶつ)の球根(きゅうこん)に紛(まぎ)れてアメリカに入ったとされます。「外来種は寄生(きせい)バチや捕食者(ほしょくしゃ)など天敵(てんてき)が少ないと大発生してしまう」と西本さん。6月にはスイス南部でも初(はじ)めて見つかり、確実(かくじつ)に生息域(せいそくいき)を広げています。

 海に目を転(てん)じれば、実は「ワカメ」も恐(おそ)ろしい外来種です。国際自然保護連合(こくさいしぜんほごれんごう)(IUCN(アイユーシーエヌ))が2000年に発表(はっぴょう)した「世界(せかい)の侵略的(しんりゃくてき)外来種ワースト100」。生態系(せいたいけい)や人への影響(えいきょう)の大きさなどから、専門家が「危険(きけん)」と考える外来種のリストに、ワカメはヒアリと名を連(つら)ねます。

 「広がった原因(げんいん)は、貿易(ぼうえき)船の重(おも)しとして使(つか)う海水」と説明(せつめい)するのは、IUCN日本委員会事務局長(いいんかいじむきょくちょう)の道家哲平(どうけてっぺい)さん(37)。ワカメが生息する日本の海域で船に海水を取(と)り込(こ)むと、中にワカメの胞子(ほうし)が混(ま)じることがあります。船が海外の港(みなと)に着(つ)いて海水を捨(す)てると、胞子がまかれてしまうのです。

 「ワカメは広がる力が強く、他(ほか)の藻類(そうるい)がすめなくなるのが問題(もんだい)。オーストラリアやイタリアなど温帯(おんたい)の海域で確認(かくにん)されています」と道家さん。みそ汁(しる)などで食べる習慣(しゅうかん)もないため、今後は取り込む海水の管理(かんり)が課題(かだい)です。リストにはイタドリやクズも載り、「日本の動(どう)植物も、海外で影響を及(およ)ぼしています」。

 国境(こっきょう)を越(こ)えて来た動植物(どうしょくぶつ)だけが「外来種(がいらいしゅ)」ではありません。国内であっても、動植物がもともといない地域(ちいき)に持(も)ち込(こ)まれた場合は「国内外来種」となります。岐阜(ぎふ)大地域科学部(かがくぶ)の向井貴彦准教授(むかいたかひこじゅんきょうじゅ)(46)は「本来の生態系(せいたいけい)が変化(へんか)してしまう点で問題(もんだい)なのは、外国でも日本でも同じ」と指摘(してき)します。

 岐阜県美濃加茂(けんみのかも)市北部の川では2012年に背(せ)びれにとげがある魚「オヤニラミ」が見つかりました。全長約(ぜんちょうやく)10センチで昆虫(こんちゅう)や小魚を食べる肉食性(にくしょくせい)。向井准教授は「本来は京都(きょうと)より西にいる。DNA(ディーエヌエー)を調(しら)べると岡山産(おかやまさん)と分かり、誰(だれ)かが放(はな)したと思われます」と推測(すいそく)します。

 オヤニラミは西日本の一部で数を減(へ)らしています。「別(べつ)の地域でも増(ふ)えれば」と思うかもしれません。でも、美濃加茂市の川には国の天然記念物(てんねんきねんぶつ)の魚「ネコギギ」や珍(めずら)しいドジョウがすみ、流域(りゅういき)にはホタルも。向井准教授は「外来種の影響(えいきょう)で昔(むかし)からいる在来(ざいらい)種がいなくなる危険(きけん)性がある」として、4年前から市職員(しょくいん)らと駆除(くじょ)を続(つづ)けています。

 国内外来種ではほかにも北海道(ほっかいどう)でカブトムシやトノサマガエルが問題になっています。向井准教授は「他(ほか)の地域で捕(と)った昆虫や魚を放すのはやめて。昔からの自然(しぜん)を残(のこ)すにはどうすればいいか、考えるのが大事(だいじ)です」と呼(よ)び掛(か)けます。

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