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知るコレ!

出入国、犯罪捜査に活用 顔認証技術

立ち止まらずに顔認証(にんしょう)ができるシステム。NEC(エヌイーシー)が本社ビルで、社員(しゃいん)ら約(やく)1000人を対象(たいしょう)に実験(じっけん)した=東京都港区(とうきょうとみなとく)のNEC本社で(同社提供(ていきょう))

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 海外から日本に入国した日本人を、本人かどうか確認(かくにん)する新しいシステムが10月から、羽田空港(はねだくうこう)(東京(とうきょう))に導入(どうにゅう)されることになりました。「顔認証(にんしょう)」という技術(ぎじゅつ)で、人の顔の特徴(とくちょう)をコンピューターが識別(しきべつ)して個人(こじん)を特定(とくてい)します。来年度(らいねんど)からは、中部国際(ちゅうぶこくさい)空港(愛知県常滑(あいちけんとこなめ)市)など主要(しゅよう)空港にも取(と)り入れられる予定(よてい)です。どんな技術なのか、取材(しゅざい)しました。 (長田真由美(おさだまゆみ))

◆目、口、鼻などの情報から識別

 愛知県庁(あいちけんちょう)の一室。情報企画課長補佐(じょうほうきかくかちょうほさ)の木野好彦(きのよしひこ)さんがパソコンを起動(きどう)して、ID(アイディー)とパスワードを入力し、続(つづ)けてパソコンに内蔵(ないぞう)してあるカメラに顔を向(む)けると…。わずか1秒(びょう)で、パソコンが動(うご)きだしました。登録(とうろく)してある画像(がぞう)と、同一人物(どういつじんぶつ)であることを読み取(と)ったのです。木野さんは「あっという間に認証(にんしょう)してくれます。認証できないというトラブルもありません」と説明(せつめい)します。

 県庁では昨年(さくねん)10月から、1500台のパソコンに顔認証を取り入れました。きっかけは、マイナンバーの取り扱(あつか)いです。マイナンバーとは国民(こくみん)一人一人が持(も)つ12桁(けた)の番号(ばんごう)のことで、個人情報(こじんじょうほう)を管理(かんり)するために使(つか)われています。県庁では、福祉(ふくし)や税金(ぜいきん)を担当(たんとう)する職員(しょくいん)が、業務(ぎょうむ)で県民のマイナンバーを必要(ひつよう)とすることがあります。大事(だいじ)な情報が漏(も)れないように、パスワード、顔認証と複数(ふくすう)の手段(しゅだん)を取って、セキュリティー(安全性(あんぜんせい))対策(たいさく)を強化(きょうか)しました。

 人気のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪(おおさか)市)の入場ゲートでは、年間パスポートの利用客(りようきゃく)が、本人かどうかを確認(かくにん)するために顔認証技術(ぎじゅつ)を使っています。「ももいろクローバーZ(ゼット)」など、アイドルやミュージシャンのコンサートでも利用し、チケットの転売(てんばい)を防(ふせ)いでいます。世界(せかい)トップレベルの技術を持つNEC(エヌイーシー)(東京都港区(とうきょうとみなとく))の、この技術に詳(くわ)しい守村範子(もりむらのりこ)さんは「空港(くうこう)での出入国管理から、犯罪捜査(はんざいそうさ)、コンサート会場まで世界中の幅広(はばひろ)い分野で利用されています」と話します。

 機械(きかい)はどのようにして、顔を判別(はんべつ)するのでしょうか。顔は情報の宝庫(ほうこ)です。目や口、鼻(はな)の位置(いち)は人によって異(こと)なります。「年齢(ねんれい)によって口の端(はし)の口角は下がりますが、黒目の位置や鼻の高さは変(か)わりません」と守村さん。小鼻やほほのわずかな出っ張(ぱ)りの影(かげ)といった顔の色の濃淡(のうたん)など、たくさんの情報を手掛(てが)かりに、本人かどうか識別(しきべつ)するのです。最近(さいきん)ではマスクで顔の一部(いちぶ)が隠(かく)れていたり、正面(しょうめん)を向いていなかったりしても判別できるようになりました。

 さらにNECは、歩いている人を、立ち止まらせずに顔認証する技術の開発(かいはつ)を進(すす)めています。これまでは動かない静止画(せいしが)での照合(しょうごう)が中心でした。歩きながら確認できると、大幅(おおはば)に時間が短縮(たんしゅく)されます。

◆目的外での使用防ぐルールを

 さまざまな場面(ばめん)で活用されている顔認証技術(にんしょうぎじゅつ)は、プライバシーをどう守(まも)っていくかが課題(かだい)です。人の体の特徴(とくちょう)で本人を照合(しょうごう)する生体認証の中でも、指紋(しもん)や目の模様(もよう)(虹彩(こうさい))などと違(ちが)って、顔認証は本人が気付(きづ)かないまま顔の画像(がぞう)データを集(あつ)められるのです。東京(とうきょう)大生産技術研究所(せいさんぎじゅつけんきゅうしょ)の佐藤洋一教授(さとうよういちきょうじゅ)は「システムを運用(うんよう)する側(がわ)が、目的(もくてき)をきちんと明示(めいじ)することが大前提(だいぜんてい)です」と指摘(してき)します。

 日本弁護士連合会(べんごしれんごうかい)によると、運用を定(さだ)めた明確(めいかく)な法律(ほうりつ)はありません。例(たと)えば空港(くうこう)で撮影(さつえい)された写真(しゃしん)が、犯罪捜査機関(はんざいそうさきかん)に渡(わた)ったとしても、違法(いほう)とは言えないのです。武藤糾明(むとうただあき)弁護士は「空港で撮影された場合も、勝手(かって)に目的外で使用(しよう)したり第三者(だいさんしゃ)に渡したりしないよう、ルールを決(き)めるべきです」と話します。

 新しい技術は便利(べんり)さの半面(はんめん)、悪用(あくよう)、乱用(らんよう)される危険(きけん)もあります。私(わたし)たちもどんな技術で、どのように利用されているのか、正しく知ることが大切です。

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