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知るコレ!

気候変わると数に影響 ライチョウ

ニホンライチョウの雄(おす)(奥(おく))と雌(めす)=富山県立山(とやまけんたてやま)町で(山崎准教授提供(やまざきじゅんきょうじゅていきょう))

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 中部(ちゅうぶ)地方の高山帯(こうざんたい)にすむ国の特別天然記念物(とくべつてんねんきねんぶつ)「ニホンライチョウ」。富山(とやま)や長野(ながの)、岐阜(ぎふ)では県鳥(けんちょう)として親しまれていますが、環境省(かんきょうしょう)は、近い将来(しょうらい)には野生で絶滅(ぜつめつ)する危険性(きけんせい)が高い「絶滅危惧1(ローマ数字の1)B類(きぐいちビーるい)」に指定(してい)しています。最新(さいしん)の研究(けんきゅう)を探(さぐ)ってみると、ライチョウの「過去(かこ)」と「未来(みらい)」が見えてきました。 (世古紘子(せこひろこ))

◆ふんを集めて遺伝子型分析

 ニホンライチョウは富山(とやま)や長野(ながの)など5つの地域(ちいき)に生息(せいそく)しています=地図。1985年の調査(ちょうさ)では計約(やく)3000羽(わ)がいましたが、2009年には計約1700羽にまで減(へ)りました。

 意外(いがい)な過去(かこ)が明らかになったのは、最多(さいた)の約300羽が暮(く)らす北アルプスの立山連峰(たてやまれんぽう)。「ライチョウは氷河期(ひょうがき)だった約1万年前までに立山に入り、その後減り続(つづ)けてきたと考えられてきました。でも一度(ど)減った後、回復(かいふく)していたのです」。そう話すのは富山大理学部(りがくぶ)の山崎裕治准教授(やまざきゆうじじゅんきょうじゅ)(47)。

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 カギとなったのはふんでした。山崎准教授らは13、14年に計14回、立山で102羽のふんを集(あつ)めました。「表面(ひょうめん)には腸(ちょう)の細胞(さいぼう)がついています。そこからDNA(ディーエヌエー)を取(と)り出し、遺伝子型(いでんしがた)を分析(ぶんせき)したのです」。成功(せいこう)したのは50羽。するとA型、B型、C型の3種類(しゅるい)が出たのです=円グラフ。「他(ほか)の地域では1〜4種類の遺伝子型が確認(かくにん)されており、立山も同じくらい多様(たよう)だと初(はじ)めて分かりました」

 では過去は? ABCの数を比(くら)べるとAの42羽が圧倒的(あっとうてき)に多いと分かります。山崎准教授は「つまりAに極端(きょくたん)に偏(かたよ)っています。遺伝学的にこれは、立山のライチョウの全体(ぜんたい)数が過去に一度減り、増(ふ)えたことを示(しめ)しています」と解説(かいせつ)します。分析データを特殊(とくしゅ)な数式(すうしき)に入れると、増えたとされる時期(じき)は4050年前と出ました。

 その前後で減った要因(よういん)を考えた時、浮(う)かんだのが6000年前まで続いた「縄文海進(じょうもんかいしん)」と言われる温暖化(おんだんか)です。この時期は、地層(ちそう)に埋(う)まった高山植物(こうざんしょくぶつ)の花粉(かふん)分析からライチョウの餌(えさ)が減ったことが分かっています。結論(けつろん)としてライチョウは温暖化で一度数を減らしたものの、再(ふたた)び数を増やしたという全体像(ぞう)が描(えが)けるのです。山崎准教授は「過去にどうやって回復したのかが分かれば、これからライチョウをどう守(まも)るかのヒントになる」と期待(きたい)しています。

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◆温暖化のため絶滅の危険性

 長野県環境保全研究所(ながのけんかんきょうほぜんけんきゅうじょ)や森林総合(しんりんそうごう)研究所(茨城(いばらき)県つくば市)などは、高山植物(こうざんしょくぶつ)からニホンライチョウの将来(しょうらい)を見通そうとしています。保全研究所の専門(せんもん)研究員(いん)、堀田昌伸(ほったまさのぶ)さん(58)らが調(しら)べたのは生息地(せいそくち)の1つ、北アルプスの中南部(ちゅうなんぶ)です。

 堀田さんは「ライチョウは高山植物に強く頼(たよ)って生きています」と説明(せつめい)します。例(たと)えばライチョウは背(せ)の低(ひく)いハイマツに巣(す)を作り、逃避場所(とうひばしょ)にもしています。夏の間は、ツツジ科やガンコウラン科など多彩(たさい)な高山植物をついばみます。

 研究ではまず、中南部で高山植物が生えている場所からライチョウの生息域(いき)を推定(すいてい)。実際(じっさい)の縄張(なわば)り分布(ぶんぷ)と比(くら)べるとよく一致(いっち)しました。つまり将来の高山植物の分布が分かれば、ライチョウが生息できる地域も推測(すいそく)できるということです。

 将来の植物分布は、気候(きこう)データからある程度予測(ていどよそく)できます。堀田さんらは温暖化(おんだんか)で気温が上昇(じょうしょう)すると仮定(かてい)し、さまざまな条件(じょうけん)で2081〜2100年を見てみました。すると、高山植物が生える面積(めんせき)は平均(へいきん)して、今より約(やく)9割(わり)が減(へ)ると予測されたのです。「ライチョウが生きられる地域も同程度が減少(げんしょう)するとみられます。すみやすい環境がなくなる可能性(かのうせい)が高いのです」と堀田さん。ライチョウの未来(みらい)に思いを寄(よ)せ、自分たちに何ができるか考えることが大切になりそうです。

 

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