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知るコレ!

考えよう“命のリレー”

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 病気(びょうき)や事故(じこ)などで脳(のう)の働(はたら)きが完全(かんぜん)に失(うしな)われたとき、心臓(しんぞう)や肺(はい)などの臓器(ぞうき)を提供(ていきょう)し、他(ほか)の人の命(いのち)を救(すく)うことができます。こうした脳死(のうし)の人からの“命のリレー”を認(みと)める「臓器移植法(いしょくほう)」という法律(ほうりつ)ができて今年で20年。7年前からは15歳未満(さいみまん)も提供が可能(かのう)です。もし自分に何かあったら−。家族(かぞく)と話したことはありますか? (川合道子(かわいみちこ))

◆15歳未満でも提供可能に

 岐阜県多治見(ぎふけんたじみ)市の病院(びょういん)で6月、10歳以上(さいいじょう)15歳未満(みまん)の男の子が「脳死(のうし)」と判定(はんてい)されました。

 脳死とは、脳の中の働(はたら)きが完全(かんぜん)に失(うしな)われてしまった状態(じょうたい)のこと。機械(きかい)を使(つか)って酸素(さんそ)を肺(はい)に送(おく)ると心臓(しんぞう)は動(うご)きますが、やがて止まり、もとの元気な姿(すがた)に戻(もど)ることはありません。

 家族(かぞく)は、まだ働きが残(のこ)っている男の子の心臓や肺、腎臓(じんぞう)などの臓器(ぞうき)を病気などで困(こま)っている人に提供(ていきょう)することにしました。それぞれの臓器は、別(べつ)の人たちの体に移植(いしょく)されました。

 日本臓器移植ネットワーク(東京都(とうきょうと))によると、もう男の子が助(たす)からないと知ったとき、家族が思い出したのが「もし自分に何かあったら、病気で苦(くる)しんでいる人を助けてあげたい」という男の子の言葉(ことば)でした。普段(ふだん)から移植について話す機会があったといいます。

 全国(ぜんこく)には、重(おも)い病気で臓器の働きが悪(わる)くなり、薬(くすり)や手術(しゅじゅつ)でも治(なお)らない人がいます。命(いのち)を救(すく)うには他(ほか)の人から健康(けんこう)な臓器をもらって体を回復(かいふく)させる「臓器移植」が必要(ひつよう)な場合があります。

 日本では1997年に臓器移植法(ほう)という法律(ほうりつ)ができ、脳死の人からの臓器の提供が可能(かのう)になりました。それまで提供は心臓が止まった人か健康な家族の一部(いちぶ)の臓器に限(かぎ)られていました。

 法律ができた当初(とうしょ)、提供できるのは15歳以上で意思表示(いしひょうじ)カードなどに「提供する」と記した人だけでしたが、法律が見直され、2010年から15歳未満も対象(たいしょう)に。本人の気持(きも)ちが分からない場合、提供するかしないかは残された家族が決(き)めることになりました。

 この法律により、脳死の人からの提供は増(ふ)えています=グラフ。しかし「日本で移植を待(ま)つ約(やく)1万3000人のうち、受(う)けられるのは年間で2%にすぎません」とネットワーク広報(こうほう)・啓発事業部(けいはつじぎょうぶ)の栗原未紀(くりはらみき)さん(44)。特(とく)に心臓移植が必要な子どもは、臓器を提供する人(ドナー)が多いアメリカなどに渡(わた)る例(れい)が少なくありません。

◆家族と話して意思を共有

 ネットワークが昨年(さくねん)3月に10〜60代(だい)に実施(じっし)した調査(ちょうさ)では、「臓器提供(ぞうきていきょう)について、家族(かぞく)と話をしたことはありますか」という問(と)いに、7割以上(わりいじょう)が「今まで一度(いちど)もない」と答えました。

 「たとえ本人が意思表示(いしひょうじ)カードで『提供する』と示(しめ)していても、すぐ決(き)められるものではありません」と臓器移植(いしょく)コーディネーターの飯田恵以(いいだけい)さん(37)。提供を考えている人の家族に寄(よ)り添(そ)い、提供するかしないかの判断(はんだん)に立ち会ってきました。

 ドナーの家族の中には、「本人がどんな気持(きも)ちで書いたのかを聞いていないために、『自分の判断は良(よ)かったのか』と悩(なや)み続(つづ)ける人もいます」と言います。

 10年ほど前、父親の意思表示に基(もと)づいて臓器提供を家族で決めた愛知県(あいちけん)の女性(じょせい)は「提供したくない気持ちでもいい。普段(ふだん)から家族で意思を共有(きょうゆう)しておくことが大事(だいじ)」と話します。「自分の家族がいつもどんなことを幸(しあわ)せに思うか、何を大切に生きているかを話し合うことから始(はじ)めてみては。その積(つ)み重(かさ)ねが臓器移植や命(いのち)について考える第一歩(だいいっぽ)だと思います」

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