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知るコレ!

病気の危険性高まる たばこの害

 他人(たにん)のたばこの煙(けむり)を吸(す)わされる「受動喫煙(じゅどうきつえん)」。その対策(たいさく)を強化(きょうか)するよう法律(ほうりつ)を改(あらた)める議論(ぎろん)を、国会議員(こっかいぎいん)が行いました。でも、うまく調整(ちょうせい)がつかず、先月終(お)わった国会に改正案(かいせいあん)を提出(ていしゅつ)できませんでした。たばこの煙は、なぜ体に悪(わる)いのでしょうか? (佐橋大(さはしひろし))

◆がん発生率上げ、血管も傷める

 たばこの煙(けむり)には、がんを引き起(お)こす物質(ぶっしつ)が多く含(ふく)まれています。そうした物質が肺(はい)に入ると、肺やのど、食道などでのがんの発生率(はっせいりつ)を引き上げます。国立がん研究(けんきゅう)センターによると、肺がんになる確率(かくりつ)は、たばこを吸(す)う男性(だんせい)では、吸わない男性の4.5倍(ばい)です。有害(ゆうがい)な物質は、たばこから立ち上る煙「副流煙(ふくりゅうえん)」にも多く含まれるので、周囲(しゅうい)の人の健康(けんこう)も損(そこ)ねます。

 それだけではありません。「たばこの煙は、血管(けっかん)にもダメージを与(あた)えます」と、あいち健康の森健康科学総合(そうごう)センター(愛知県東浦(あいちけんひがしうら)町)のセンター長で医師(いし)の津下一代(つしたかずよ)さんは話します。

 煙に含まれる一酸化炭素(いっさんかたんそ)(CO(シーオー))は、血管の中で酸素を運(はこ)ぶ赤血球(せっけっきゅう)のヘモグロビンとくっつき、その働(はたら)きを鈍(にぶ)らせ体中に酸素が行き渡(わた)るのを妨(さまた)げます。すると、酸素を多く必要(ひつよう)とする激(はげ)しい運動(うんどう)や長時間の運動がしにくくなります。体内の酸素が不足(ふそく)しがちになると、脳(のう)から「赤血球を増(ふ)やせ」という指令(しれい)が出て、赤血球が増えます。このため、血液(けつえき)の粘(ねば)りけが増(ま)し、細かい血管が詰(つ)まりやすくなります。

 さらに、煙の中にある興奮(こうふん)物質ニコチンが作用して、心臓(しんぞう)の動(うご)きが早くなり、血管を縮(ちぢ)ませ、血圧(けつあつ)が上がります。

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 人は意識(いしき)をしていませんが、心臓がどくんどくんと血(ち)を送(おく)り出すたびに、血管の内側(うちがわ)には大きな圧力がかかっていて、血管はだんだん傷(いた)んできます。血管には、自らを修復(しゅうふく)し、しなやかに保(たも)つ機能(きのう)がありますが、たばこには、この働きを悪(わる)くする活性酸素という物質も含まれています。傷んだ血管に、どろどろの血が流(なが)れ、さらに高い圧力がかかる。血管が詰まり、壊(こわ)れやすい条件(じょうけん)が重(かさ)なります。「その結果(けっか)、心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳卒中(のうそっちゅう)など、血管の病気(びょうき)が起きやすくなります」と津下さんは説明(せつめい)します。

◆ニコチンが生む依存の悪循環

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 「体に悪(わる)い」と分かっていても、たばこをなかなかやめられないのは理由(りゆう)があります。たばこには依存性(いぞんせい)があるのです。

 「子どもをタバコから守(まも)る会・愛知(あいち)」世話人(せわにん)で医師(いし)の磯村毅(いそむらたけし)さんによると、ニコチンは、体の中に入ると、脳内物質(のうないぶっしつ)ドーパミンを無理(むり)やり出させます。ドーパミンは、食事(しょくじ)で満腹(まんぷく)になったときに出るなど、脳が幸(しあわ)せや安(やす)らぎを感(かん)じることに関(かか)わっています。

 大抵(たいてい)、たばこを初(はじ)めて吸(す)うときは、刺激(しげき)が強すぎて気持(きも)ち悪くなり「いつでもやめられる」と思うといいます。それがくせもの。たばこを吸い続(つづ)けていると、ドーパミンが自力で出せなくなり、たばこを吸っている瞬間(しゅんかん)にだけ、ドーパミンが出る脳に変化(へんか)します。たばこを吸っているときだけ安らぎを感じ、おいしい食べ物(もの)を見ても、ドーパミンが以前(いぜん)ほど出ないようになります。吸うのをやめて体内のニコチンが切れると、寂(さび)しさや落(お)ちつかなさを感じ、ドーパミンを出そうと再(ふたた)びたばこを吸いたくなる悪循環(あくじゅんかん)に陥(おちい)るのです。たばこ以外のことに幸せを感じにくくなっているのに、それには気付(きづ)きません。

生徒(せいと)たちに、たばこの害(がい)について語る磯村(いそむら)さん=名古屋(なごや)市内の中学校で

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 「人間には、もともとストレスに対応(たいおう)する仕組(しく)みがあるのに、たばこはその働(はたら)きを弱めます」と磯村さん。子どもをたばこから守るため、各地(かくち)の学校を回り、その危険(きけん)性を伝(つた)えています。

 

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