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知るコレ!

土に合わせて色が変化 アジサイ

同じ品種(ひんしゅ)でも色が違(ちが)うアジサイを育(そだ)てる太田高史(おおたたかし)さん=愛知県田原(あいちけんたはら)市で

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 梅雨真(つゆま)っただ中。雨の日はまだ少ないですが、街角(まちかど)ではアジサイが目立つようになりました。フワフワした花が印象的(いんしょうてき)で、日本人なら誰(だれ)もが知る花です。どんな花なのか、その魅力(みりょく)を探(さぐ)りました。 (那須政治(なすまさはる))

 アジサイは日本原産(げんさん)の植物(しょくぶつ)。皆(みな)が花だと思う部分(ぶぶん)は「装飾花(そうしょくか)」で、受粉(じゅふん)し生殖(せいしょく)に関(かか)わる「真花(しんか)」は別(べつ)にあります。大輪(たいりん)の「手まり咲(ざ)き」と、装飾花が真花を囲(かこ)む「がく咲き」の2種類(しゅるい)が、一般的(いっぱんてき)な咲(さ)き方です。

 アジサイの特徴(とくちょう)の1つが、生育環境(せいいくかんきょう)で花の色が変(か)わること。「七変化(しちへんげ)」の別名もあります。愛知県田原(あいちけんたはら)市の生産農家太田高史(のうかおおたたかし)さん(38)が、赤と青紫(あおむらさき)の鉢花(はちばな)を両手(りょうて)に持(も)って説明(せつめい)します。「両方『レッドビューティー』という品種(ひんしゅ)ですが、土質(どしつ)を変えて育(そだ)てるとこうなります」

 品種や個体(こたい)によって差(さ)はありますが、アジサイは土の酸性度(さんせいど)が強いと青、アルカリ性度が強いと赤い花が咲きます。白い花は、アントシアニンという色素(しきそ)を持たない品種です。「青くしたい時は酸性の肥料(ひりょう)を多く入れ、赤い花は土を中性に変える改良(かいりょう)用土を入れたり、アルカリ性の強い肥料を加(くわ)えたりします」と太田さん。

 なぜ土が変わると花の色は変わるのでしょう。植物の色素に詳(くわ)しい名古屋(なごや)大大学院教授(だいがくいんきょうじゅ)の吉田久美(よしだくみ)さん(59)は、「アジサイが土から吸収(きゅうしゅう)するアルミニウムの濃度(のうど)と、細胞(さいぼう)内に3種類ある『助(じょ)色素』が大きく関係(かんけい)します」と話します。助色素とはアントシアニンの発色(はっしょく)を助(たす)ける分子です。

 アルミニウムは酸に溶(と)けやすい性質があります。土の酸性度が強い時、アジサイは土中の水に溶けたアルミニウムを根(ね)から吸収。細胞内の2つの助色素と結(むす)びつき花を青色に変えます。

 反対(はんたい)に土がアルカリ性に近づけば、アルミニウムが土に溶けずに細胞に届(とど)きにくくなり、残(のこ)る1つの助色素が働(はたら)いて花が赤くなります。

 こうした仕組(しく)みは未解明(みかいめい)な部分もあり、吉田さんの研究(けんきゅう)は今後も続(つづ)きます。

 アジサイは江戸時代(えどじだい)に外国人がヨーロッパに持ち帰って品種改良され、現在(げんざい)も国内外で研究されています。世界中(せかいじゅう)で数1000種類があるといわれます。日本の土が酸性寄(よ)りで青や紫の花が多いのに対し、ヨーロッパの土はアルカリ質。真(ま)っ赤(か)で大きい花が現地の人たちに好(この)まれているそうです。

 この時期(じき)は、各地(かくち)の寺でアジサイ祭(まつ)りが開(ひら)かれます。神奈川県横浜(かながわけんよこはま)市のアジサイ研究家川島栄生(けんきゅうかかわしまえいせい)さん(75)によると、敷地(しきち)が広くて緑(みどり)が豊(ゆた)かな寺は、木漏(こも)れ日が当たる程度(ていど)の「半日陰(はんひかげ)」と湿気(しっけ)が多く、アジサイの栽培(さいばい)に適(てき)しているそうです。

 住職(じゅうしょく)が27年前に亡(な)くなった愛知(あいち)県安城(あんじょう)市の長福寺(ちょうふくじ)では、10年以上(いじょう)前から、町内会の人たちが境内(けいだい)にアジサイを植(う)えて管理(かんり)しています。地元で「アジサイ寺」と親しまれ、栽培担当(たんとう)の横山優徳(よこやままさのり)さん(72)は「株数(かぶすう)は350前後だけど、毎年楽しみにしてくれる人もいるだよ」と笑(わら)います。

 研究家の川島さんは、日光に強くないアジサイの性質(せいしつ)に注目(ちゅうもく)します。「晴れの日は午前11時には花が下を向(む)いちゃうから、見頃(みごろ)は朝や夕方、曇(くも)りや雨の日。特(とく)に雨にぬれたアジサイは、みずみずしく生き生きとして普段(ふだん)以上に美(うつく)しい」

 開花(かいか)の時期が梅雨(つゆ)と重(かさ)なり、多くの人が美しい状態(じょうたい)の花を観賞(かんしょう)できることも、アジサイが愛(あい)される理由(りゆう)かもしれませんね。

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