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知るコレ!

今も愛される「昭和の味」 ナポリタン

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 辺(あた)りに漂(ただよ)う甘(あま)いケチャップのにおい。すれ違(ちが)う家族連(かぞくづ)れの口元はほのかにオレンジ色です。今月13、14両日(りょうじつ)、日本一のナポリタンを決(き)める「ナポリタンスタジアム」が東京都墨田区(とうきょうとすみだく)の東京スカイツリーで開(ひら)かれました。

 ケチャップの消費拡大(しょうひかくだい)を狙(ねら)うカゴメ(名古屋(なごや)市)が4年ぶりに開催(かいさい)。全国(ぜんこく)73店舗(てんぽ)から、書類審査(しょるいしんさ)などで地方予選(よせん)をクリアした9店舗が出店しました。

 2日間で計約(やく)1万2000食が売れました。人気投票(とうひょう)で優勝(ゆうしょう)したのは、ブランド牛の煮込(にこ)みとチーズフォンデュを載(の)せた九州代表(きゅうしゅうだいひょう)の熊本(くまもと)市のレストラン「レッフェル流通団地(りゅうつうだんち)店」。東海(とうかい)代表の「洋食(ようしょく)のことこと屋(や)」(愛知県長久手(あいちけんながくて)市)は八丁(はっちょう)みそが隠(かく)し味(あじ)のハンバーグを添(そ)え、会場の人気を二分しましたが、一歩及(およ)ばず。店長の都外川景司(ととがわけいじ)さん(56)は「悔(くや)しい。次(つぎ)は優勝だ」と誓(ちか)いました。

 近年、「昭和(しょうわ)の味」が見直され、ナポリタンがブームです。各地(かくち)で進化(しんか)し、北海道函館(ほっかいどうはこだて)市(北海道代表)の「函館イカナポリタンブラック」や長野(ながの)県安曇野(あづみの)市(関東甲信越(かんとうこうしんえつ)代表)の「安曇野林檎(りんご)ナポリタン」はまちおこしにも使(つか)われています。

 多彩(たさい)な世界(せかい)に魅了(みりょう)される人もいます。東京都の男性会社員(かいしゃいん)でブロガーのイートナポさん(39)は、2007年から国内外をめぐり、2300皿(さら)を食べました。

 「諸説(しょせつ)ありますが」と前置(まえお)きして、歴史(れきし)を教えてくれました。ナポリタンが生まれたのは、昭和20年代、神奈川(かながわ)県横浜(よこはま)市のホテルニューグランド。二代目総料理長(そうりょうりちょう)で故人(こじん)の入江茂忠(いりえしげただ)さんがトマトを使(つか)ったスパゲティを考案(こうあん)し、ナポリタンと命名(めいめい)したのが始(はじ)まりといいます。イタリア・ナポリで、トマトソースをパスタにかけて食べていたのに由来(ゆらい)します。一方、当時高価(こうか)だったトマトをケチャップで代用し、大衆化(たいしゅうか)させたのが同じ横浜市の洋食店センターグリル。ともに戦前(せんぜん)の同ホテルで総料理長として活躍(かつやく)したスイス人、故サリー・ワイルさんから料理を学びました。ここからケチャップのナポリタンは全国の喫茶店(きっさてん)などに広まったといいます。

 最近(さいきん)は麺(めん)の量(りょう)や具材(ぐざい)を選(えら)べる店が多いです。でも、イートナポさんは「ナポリタンは安心感(あんしんかん)のある料理(りょうり)。いつもの具材がうれしい」と言います。ピーマン、タマネギ、マッシュルームを「スタンダード3」と呼(よ)んで重視(じゅうし)。ベーコン、ハム、ウインナーのいずれかも欠(か)かせないそうです。

 シンプルな具材でなぜおいしく感じられるのでしょう。NPO法人(エヌピーオーほうじん)うま味(み)インフォメーションセンター(東京都(とうきょうと))によると、トマトケチャップやタマネギ、マッシュルームに含(ふく)まれるうま味成分(せいぶん)のグルタミン酸(さん)と、肉類(にくるい)のうま味成分イノシン酸が合わさると、それぞれを単独(たんどく)で口にするよりも、うま味が7〜8倍(ばい)に増(ま)して感じられるそうです。

 ケチャップは熱(ねつ)で酸味が飛(と)ぶと甘(あま)みが出ます。イートナポさんは「ケチャップの魔力(まりょく)」と呼んでいます。東海(とうかい)地方には、熱した鉄板(てっぱん)にナポリタンと卵(たまご)を入れる食文化(しょくぶんか)があります。「鉄板イタリアン」です。「話に夢中(むちゅう)になっても冷(さ)めないように」と、喫茶(きっさ)ユキ(名古屋(なごや)市東区(く))が1960年ごろ考案(こうあん)。今も、遠くは北海道(ほっかいどう)から食べに来ます。

 一帯(いったい)は区画整理(くかくせいり)中で、レトロな雰囲気(ふんいき)が特徴(とくちょう)の今の店は取(と)り壊(こわ)し、近くに移転(いてん)します。店主(てんしゅ)の丹羽洋子(にわひろこ)さん(60)は「これから何十年も続(つづ)けていくためです」と話します。独特(どくとく)の安定(あんてい)感を生かし時代(じだい)を切り開(ひら)く姿(すがた)が、ナポリタンと重(かさ)なって見えます。

 

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