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知るコレ!

時代で変化する名前 色

日本語の色名を調(しら)べた栗木一郎准教授(くりきいちろうじゅんきょうじゅ)=宮城県仙台(みやぎけんせんだい)市の東北(とうほく)大電気通信研究所(でんきつうしんけんきゅうしょ)で

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 花々が咲(さ)き、若葉(わかば)が目に鮮(あざ)やかな季節(きせつ)です。赤に緑(みどり)、青、白、黄…。私(わたし)たちはさまざまな色に囲(かこ)まれて暮(く)らしています。でも実(じつ)は、色名は時間とともに変化(へんか)し続(つづ)けているといいます。今回は、今年3月に発表(はっぴょう)された「色」についての研究(けんきゅう)を紹介(しょうかい)します。 (世古紘子(せこひろこ))

 左上の赤い矢印(やじるし)が指(さ)す部分(ぶぶん)。みなさんなら何色と呼(よ)びますか? 多くの読者(どくしゃ)は「水色」と答えるのではないでしょうか。当たり前に思うかもしれません。でも30年前は多くの人が「青色」と答えていました。

 「現在(げんざい)は、青色と水色を明確(めいかく)に区別(くべつ)していることが実験(じっけん)で分かったんですよ」と話すのは、東北(とうほく)大電気通信研究所(でんきつうしんけんきゅうしょ)(宮城県仙台(みやぎけんせんだい)市)の栗木一郎准教授(くりきいちろうじゅんきょうじゅ)(50)。人間が色を見るメカニズムを研究し、2016年に日本、アメリカの研究者と日本語の色名を調(しら)べました。

 実験には日本の大学生ら57人が参加(さんか)。図のような全(ぜん)330色の色見本を1枚(まい)ずつ見せ、何色か聞きました。すると大まかに19グループに分かれました。多くの言語に共通(きょうつう)する11の基本(きほん)色(赤、緑(みどり)、青、黄、紫(むらさき)、ピンク、茶、オレンジ、白、灰(はい)、黒)に、8色(水、肌(はだ)、抹茶(まっちゃ)、黄土、えんじ、山吹(やまぶき)、クリーム、紺(こん))が加(くわ)わった形です。

 特(とく)に水色は98%の人が使(つか)っており、青色から完全(かんぜん)に分離(ぶんり)しました。30年前に別(べつ)の研究者が30代(だい)を中心とした参加者を調べた時は割合(わりあい)が低(ひく)く、ある参加者が「水色」と呼んだ色見本を、77%の人が「青色」と答えていました。栗木准教授は「30年前は、薄(うす)い青色を『水色』と呼ぶ共通認識(にんしき)がまだ十分ではなかったのでしょう」と説明(せつめい)します。

 今回の結果(けっか)は、小中学生の時に「水色」の絵の具(ぐ)や色えんぴつを使うなど、色名が身近(みぢか)になったことで「多くの人が『水色』と言えば薄い青色を連想(れんそう)できる環境(かんきょう)になったのでは」と話します。今では多くの人が「水色」を使っており、日本語では基本色の12番目になりそうです。

 反対(はんたい)に、30年前は黄緑を指していた「草色」は、今回は「抹茶(まっちゃ)色」に取(と)って代(か)わられました。「使われなくなると消(き)えていく色名もあります。色名は固定(こてい)されたものではなく、進化(しんか)し続(つづ)けているのです」

 今回の研究(けんきゅう)では、青と緑(みどり)を区別(くべつ)していることも統計的(とうけいてき)に明らかになりました。でも「青信号(しんごう)」や「青葉(あおば)」など、「本当は緑色なのだけれど…」と不思議(ふしぎ)に思いつつ使(つか)っていることはありませんか。栗木准教授(くりきじゅんきょうじゅ)は青と緑の混用(こんよう)についても経緯(けいい)を調(しら)べました。その結果(けっか)、平安時代以前(へいあんじだいいぜん)から、青と緑をごちゃ混(ま)ぜで使っていた名残(なごり)だと分かりました。

 下の和歌(わか)を見てみましょう。木々の緑を「あを(あお)」と言ったり、青空を「みどりの空」と表現(ひょうげん)したり。栗木准教授は「昔(むかし)の人には、青と緑は何となく同じグループだろうという認識(にんしき)があったのでしょう」と話します。

 現在(げんざい)は、頭では青と緑は別(べつ)だと分かっています。でも混用を続(つづ)けているのは法令(ほうれい)や習慣(しゅうかん)に合わせているから。「生活上便利(べんり)だったり、必要(ひつよう)だったりすると、自分の感性(かんせい)に反(はん)して使い続けるということです」

 栗木准教授によると、青と緑の分離(ぶんり)は、世界中(せかいじゅう)の言語が発達段階(はったつだんかい)で必(かなら)ず経験(けいけん)するといいます。実際(じっさい)、13世紀(せいき)以前の英語(えいご)にも青と緑の両方(りょうほう)を指(さ)す色名がありました。何げなく使っている色名ですが、変化(へんか)の歴史(れきし)をたどってみると新たな発見(はっけん)があるかもしれません。

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