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知るコレ!

地域活性化へ“出発”! 廃線利用

10年ぶりに運行(うんこう)したおくひだ1号(ごう)=岐阜県飛騨(ぎふけんひだ)市神岡(かみおか)町で

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 皆(みな)さんの住(す)むまちの自慢(じまん)は何ですか。最近(さいきん)は、今はない「廃線跡(はいせんあと)」も自慢になるようで、日本中で廃線を通じて連携(れんけい)する動(うご)きが生まれています。 (美細津仁志(みさいづひとし))

 今月8日、岐阜県(ぎふけん)の最北端(さいほくたん)にある飛騨(ひだ)市神岡(かみおか)町。約(やく)10年前に廃線(はいせん)となった旧(きゅう)神岡鉄道(てつどう)に、ディーゼル列車(れっしゃ)の「おくひだ1号(ごう)」が走りました。市内の小学生を乗(の)せ、車庫(しゃこ)のある旧神岡鉱山(こうざん)前駅(えき)を出発(しゅっぱつ)。一時間ほどかけて約3キロ南の終着(しゅうちゃく)駅、旧奥(おく)飛騨温泉(おんせん)口のホームに着(つ)くと、待(ま)ちわびた大勢(おおぜい)の市民(しみん)が「お帰りなさーい」と旗(はた)を振(ふ)って出迎(でむか)えました。

 沿線(えんせん)では全国(ぜんこく)の鉄道ファンがカメラを並(なら)べました。車掌(しゃしょう)を務(つと)めた元運転士(うんてんし)の森下伸広(もりしたのぶひろ)さん(62)は「窓(まど)から見える風景(ふうけい)は昔(むかし)のまま。10年という時を忘(わす)れました」と感激(かんげき)した様子(ようす)でした。

 旧神岡鉄道(旧国鉄神岡線)は奥飛騨温泉口−猪谷(いのたに)(富山(とやま)市)の19.9キロで、運行開始(かいし)は1984年。乗客(じょうきゃく)の減少(げんしょう)や貨物輸送(かもつゆそう)の廃止で経営(けいえい)が悪化(あっか)し、2006年12月に廃線となりました。

 この日の運行は、列車の車両(しゃりょう)を奥飛騨温泉口駅に移動(いどう)させ、昔の風景を観光客(かんこうきゃく)にも感じてもらおうと、市などでつくる実行委員会(じっこういいんかい)が仕掛(しか)けました。結果(けっか)は狙(ねら)い通り。実行委によると人口8000人余(あま)りの神岡に、町内外から3000人が訪(おとず)れたといいます。車両の移動は、線路(せんろ)や橋(はし)を修繕(しゅうぜん)して走らせ、トレーラーで陸送(りくそう)するより1500万円ほど安(やす)く済(す)みました。

 列車も線路も市のものです。国土交通省中部運輸局(こくどこうつうしょうちゅうぶうんゆきょく)鉄道部(ぶ)(名古屋(なごや)市)によると、「時速(じそく)20キロ」「輸送人員は一時間当たり1000人」など、鉄道事業法(じぎょうほう)で定(さだ)める基準(きじゅん)内であれば自由(じゆう)に運行して問題(もんだい)ないそうです。でも動(うご)かしたのはこの一日だけ。

 観光用にレールを活用して走る自転車「ガッタンゴー」を運営(うんえい)する地元のNPO(エヌピーオー)法人「神岡・町づくりネットワーク」の田口由加子(たぐちゆかこ)さん(38)は「神岡鉄道や市民との距離(きょり)が縮(ちぢ)まったのが収穫(しゅうかく)。運転体験(たいけん)会も開いてみたい」と手応(てごた)えを語ります。でも、将来的(しょうらいてき)な定期(ていき)運行について森下さんは、期待(きたい)を寄(よ)せつつ、一度(いちど)廃線の悲(かな)しみを味(あじ)わっただけに「莫大(ばくだい)なパワーとお金がかかる」と慎重(しんちょう)です。

 この日、活動(かつどう)の連携(れんけい)を目的(もくてき)に横(よこ)の枠組(わくぐ)みも生まれました。「日本ロストライン協議会(きょうぎかい)」です。ロストラインは「失(うしな)われた線路(せんろ)」の意味(いみ)。神岡(かみおか)・町づくりネットワークが考案(こうあん)した造語(ぞうご)です。北海道(ほっかいどう)から九州(きゅうしゅう)までの15団体(だんたい)が加盟(かめい)。鉱山(こうざん)鉄道や、森林鉄道もあり、宮崎県(みやざきけん)の「高千穂(たかちほ)あまてらす鉄道」は軽(けい)トラックをレールに載(の)せてトロッコを走らせています。形式(けいしき)は違(ちが)っても、地方の町や団体が情報(じょうほう)を共有(きょうゆう)し、地域(ちいき)の活性化(かっせいか)を進(すす)める思いは同じです。

 明治時代(めいじじだい)の姿(すがた)で愛知(あいち)県春日井(かすがい)市などに残(のこ)る旧(きゅう)国鉄中央(ちゅうおう)線の「愛岐(あいぎ)トンネル」を買い取(と)り、活用を目指(めざ)すのは、地元や近隣(きんりん)の市民有志(しみんゆうし)でつくる「愛岐トンネル群保存再生委員会(ぐんほぞんさいせいいいんかい)」。こちらは、レールも枕木(まくらぎ)も車両(しゃりょう)もありません。しかし愛知県側(がわ)の1.7キロ区間(くかん)を整備(せいび)し、紅葉(こうよう)や新緑(しんりょく)の時季(じき)に廃線跡(はいせんあと)をたどるツアーが人気です。村上真善理事長(むらかみまさよしりじちょう)(65)は「(観光客(かんこうきゃく)が増(ふ)えるなど)実利(じつり)を伴(ともな)い即効性(そっこうせい)がある。このつながりを生かさない手はない」と話します。一度途切(いちどとぎ)れたロストライン。今、人々をつなげようとしています。

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