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知るコレ!

自然敬う文化 守ろう

いろりのある伝統家屋(でんとうかおく)チセの中で披露(ひろう)されたアイヌ古式舞踊(こしきぶよう)=北海道白老(ほっかいどうしらおい)町のアイヌ民族博物館(みんぞくはくぶつかん)で

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 北海道(ほっかいどう)には「〜幌(ぽろ)」「〜別(べつ)」「〜内(ない)」といった珍(めずら)しい地名が多いと思ったことはありませんか。これらは、アイヌ語がもとになった地名です。北の大地に古くから暮(く)らし、独自(どくじ)の言葉(ことば)や文化(ぶんか)を育(はぐく)んできた先住民族(せんじゅうみんぞく)アイヌ。近年、その伝統(でんとう)に光が当てられています。 (古池康司(こいけこうじ))

 アイヌ文化(ぶんか)を伝(つた)える民間(みんかん)の施設(しせつ)「アイヌ民族博物館(みんぞくはくぶつかん)」(北海道白老(ほっかいどうしらおい)町)にやってきました。チセと呼(よ)ばれるかやぶき屋根(やね)の家屋(かおく)が五棟並(むねなら)び、その中の一つでは、独特(どくとく)の模様(もよう)の衣(ころも)をまとった男女が、踊(おど)りを披露(ひろう)していました。鳥を弓で射(い)るしぐさをしたり、いろりを囲(かこ)んで歌ったり…。国連教育科学文化機関(こくれんきょういくかがくぶんかきかん)(ユネスコ)の無形(むけい)文化遺産(いさん)にもなっているアイヌ古式舞踊(こしきぶよう)です。

 北海道といえば、寒(さむ)い気候(きこう)に広い大地、ひときわ大きいヒグマや川を上るサケなどが特徴(とくちょう)ですね。こうした自然(しぜん)を背景(はいけい)に、アイヌは狩(か)りや漁(りょう)をし、本州(ほんしゅう)など周辺(しゅうへん)の人たちと交易(こうえき)をして暮(く)らしていました。

 また、動物(どうぶつ)や植物(しょくぶつ)、生活の用具(ようぐ)などを「カムイ(神(かみ))」として敬(うやま)いました。食料(しょくりょう)や衣服(いふく)にするために動物を捕(と)らえ、代(か)わりに、歌や踊りでその霊(れい)を神さまの世界(せかい)に送(おく)り返(かえ)す儀式(ぎしき)をして、身(み)の回りのものを大切にしました。北海道の調査(ちょうさ)では、道内に暮らすアイヌは約(やく)1万6000人。ただ、ふだんからチセに暮らし、伝統的(でんとうてき)な狩猟(しゅりょう)などで生計を立てている人は、もういないそうです。どうしてでしょう。

 北海道には約2万年前から人が住(す)んでいたとされ、長い縄文時代(じょうもんじだい)を経(へ)て約800年前にはアイヌ文化が形づくられました。でも江戸(えど)時代になると、侍(さむらい)たちの松前藩(まつまえはん)が北海道に進出(しんしゅつ)し、武力(ぶりょく)を背景に自由(じゆう)な交易を制限(せいげん)。物(もの)を交換(こうかん)する条件(じょうけん)が悪(わる)くなるなど、アイヌの立場が不利(ふり)になっていきます。

 明治(めいじ)時代には政府(せいふ)が北海道を日本の領土(りょうど)にします。アイヌを劣(おと)っているとみなし、川でサケを捕ることを禁(きん)じ、日本語を使(つか)わせるなど日本人と同じ生活にさせる同化政策(どうかせいさく)を進(すす)めます。アイヌは文化や生活を奪(うば)われ、次第(しだい)に伝統的な暮らしをする人はいなくなっていきました。現代(げんだい)でも差別(さべつ)が残(のこ)り、アイヌであることを隠(かく)す人もいるそうです。

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 でも21世紀(せいき)になると、世界中(せかいじゅう)で先住民(せんじゅうみん)への理解(りかい)が高まってきました。アイヌやさまざまな少数民族(みんぞく)が「自らの文化(ぶんか)に誇(ほこ)りを持(も)ち、守(まも)っていこう」と声を上げ、人権意識(じんけんいしき)も高まる中で2007年、先住民の権利(けんり)を尊重(そんちょう)する国連(こくれん)の宣言(せんげん)が採択(さいたく)されたのがきっかけです。08年には、日本の国会でアイヌが先住民として認(みと)められ、20年の東京五輪(とうきょうごりん)に合わせて、白老(しらおい)のアイヌ民族博物館(はくぶつかん)の周辺(しゅうへん)に新たな国立の博物館などを建設(けんせつ)する国のプロジェクトも始動(しどう)。「多様(たよう)な文化が共生(きょうせい)する日本」を世界にアピールする準備(じゅんび)が進(すす)んでいます。

 アイヌの少女が活躍(かつやく)する漫画(まんが)「ゴールデンカムイ」(野田(のだ)サトルさん作)も話題(わだい)になり、アイヌ文化に注目(ちゅうもく)が集(あつ)まっています。アイヌ語は独自(どくじ)の文字はありませんが、昔話(むかしばなし)や伝説(でんせつ)がお年寄(としよ)りにたくさん受(う)け継(つ)がれていて、過去(かこ)に録音(ろくおん)された音声を少しずつ集めて研究(けんきゅう)も進んでいます。

 博物館学芸員(がくげいいん)の八幡巴絵(やはたともえ)さん(33)は、父母ともアイヌの家系(かけい)。「先祖(せんぞ)のしてきた暮(く)らしや文化は、決(けっ)して劣(おと)っているわけではない」と考え、伝承(でんしょう)の調査(ちょうさ)や来館者(らいかんしゃ)への講演(こうえん)などをしています。「アイヌは、さまざまなカムイたちとの関(かか)わりの中で厳(きび)しい自然(しぜん)とともに力強く生きてきました。そんな先人たちの文化を、次世代(じせだい)につないでいきたい」と話しています。

 

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