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知るコレ!

障害者ささえる介助犬

パートナーの松山(まつやま)ゆかりさんの指示(しじ)に従(したが)い、携帯(けいたい)電話をくわえる介助犬(かいじょけん)のジョイ=愛知県長久手(あいちけんながくて)市の「シンシアの丘(おか)」で

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 リオデジャネイロ・パラリンピックが先月終(お)わり、次期(じき)2020年東京(とうきょう)大会に向(む)けて誰(だれ)もが生活しやすい環境(かんきょう)づくりが期待(きたい)されます。障害(しょうがい)のある人と一緒(いっしょ)に行動(こうどう)し、助(たす)ける犬に、介助犬(かいじょけん)と呼(よ)ばれる犬がいます。どんな犬なのでしょうか。 (佐橋大(さはしひろし))

〔1〕夢かなう

 岐阜県各務原(ぎふけんかかみがはら)市の松山(まつやま)ゆかりさん(34)は、病気(びょうき)のため手足が不自由(ふじゆう)です。握力(あくりょく)はほとんどなく移動(いどう)に電動(でんどう)の車いすが欠(か)かせません。5年前から介助犬(かいじょけん)ジョイと一緒(いっしょ)に暮(く)らしています。

 「テイク携帯(けいたい)!(携帯を取(と)って)」と松山さんが呼(よ)び掛(か)けると、ジョイは携帯電話を捜(さが)して、松山さんに届(とど)けます。松山さんがベッドから起(お)き上がるときには、ジョイがするりと、松山さんの脇(わき)の下に潜(もぐ)り込(こ)み、上体を起こすのを助(たす)けます。物(もの)を拾(ひろ)い上げたり、ひもを引っ張(ぱ)って部屋の明かりを消(け)したりもします。

 「ヘルパーさんがいないと、何もできない」と困(こま)っていたときに、介助犬を思い出し、育(そだ)てている団体(だんたい)の一つ社会福祉法人(ふくしほうじん)日本介助犬協会(きょうかい)に連絡(れんらく)しました。ジョイが来る前、「近くのコンビニに出掛けるのが夢(ゆめ)」と言っていた松山さんは、今では、ジョイと新幹線(しんかんせん)にも乗(の)り、行きたいところに赴(おもむ)きます。

 「以前(いぜん)は、何かあったら周(まわ)りに迷惑(めいわく)を掛けると思い家に引きこもっていた。今は、ジョイがいるから大丈夫(だいじょうぶ)と思える。前向(まえむ)きな気持(きも)ちを取り戻(もど)せた」と松山さん。松山さんのように、介助犬によって生活が良(よ)くなる可能性(かのうせい)のある人は国内に約(やく)1万5000人いると考えられています。一方、実際(じっさい)に活動(かつどう)する介助犬は71頭にとどまっています。

〔2〕使用者と

 ジョイは1歳(さい)から2年間、日本介助犬協会(かいじょけんきょうかい)の介助犬総合訓練(そうごうくんれん)センター「シンシアの丘(おか)」(愛知県長久手(あいちけんながくて)市)で訓練を受(う)けました。訓練士(し)との遊(あそ)びの延長(えんちょう)で楽しく、仕事(しごと)を学びました。

 センターには、医療(いりょう)や福祉(ふくし)、リハビリの専門資格(せんもんしかく)を持(も)つ人もいて、介助犬がどういう動作(どうさ)をすれば、パートナーの使用者(しようしゃ)が助(たす)かるかといったことを、みんなで考えています。使用者が一人で犬を世話(せわ)できるようブラシなどの道具(どうぐ)を工夫(くふう)したりもします。

 使用者の体の不自由(ふじゆう)さも、それぞれ違(ちが)います。使用者の求(もと)める動作をするのが得意(とくい)な犬を見極(みきわ)めてペアをつくり、一緒(いっしょ)に暮(く)らす練習(れんしゅう)をします。試験(しけん)に受かったペアは「介助犬と介助犬使用者」と認(みと)められます。

 「介助犬候補(こうほ)の犬10頭のうち介助犬になるのは2、3頭」と協会広報部(こうほうぶ)の後藤優花(ごとうゆか)さんは説明(せつめい)します。乗(の)り物(もの)や大きな音が苦手(にがて)とか、他(ほか)の動物(どうぶつ)に関心(かんしん)が強いということが、育(そだ)てたり訓練したりするうちに分かった犬は、介助犬になるよりペットとして飼(か)われる方が幸(しあわ)せと判断(はんだん)され、一般家庭(いっぱんかてい)に譲(ゆず)られます。一頭の介助犬を育てる費用(ひよう)は240万〜300万円かかります。主(おも)に募金(ぼきん)でまかなわれています。

〔3〕病院など

 介助犬(かいじょけん)や、盲導(もうどう)犬、耳の不自由(ふじゆう)な人に音を知らせる聴導(ちょうどう)犬は、合わせて「身体障害者補助(しんたいしょうがいしゃほじょ)犬」と呼(よ)ばれています。

 公共施設(こうきょうしせつ)やお店、鉄道(てつどう)、病院(びょういん)、ホテル、働(はたら)く人が50人以上(いじょう)の職場(しょくば)などは、補助犬を受(う)け入れなければなりません。これは、2002年にできた法律(ほうりつ)で定(さだ)められています。

 ところが、日本介助犬協会(きょうかい)によると、病院などで受け入れを拒(こば)むところがまだあるそうです。受け入れているつもりでも、介助犬だけ入り口に待(ま)たせるといった不適切(ふてきせつ)な対応(たいおう)もあるそうです。「介助犬は使用者(しようしゃ)の体の一部(いちぶ)のようなもの。迷惑(めいわく)を掛(か)けないよう訓練(くんれん)もされていて清潔(せいけつ)です。拒まないで」と協会の高柳友子事務局長(たかやなぎともこじむきょくちょう)は呼び掛けます。

 仕事(しごと)中の介助犬には「話し掛けたり、見詰(みつ)めたり、触(さわ)ったりしないで」と言います。気が散(ち)ってしまうからです。もし、話し掛けるとしたら、犬を連(つ)れている使用者に話し掛けるといいそうです。

 協会は、介助犬への理解(りかい)を広げ、一頭でも多くの介助犬を育(そだ)てたいと、訓練センターの見学会を毎月開(ひら)いています。「少しの関(かか)わりで暮(く)らしやすくなる人がいることを、介助犬を通じて多くの人に知ってほしい」と高柳さんは話します。

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