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知るコレ!

日本人に愛される紅茶

国内外の紅茶(こうちゃ)が勢(せい)ぞろいした「紅茶フェスティバル」=愛知県尾張旭(あいちけんおわりあさひ)市で

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 11月1日は「紅茶(こうちゃ)の日」です。「なぜ?」と思った人もいるはずです。三重県鈴鹿(みえけんすずか)市出身(しゅっしん)の船主大黒屋光太夫(せんしゅだいこくやこうだゆう)(1751〜1828年)が、1791年の11月ごろにロシアの茶会に招(まね)かれ、日本人で初(はじ)めて紅茶を飲(の)んだとされる史実(しじつ)にちなみます。世界中(せかいじゅう)で水の次(つぎ)に飲まれ愛(あい)されている紅茶と日本の関(かか)わりを調(しら)べました。 (那須政治(なすまさはる))

〔1〕 尾張旭市

 愛知県尾張旭(あいちけんおわりあさひ)市で10月23日に開(ひら)かれた「紅茶(こうちゃ)フェスティバル」。今年で5回目を迎(むか)えた、紅茶の日に合わせた恒例行事(こうれいぎょうじ)です。インド、中国(ちゅうごく)、ケニアなどの海外産(さん)はもちろん、静岡(しずおか)、愛知、三重(みえ)の各(かく)県産などの紅茶などを扱(あつか)う店が32店並(なら)びました。どの店も試飲(しいん)ができ、味(あじ)や香(かお)りの微妙(びみょう)な違(ちが)いを楽しみながら、お気に入りの紅茶を探(さが)す人でにぎわいました。

 尾張旭市は近年、「おいしい紅茶日本一のまち」をPR(ピーアール)するまちおこしに取(と)り組んでいます。日本一とは、日本紅茶協会(きょうかい)(東京(とうきょう))が毎年公表(こうひょう)する「おいしい紅茶の店」の数が、全国最多(ぜんこくさいた)という意味(いみ)。2013年に全国の市町村別(べつ)で初(はじ)めて日本一になり、今年のまとめでも大阪(おおさか)市と並ぶ18店でトップです。大阪市の人口が尾張旭市(約(やく)8万3000人)の33倍(ばい)であることを考えると、まちの規模(きぼ)の割(わり)に数が多いことが分かります。

 紅茶専門店(せんもんてん)の経営(けいえい)や茶葉(ちゃば)の輸入(ゆにゅう)などを手掛(てが)ける地元出身(しゅっしん)の堀田信幸(ほったのぶゆき)さん(63)が11年、「特徴(とくちょう)のない尾張旭を、紅茶で活性化(かっせいか)できないか」と同業者(どうぎょうしゃ)に働(はたら)きかけ、紅茶をいれる技術(ぎじゅつ)を身(み)に付(つ)けた店が徐々(じょじょ)に増(ふ)えました。味の追求(ついきゅう)を今後も続(つづ)け、「紅茶といえば尾張旭というイメージを高めていきたい」と話します。

〔2〕 同じ原料

 私(わたし)たちがよく飲(の)む緑茶(りょくちゃ)(日本茶)、ウーロン茶(中国(ちゅうごく)茶)、紅茶(こうちゃ)はすべてツバキ科の茶木が原料(げんりょう)です。同じ茶葉(ちゃば)でも発酵度(はっこうど)で色や味(あじ)に差(さ)が出ます。

 発酵は、茶葉の表皮細胞(ひょうひさいぼう)に含(ふく)まれる酸化酵素(さんかこうそ)が、葉の色や香(かお)りを変(か)える働(はたら)きを利用(りよう)します。皮(かわ)をむいたリンゴが茶色になる性質(せいしつ)と似(に)ています。緑(みどり)色の茶葉は発酵が進(すす)むほど赤茶色になり、発酵させないと緑茶、半発酵といって途中(とちゅう)で発酵をやめるとウーロン茶、最後(さいご)まで発酵させると紅茶です。

 17世紀(せいき)にオランダ商人(しょうにん)が中国からヨーロッパに茶葉を持(も)ち込(こ)み、紅茶に砂糖(さとう)を入れて飲む方法(ほうほう)がイギリスを中心に広がりました。紅茶の商売(しょうばい)で財(ざい)をなしたイギリスは、19世紀に植民地(しょくみんち)のインドやスリランカで茶葉の栽培(さいばい)や紅茶の生産(せいさん)に成功(せいこう)。産地名のダージリン、アッサム、セイロンなどは今も世界的(せかいてき)ブランドです。

 緑茶大国の日本も明治初期(めいじしょき)に、政府(せいふ)が「紅茶を輸出(ゆしゅつ)して近代化(きんだいか)を進めよう」と考えました。徳川(とくがわ)家の元家来、多田元吉(ただもときち)(1829〜96年)が研究(けんきゅう)を開始(かいし)。インド各地(かくち)を訪(たず)ね、持ち帰った品種(ひんしゅ)で生産に成功し、全国(ぜんこく)に製法(せいほう)を広めました。

 主(おも)な産地は静岡(しずおか)、三重(みえ)、鹿児島県(かごしまけん)。1950年代(ねんだい)に生産と輸出がピークになりましたが、71年の輸入自由化(じゆうか)で高品質(こうひんしつ)の安(やす)い海外産に押(お)され、国産紅茶は一気に衰退(すいたい)しました。

 〔3〕 国産に力

 ところがここ10年、国産紅茶(こくさんこうちゃ)が息(いき)を吹(ふ)き返(かえ)しています。2007年に11トンだった生産量(せいさんりょう)は昨年(さくねん)に95トンに急増(きゅうぞう)。輸入(ゆにゅう)量の0・6%程度(ていど)ですが「和(わ)紅茶ブーム」と呼(よ)ぶ声もあります。

 日本紅茶協会専務理事(きょうかいせんむりじ)の稲田信一(いなだしんいち)さん(66)は、ペットボトル入りの緑茶(りょくちゃ)が増(ふ)えたこととの関係(かんけい)を指摘(してき)します。「緑茶の茶葉(ちゃば)の価格(かかく)が下がり、生産者(しゃ)が紅茶作りに乗(の)りだして、外国産に負(ま)けない紅茶が出てきた」

 多田元吉(ただもときち)が茶園を開(ひら)いた静岡(しずおか)市丸子地区(まりこちく)の村松二六(むらまつにろく)さん(76)は、多田の思いを継(つ)ぐため1989年に紅茶生産を始(はじ)めました。国産紅茶生産の先駆(せんく)者で、見学に来る人が絶(た)えません。

 「日本の紅茶発祥(はっしょう)の地」と銘打(めいう)ち、多田がインドから持(も)ち帰った種子(しゅし)から育(そだ)てた茶木の子孫(しそん)の「べにふうき」など4品種(ひんしゅ)を、無農薬(むのうやく)で栽培(さいばい)。独自(どくじ)ブランドの「丸子紅茶」はミルクに負けない強い風味(ふうみ)が特徴(とくちょう)です。「生産者のストーリーを知ると紅茶の味(あじ)わいが深(ふか)まる」と話します。

 国産紅茶は日本人の好(この)みに合うように作られ、すっきりとしたうまみと渋(しぶ)みがある「べにひかり」や、緑茶の主力(しゅりょく)品種でやわらかく軽(かる)い飲(の)み口の「やぶきた」も人気です。これから寒(さむ)くなる季節(きせつ)。国内外の紅茶を飲み比(くら)べてみてはいかがですか。

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