トップ > 特集・連載 > 知るコレ! > 記事一覧 > 記事

ここから本文

知るコレ!

千年の音色奏でる雅楽

雅楽(ががく)を演奏(えんそう)する旭(あさひ)雅楽会の人たち=名古屋(なごや)・栄(さかえ)で

写真

 芸術(げいじゅつ)の秋。日本古来の音楽の一つに、神社(じんじゃ)などで演奏(えんそう)される雅楽(ががく)があります。多くの種類(しゅるい)の楽器(がっき)を合奏する形が1000年以上(いじょう)前から今まで受(う)け継(つ)がれてきた例(れい)は他(ほか)になく、「世界最古(せかいさいこ)のオーケストラ」とも言われます。その世界をのぞいてみましょう。(佐橋大(さはしひろし))

〔1〕起源古く

 6日、名古屋(なごや)・栄(さかえ)の愛知県芸術劇場(あいちけんげいじゅつげきじょう)では、愛知県一宮(いちのみや)市の雅楽演奏団体(ががくえんそうだんたい)「旭(あさひ)雅楽会」のメンバーが、雅楽の旋律(せんりつ)で「君(きみ)が代(よ)」を演奏しました。合奏全体(ぜんたい)を覆(おお)うような「笙(しょう)」の和音(わおん)、横笛(おうてき)、太鼓(たいこ)などの音が絶妙(ぜつみょう)に組み合わさり、優雅(ゆうが)な音色となって観客(かんきゃく)を包(つつ)みました。普段(ふだん)聞く君が代とは少し違(ちが)った曲調(きょくちょう)です。

 ヨーロッパで、今のオーケストラの原型(げんけい)ができたのが約(やく)300年前と言われていますが、雅楽の起源(きげん)は、そのはるか昔(むかし)。日本固有(こゆう)の音楽や舞(まい)と、1400年ほど前から朝鮮半島(ちょうせんはんとう)や中国大陸(ちゅうごくたいりく)などから順次伝(じゅんじつた)わった音楽や舞が合わさって、平安時代(へいあんじだい)に完成(かんせい)した芸術です。

 701年にできた法典(ほうてん)、大宝律令(たいほうりつりょう)では、朝廷(ちょうてい)に、音楽を演奏するための機関(きかん)「雅楽寮(りょう)」を置(お)くことを定(さだ)めました。奈良(なら)時代に東大寺(とうだいじ)の大仏(だいぶつ)の完成を祝(いわ)う式典(しきてん)でも、さまざまな舞楽(ぶがく)が披露(ひろう)されたという記録(きろく)もあります。

 平安時代の貴族(きぞく)、清少納言(せいしょうなごん)が書いた「枕草子(まくらのそうし)」にも、笙、篳篥(ひちりき)など雅楽の楽器(がっき)についての感想(かんそう)がつづられています。どこに、どんなふうに書かれているのか、調(しら)べてみるのもいいでしょう。

〔2〕指揮なし

 雅楽(ががく)は総合芸術(そうごうげいじゅつ)。楽器(がっき)を合奏(がっそう)する「管弦(かんげん)」や、音楽に舞(まい)が伴(ともな)う「舞楽(ぶがく)」などの種類(しゅるい)に分かれます。

 吹(ふ)いて演奏(えんそう)する「管楽器」。穴(あな)をふさぐ指遣(ゆびづか)いが同じでも、楽器の傾(かたむ)きや息遣(いきづか)いのささやかな違(ちが)いで、音の高低(こうてい)まで変(か)わります。

 つややかな響(ひび)きで主旋律(しゅせんりつ)を担(にな)う小さな縦笛(たてぶえ)「篳篥(ひちりき)」は、音を出すリード「廬舌(ろぜつ)」が水辺(みずべ)に生えるアシでできています。揺(ゆ)らぎやすい、その音色は「人の声」を表(あらわ)すといいます。

 長さの異(こと)なる17本の竹の管(くだ)を、吹き口のついた器(うつわ)に差(さ)し込(こ)んだ楽器「笙(しょう)」は異なる音色を一度(いちど)に出せます。「ファーン」と聞こえる音は「天から差し込む光」を表現(ひょうげん)します。横笛(おうてき)の一種(いっしゅ)「龍笛(りゅうてき)」の奏(かな)でる音色は、伸(の)びやかで「竜(りゅう)の声」、つまり天と地の間を象徴(しょうちょう)します。

 管弦にはさらに、弦楽器の「琵琶(びわ)」「箏(そう)」、打楽器(だがっき)の「鉦鼓(しょうこ)」「鞨鼓(かっこ)」「太鼓(たいこ)」などが加(くわ)わります。

 指揮者(しきしゃ)はいません。最初(さいしょ)に演奏する龍笛が基準(きじゅん)になって、他(ほか)の楽器が音を合わせる形で合奏が始(はじ)まります。音楽の進行(しんこう)の中で、それぞれの楽器が役割(やくわり)を果(は)たします。「みんなが全員(ぜんいん)の音を聞き、肌(はだ)で感(かん)じながら、音楽をつくり出すのが雅楽」と旭(あさひ)雅楽会の岩田法智華副理事長(いわたのりちかふくりじちょう)(36)は話します。

〔3〕伝統文化

 雅楽(ががく)は主(おも)に、神社(じんじゃ)や寺が受(う)け継(つ)いできました。近年は、大事(だいじ)な伝統文化(でんとうぶんか)として、さまざまな人が関(かか)わり受け継ぐ動(うご)きも広がっています。

 愛知県岡崎(あいちけんおかざき)市の矢作北(やはぎきた)小学校の音楽室からは、有名(ゆうめい)な雅楽の曲(きょく)「越天楽(えてんらく)」が聞こえてきます。雅楽部(ぶ)の演奏(えんそう)です。44人の部員(ぶいん)は、毎日練習(れんしゅう)しています。鞨鼓(かっこ)を主に演奏する6年の荒木栞(あらきしおり)さん(11)は「4年生で雅楽を始(はじ)めました。音に温(あたた)かみがあり、気持(きも)ちによっても変(か)わります。そこが面白(おもしろ)い」と話します。

 この地域(ちいき)では、江戸時代(えどじだい)、寺の住職(じゅうしょく)が楽師(がくし)を招(まね)き、住民(じゅうみん)らと習(なら)って以来(いらい)、雅楽が盛(さか)ん。その文化を受け継ごうと、1991年、雅楽部ができました。部員は、地元の雅楽団体(だんたい)「長瀬楽人会(ながせがくにんかい)」の指導(しどう)を受けています。

 愛知県一宮(いちのみや)市の「旭(あさひ)雅楽会」は2001年に結成(けっせい)。市内の尾張猿田彦(おわりさるたひこ)神社を拠点(きょてん)に活動(かつどう)しています。会社員、主婦(しゅふ)ら約(やく)30人が月5回、練習します。舞(まい)を練習する小中学生もいます。

 学習(がくしゅう)指導要領(ようりょう)が変わり、小学6年生の音楽の教科書には、雅楽が載(の)るようになりました。旭雅楽会にも学校で雅楽を教えてほしいと依頼(いらい)があります。岩田副理事長(いわたふくりじちょう)は「雅楽を通じて、日本の素晴(すば)らしさを伝(つた)えたい」と話します。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索