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知るコレ!

坐禅で自分見つめ直す

いす坐禅(ざぜん)をする市民(しみん)ら。曹洞宗(そうとうしゅう)は壁側(かべがわ)を向(む)く=名古屋(なごや)市北区(く)の愛知学院(あいちがくいん)大で

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 ストレスを解消(かいしょう)し、集中力(しゅうちゅうりょく)を高められるとして、「坐禅(ざぜん)」が人気を集(あつ)めています。こつさえつかめば、いつでもどこでもできるといいます。今週から年の瀬(せ)の12月。心を静(しず)めて、1年を振(ふ)り返(かえ)ってみませんか。 (美細津仁志(みさいづひとし))

〔1〕 鎌倉時代

 名古屋(なごや)市北区(く)にある愛知学院(あいちがくいん)大名城公園(めいじょうこうえん)キャンパス。10階建(かいだ)てのビルにある坐禅室(ざぜんしつ)で、スーツ姿(すがた)のサラリーマンや運動着(うんどうぎ)のお年寄(としよ)りが坐禅をしていました。

 愛知学院大禅研究所(ぜんけんきゅうじょ)が昨年(さくねん)9月から毎月1回開(ひら)いている会です。手軽(てがる)な「いす坐禅」も体験(たいけん)でき、30人の定員(ていいん)を35人に増(ふ)やしてもいつも満員(まんいん)です。

 坐禅は悟(さと)りを開くための禅宗(ぜんしゅう)の修行(しゅぎょう)です。鎌倉時代(かまくらじだい)に禅宗の一派(いっぱ)、曹洞宗(そうとうしゅう)を伝(つた)えた僧(そう)の道元(どうげん)(1200〜53年)は「坐禅は静(しず)かな部屋で、冬暖(あたた)かく、夏涼(すず)しくして行い、適度(てきど)な食事(しょくじ)や飲(の)み物(もの)も取(と)りましょう」と訴(うった)え、苦(くる)しい坐禅のイメージを一新しました。禅研究所の菅原研州(すがわらけんしゅう)研究員(41)は「坐禅は継続(けいぞく)して、安(やす)らかにするもの。我慢(がまん)大会ではありません」と語ります。

 同じ時代に伝えられた臨済宗(りんざいしゅう)も坐禅を重(おも)んじる禅宗です。曹洞宗は壁(かべ)を向(む)き、臨済宗は互(たが)いに向かい合います。

 臨済宗の白林寺(はくりんじ)(名古屋市中区)でも月に1度開かれる体験会で多くの市民(しみん)が坐禅をしていました。この寺の住職(じゅうしょく)で、東海(とうかい)地方の臨済宗妙心寺派(みょうしんじは)の寺院(じいん)でつくる「名古屋禅センター」代表(だいひょう)の武山広道(たけやまこうどう)さん(63)は「坐禅で自分自身(じしん)を見つめ直す。心の大掃除(おおそうじ)をしましょう」と話します。

 どちらの会も親子で参加(さんか)できます。

〔2〕 形を学ぶ

 曹洞宗(そうとうしゅう)の道場の本家の一つ、永平寺(えいへいじ)(福井県(ふくいけん)永平寺町)。全国(ぜんこく)から集(あつ)まった「雲水(うんすい)」と呼(よ)ばれる若手(わかて)の修行僧約(しゅぎょうそうやく)140人が坐禅(ざぜん)や読経(どきょう)をして過(す)ごしています。ここで、1泊(ぱく)2日の一般向(いっぱんむ)け坐禅体験会(たいけんかい)が開(ひら)かれていると聞き、参加(さんか)してみました。

 最初(さいしょ)に修行僧から坐禅の形を学びます。坐蒲(ざふ)というクッションに腰(こし)を下ろし、両足(りょうあし)を互(たが)いのももの上に載(の)せるか、片足(かたあし)だけ上に載せるかを選(えら)びます。手は右手の上に左手を重(かさ)ねて、卵(たまご)を持(も)つように親指(おやゆび)を合わせます。視線(しせん)は斜(なな)め45度(ど)に落(お)とし、呼吸(こきゅう)は深(ふか)く。頭で天井(てんじょう)を押(お)し上げるイメージで姿勢(しせい)を正しく整(ととの)えます。

 1回当たり40分。線香(せんこう)1本が燃(も)える時間です。初日に4回、2日目には午前4時10分から2回繰(く)り返(かえ)しました。最初は足がしびれて立てなくなりましたが、最後は心地良(ここちよ)くなり、40分が10分ほどに感(かん)じられました。

 参加した富山(とやま)県黒部(くろべ)市の会社員男性(かいしゃいんだんせい)(49)は「仕事(しごと)のストレスに悩(なや)んでいましたが、これからも続(つづ)けて平常心(へいじょうしん)を保(たも)ちたい」と笑顔(えがお)を見せました。がんで心身(しんしん)を病(や)み、自殺(じさつ)も考えたという愛知(あいち)県の女性(44)も「坐禅をしたらすべての悩みが小さく感じられるようになりました」とスッキリした表情(ひょうじょう)でした。

〔3〕 呼吸法で

 でもなぜ坐禅(ざぜん)をすると心が落(お)ち着(つ)くのでしょうか。坐禅と脳(のう)の働(はたら)きに詳(くわ)しい東邦(とうほう)大医学部名誉教授(いがくぶめいよきょうじゅ)の有田秀穂(ありたひでほ)さん(68)=脳生理学=は「丹田呼吸(たんでんこきゅう)がセロトニン神経(しんけい)を活性化(かっせいか)させ、脳や心をスッキリさせるからです」と指摘(してき)します。

 セロトニン神経は脳の中にある神経で、心をコントロールするセロトニンという脳内物質(ぶっしつ)を分泌(ぶんぴつ)します。同じく脳内物質には興奮(こうふん)や快楽(かいらく)を伝(つた)えるドーパミンや、集中力(しゅうちゅうりょく)をつかさどるノルアドレナリンがありますが、時に暴走(ぼうそう)し、うつ病(びょう)などの心の病(やまい)の原因(げんいん)になります。これを収(おさ)める役割(やくわり)を担(にな)う薬(くすり)のような物質がセロトニンなのです。

 丹田はおへその下約(やく)5〜10センチにあり、丹田呼吸法(ほう)は下腹部(かふくぶ)を絞(しぼ)るイメージで息(いき)を深(ふか)く吐(は)き切り、自然(しぜん)に空気を吸(す)い、これを繰(く)り返(かえ)します。坐禅をするときもこの呼吸をしています。目を自然に開(ひら)けば、より集中できるのです。

 5〜30分以上続(いじょうつづ)けないと効果(こうか)はありません。「初心者(しょしんしゃ)は呼吸に合わせて1から10まで数えるか、子どもならあいうえおを心の中で言ってみて」と有田さんは話します。

 春にかけて、受験(じゅけん)やテスト、発表会(はっぴょうかい)など緊張(きんちょう)する場面(ばめん)も多いですね。その前に、坐禅をしてから臨(のぞ)んでみてはいかがでしょうか。

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