トップ > 特集・連載 > 知るコレ! > 記事一覧 > 記事

ここから本文

知るコレ!

時のずれ調節「うるう秒」

うるう秒(びょう)の時の時計表示(ひょうじ) 写真(しゃしん)は昨年(さくねん)7月に追加(ついか)されたうるう秒

写真

 もうすぐ冬休み。クリスマスやお正月などの行事(ぎょうじ)が待(ま)ち遠しい季節(きせつ)ですね。例年(れいねん)と違(ちが)うのは、来年元日の午前9時に1年半ぶりの「うるう秒(びょう)」が組み込(こ)まれ、いつもより1秒長い日になることです。生活に欠(か)かせない時間について考えてみましょう。 (那須政治(なすまさはる))

〔1〕二つの時

 時計の図を見てください。通常(つうじょう)、「8時59分59秒(びょう)」の次(つぎ)は「9時00分00秒」です。うるう秒は、この間に入る「8時59分60秒」です。うるうは「余分(よぶん)な」を意味(いみ)し、漢字(かんじ)で「閏(うるう)」と書きます。

 私(わたし)たちは時計を見て時間を知りますが、時間は何に基(もと)づいて決(き)まるのでしょうか。

 人類(じんるい)は4、5000年以上(いじょう)前から、「太陽(たいよう)が昇(のぼ)って沈(しず)み、また次に昇るまで」を1日と考え、それを24時間、60分、60秒と細かく刻(きざ)んで時を把握(はあく)していました。

 太陽が動(うご)いて見えるのは、地球(ちきゅう)が自ら1回転(かいてん)(自転)しているため。自転にかかる時間の長さは変(か)わらないと考えられ、地球の回転が時を計る基準(きじゅん)とされたのです。その時間は「天文(てんもん)時」と呼(よ)ばれます。

 20世紀(せいき)に入り、自転の速度(そくど)にはぶれがあり、天文時に長短(ちょうたん)があると分かりました。そこで1958年に採用(さいよう)された時の基準が、セシウム133という金属(きんぞく)を使(つか)って計る「原子時」です。数10万年に1秒しかずれない精度(せいど)を誇(ほこ)ります。

 世界(せかい)の標準(ひょうじゅん)時は、フランスの国際度量衡局(こくさいどりょうこうきょく)が、各国(かっこく)から集(あつ)めた原子時の情報(じょうほう)をもとに決めています。天文時は日々計測(けいそく)されていますが、やがて原子時との差(さ)が生じます。この差を埋(う)めるのがうるう秒の正体です。

〔2〕1秒追加

 うるう秒(びょう)の調整(ちょうせい)は「天文(てんもん)時と原子時の差(さ)を0.9秒以内(いない)にする」と決(き)まっています。2つの時計が別々(べつべつ)の時刻(じこく)を表示(ひょうじ)しないようにするためです。1972年に初導入(はつどうにゅう)され、今回が27回目。いずれも原子時に1秒を追加(ついか)しています。フランスの国際機関(こくさいきかん)の決定(けってい)を基(もと)に、国内では「日本標準(ひょうじゅん)時」を決めて管理(かんり)する情報通信研究機構(じょうほうつうしんけんきゅうきこう)(東京(とうきょう))がうるう秒を操作(そうさ)します。

 天文時と原子時は、なぜずれたままではいけないのでしょう。機構の時空標準研究室長花土(はなど)ゆう子(こ)さん(52)は「ずれを放置(ほうち)すると、数1000年後、例(たと)えば夜の時間なのに夕日が見えるという現象(げんしょう)が起(お)こり得(う)るから」と話します。これでは、太陽(たいよう)が出ると目を覚(さ)まし、夜は休むようにプログラムされた人間の体内時計が壊(こわ)れてしまいます。

 前回のうるう秒は、約(やく)1年半前の2015年7月でした。前々回はその3年前の12年7月。花土さんは「規則性(きそくせい)がないので、1月の次(つぎ)のうるう秒調節(ちょうせつ)の時期(じき)はまだ予想(よそう)できない」と言います。

 00年前後から、うるう秒廃止(はいし)の議論(ぎろん)が出始(ではじ)めました。世界(せかい)中がコンピューターに頼(たよ)る社会になり、うるう秒対策(たいさく)にかかる手間やお金が膨大(ぼうだい)になったからです。「時の研究家」として活動(かつどう)する山口(やまぐち)大客員教授(きゃくいんきょうじゅ)の織田一朗(おだいちろう)さん(69)は「コストの割(わり)にプラス面(めん)が少ないのが要因(よういん)です」。対策をしたのに、予想外のトラブルで一時予約(よやく)が取(と)れなくなった航空(こうくう)会社もありました。

〔3〕開発競う

 「たかが1秒(びょう)」と言う人もいれば、「されど1秒」と情熱(じょうねつ)を燃(も)やす人もいます。

 原子時は、物(もの)を構成(こうせい)する小さな粒(つぶ)「原子」が、決(き)まった振動(しんどう)数の電磁波(でんじは)を吸収(きゅうしゅう)したり放射(ほうしゃ)したりする仕組(しく)みを利用(りよう)して計ります。現在(げんざい)は、セシウム133原子が、1秒間に約(やく)92億(おく)回振動する電磁波にさらされたときに光るまでの時間を1秒としています。

 時計の性能(せいのう)は、0.1秒より0.01秒、さらに0.001秒まで計れる方が高機能(きのう)だと言えます。世界(せかい)の科学者(かがくしゃ)は、今より細かく計れる時計の開発(かいはつ)を競(きそ)っています。

 産業技術総合研究所(さんぎょうぎじゅつそうごうけんきゅうしょ)の安田正美(やすだまさみ)さん(45)もその1人。日本の学者が考案(こうあん)した「光格子(こうし)時計」と呼(よ)ばれる次世代(じせだい)の原子時計の仕組みを活用し、1秒間に約518兆(ちょう)回振動する電磁波を当てた時に反応(はんのう)するイッテルビウム原子を使(つか)った時計の研究を続(つづ)けています。精度(せいど)はセシウム133の5万倍以上(ばいいじょう)を見込(みこ)みます。

 安田さんは「光格子時計の開発は徐々(じょじょ)に進(すす)み、近い将来(しょうらい)、原子時の基準(きじゅん)に置(お)き換(か)えられると思います。重力(じゅうりょく)の影響(えいきょう)で変化(へんか)する微量(びりょう)な時間も計れるので、地震(じしん)や火山噴火(ふんか)の予知(よち)につながる潜在能力(せんざいのうりょく)もあります」と力を込めました。

 毎日当たり前のように流(なが)れる時間。うるう秒をきっかけに、時間の持(も)つ意味(いみ)や価値(かち)を考えてみてはいかがですか。

写真
 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索