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知るコレ!

山・鉾・屋台行事文化遺産に

展示(てんじ)されている曳山(ひきやま)「月宮殿(げっきゅうでん)」=滋賀県長浜(しがけんながはま)市の曳山博物館(はくぶつかん)で

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 国連教育科学文化機関(こくれんきょういくかがくぶんかきかん)(ユネスコ)の無形(むけい)文化遺産(いさん)への登録(とうろく)が11月末(まつ)に決(き)まった「山・鉾(ほこ)・屋台行事(やたいぎょうじ)」。中部(ちゅうぶ)地方には、多くの行事が伝(つた)わっています。文化遺産として、未来(みらい)に受(う)け継(つ)ぐ価値(かち)とは何でしょうか。行事の中でも、子どもの果(は)たす役割(やくわり)がひときわ大きい滋賀県長浜(しがけんながはま)市の「長浜曳山祭(ひきやままつり)」を中心に、考えてみましょう。 (佐橋大(さはしひろし))

〔1〕長浜曳山

 長浜(ながはま)市の中心部(ぶ)にある曳山博物館(ひきやまはくぶつかん)。曳山祭(まつり)を多くの人に知ってもらおうと2000年に建(た)てられました。他(ほか)の地域(ちいき)で山、鉾(ほこ)、屋台(やたい)などと呼(よ)ばれているものを、長浜では「曳山」と呼び、市中心部に住(す)む人らでつくる13の「山組」が1基(き)ずつ曳山を守(まも)り伝(つた)えています。曳山は普段(ふだん)、蔵(くら)に入れられていますが、4月の祭(まつ)りの時以外(いがい)にも一般(いっぱん)の人が見られるよう2基が博物館に展示(てんじ)されています。

 曳山は、いずれも江戸時代(えどじだい)に作られました。神社(じんじゃ)の建物(たてもの)を思わせる屋根(やね)や柱(はしら)には、漆(うるし)や彫刻(ちょうこく)、飾(かざ)り金具(かなぐ)が施(ほどこ)され、動(うご)く美術館(びじゅつかん)と呼ばれます。傷(いた)むと、地元の仏壇(ぶつだん)の職人(しょくにん)が修理(しゅうり)してきました。市内に住む職人の一人で、漆塗(ぬ)りの専門家(せんもんか)、渡辺嘉久(わたなべよしひさ)さん(53)は長浜の曳山だけでなく、犬山祭(いぬやままつり)(愛知県(あいちけん)犬山市)の車山(やま)などの各地(かくち)の山や鉾の修理を手掛(てが)けてきました。取材(しゅざい)のときには、無形文化遺産(むけいぶんかいさん)「山・鉾・屋台行事(ぎょうじ)」の一つ、三重(みえ)県桑名(くわな)市の桑名石取祭(いしどりまつり)の祭車(さいしゃ)などの漆を、依頼(いらい)を受(う)けて塗り直していました。

 渡辺さんが家業(かぎょう)の漆塗りの仕事(しごと)を始(はじ)めたのは25年前。その技術(ぎじゅつ)が、曳山などの保存(ほぞん)に生かされています。金具職人に宮大工(みやだいく)…、渡辺さんのように本格的(ほんかくてき)な技術にこだわる職人の技(わざ)が、各地に伝わる山や鉾、屋台を、支(ささ)えています。

〔2〕伝統守る

 4月の曳山祭(ひきやままつり)では、曳山の舞台上(ぶたいじょう)で、5歳(さい)から12歳の男の子が歌舞伎(かぶき)を演(えん)じます。これを楽しみに多くの人が詰(つ)め掛(か)けます。子どもたちは、大人たちの助言(じょげん)を得(え)て歌舞伎の練習(れんしゅう)を重(かさ)ね、人として成長(せいちょう)します。

 大人は祭(まつ)りの運営(うんえい)などで、役割(やくわり)を果(は)たします。主役(しゅやく)を含(ふく)め多くの役者(やくしゃ)は、市の中心部(ぶ)に住(す)む子が務(つと)めますが少子化(しょうしか)の影響(えいきょう)もあり、周囲(しゅうい)の地域(ちいき)の子が出演することも。子どもの出演をきっかけに、その親が祭りに参加(さんか)するようになったり、役者を務めた子がその後、祭りを支(ささ)える大人になったりすることも。「祭りが人を結(むす)び付(つ)ける」と長浜(ながはま)曳山文化協会伝承委員会(ぶんかきょうかいでんしょういいんかい)委員長の家森裕雄(やもりひろお)さん(55)は話します。

 登録(とうろく)された他(ほか)の地域でも、さまざまな世代(せだい)の人たちが、祭りに関(かか)わり、そこで人のつながりができます。

 ユネスコの決議(けつぎ)文も「コミュニティーのさまざまな人の協力(きょうりょく)を得て、山・鉾(ほこ)・屋台行事(やたいぎょうじ)が行われている。責任(せきにん)は年齢(ねんれい)に応(おう)じて変(か)わり、上の年齢の世代が経験(けいけん)の少ない世代を指導(しどう)する。老若男女(ろうにゃくなんにょ)が組織(そしき)の責任や行事の運営を分担(ぶんたん)している」としています。「自分たちが地域の伝統(でんとう)を守(まも)っている」という誇(ほこ)りが、人々を動(うご)かす力になります。こうした取(と)り組みも評価(ひょうか)されました。

〔3〕地域文化

 登録(とうろく)された山・鉾(ほこ)・屋台行事(やたいぎょうじ)は、人形からくりを演(えん)じるところや、山を毎年、解体(かいたい)して保管(ほかん)するところもあり、一様(いちよう)ではありません。

 平安時代(へいあんじだい)の疫病退散(えきびょうたいさん)を祈(いの)る行事が起源(きげん)とされる「京都祇園祭(きょうとぎおんまつり)の山鉾行事」から、犬山祭(いぬやままつり)や大垣祭(おおがきまつり)(岐阜県(ぎふけん)大垣市)のように、江戸(えど)時代に城下町(じょうかまち)の祭(まつ)りとして始(はじ)まり発展(はってん)したものまで、歴史(れきし)もさまざまです。ユネスコは、それが、日本の地域文化(ちいきぶんか)の多様性(たようせい)を表現(ひょうげん)していると評価(ひょうか)しました。

 各地(かくち)で、祭りに関係(かんけい)する人たちは登録を歓迎(かんげい)し、行事を受(う)け継(つ)ぐことへの激励(げきれい)と受け止めています。長浜(ながはま)市の家森裕雄(やもりひろお)さんは「より一層(いっそう)、『絶(た)やすわけにはいかない』と感(かん)じた」と話します。

 ユネスコの無形(むけい)文化遺産(いさん)登録を祝(いわ)うため、来年、普段(ふだん)と違(ちが)った趣向(しゅこう)を凝(こ)らすところもあります。岐阜県高山(たかやま)市では、春の山王祭(さんのうまつり)と秋の八幡祭(はちまんまつり)の屋台23台を来年4月29、30日に勢(せい)ぞろいさせる予定(よてい)です。長浜市でも、来年4月の曳山祭(ひきやままつり)では、普段は5基(き)だけ登場(とうじょう)する曳山が13基すべてそろいます。

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