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長寿しなの 彩食記

<第8部 これも食べるよ> (4)飯田の食肉文化

飯田独特という黒モツ(ハチノス、手前)をはじめバラエティーに富んだ肉が並ぶ焼き肉=飯田市のホルモン甲子園で

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 カルビ、ロース、タン、ミノ、センマイ…。このあたりは、焼き肉でよく知られた食材。では、マトン、ガツ、おたぐりは?

 答えは羊肉、豚の胃袋、馬のモツ(内臓)。人口一万人あたりの焼き肉店舗数が五・二と、全国の市でトップを誇ることから「日本一の焼き肉の街」をうたう飯田市では、多様な食肉文化が育っている。

 「飯田では、他の地域では食べない部位も好む。その代表格が黒モツ(ハチノス)」。そう話すのは、南信州畜産物ブランド推進協議会事務局の林亮介さん(24)。「ハチノスそのものは焼き肉店では珍しくないが、積極的に好んで食べるのは飯田の人くらいでは」と笑う。

黒モツ(ハチノス、手前左)とミノ(同右)、マトン(奥左)、カルビ(同右)=飯田市のホルモン甲子園で

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 ハチノスといっても「蜂の巣」ではない。牛にはミノやセンマイなど胃が四つあり、ハチノスは二番目の胃にあたる部位。独特の風味と歯応えがあり、切り開くと内壁が蜂の巣のようにひだ状になっているため、こう呼ばれている。

 モツは飯田の食肉の原点ともいわれ、ハチノス以外にもチクワ(血管)、小袋(子宮)、テッポウ(直腸)などの部位も口にされている。なぜ、こんなにも多彩なのか。その理由は、畜産業が盛んなことにあるという。

景色を味わいながら食べる焼き肉は最高においしい=飯田市で

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 林さんによると、飯田下伊那地域の畜産農家は約八十戸で、県全体の約四分の一。最近までは市内に食肉処理施設があり、新鮮さが命のモツが豊富に出回った。面積の多くが山間部で、畜産業に適した環境に恵まれていたことに加え、勤勉でおっとりした人々の気質に合っていたとの見方もある。

 戦時中の軍服需要から羊が飼われ、高級な牛や豚より先に羊肉が普及したのも特徴。その後、南信州牛や千代幻豚といった上質のブランド肉も生まれ、目利きぞろいの京都をはじめ、全国の品評会でも高い評価を獲得、一級品として扱われている。

 特に焼き肉は、飯田のソウルフードといわれるほど深く浸透している。かつては各家庭にジンギス鍋や自家製のたれがあり、特注のマイ鉄板も珍しくない。

鉄板やガスボンベを貸し出す出前焼き肉のセット=飯田市の丸三精肉店で

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 こうした焼き肉文化を語る上で欠かせないのが「出前焼き肉」。飯伊食肉組合が担い、肉の購入に併せて鉄板やガスボンベを貸し出し、セッティングや片付けを請け負うサービス。林さんは「電話一本で手軽に焼き肉が楽しめる」とPRする。

 約四十年前、市内の丸三精肉店が肉の購入客に頼まれ、鉄板とガスを貸し出したのが始まり。評判が良く、組合の前身団体が「食肉の販売促進につなげよう」と加盟店舗で鉄板を作って推進。需要に応じて野菜や皿、箸も加えていった。

 地域の集まりや少年野球の慰労会など、出前焼き肉の出番は多く、先駆けでもある同店では夏場、鉄板百枚がほぼ出払う日も。薄利で手間もかかるが、三代目原大介さん(45)は手応えを感じている。「創業者が見越した肉の時代が今、やって来た」

 (石川才子)

 

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