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長寿しなの 彩食記

<第8部 これも食べるよ> (3)ゴトウムシ

カミキリムシの幼虫をあぶる内山さん(左)と横山さん=安曇野市で

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 倒木を鍬(くわ)で割って探すこと十分ほど。ニセアカシアの木の中から三センチくらいのカミキリムシの幼虫が出てきた。手に取ると、うねうねと伸び縮みした。

 ヤナギの倒木を根本付近から割ると、幼虫が次々と見つかった。三十分ほどで約二十匹採取できた。

 カミキリムシの幼虫は、南信地域などで「ゴトウムシ」と呼ばれ、まき割りの副産物として子どものおやつなどとして親しまれてきた。昆虫記で知られるフランスの学者ファーブルも、著作でカミキリムシの幼虫を串焼きにして食べた体験を披露し「嫌なものではなくおいしいものだ」と感想を記した。

倒木を割ってカミキリムシの幼虫を探す田下さん=安曇野市で

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 「昆虫食入門」などの著書のある昆虫料理研究家内山昭一さん(67)=東京都日野市、長野市出身=もカミキリムシの幼虫を「一番おいしい」と絶賛する。

 記者も信州に赴任したからには一度は食べてみたいと、内山さんに声を掛け、昆虫採集が得意な日本鱗翅(りんし)学会評議員で県職員の田下昌志(56)さん、会社員横山裕之さん(43)の協力も得て、安曇野市の河川敷で採取した。

 内山さんによると、生きたまま火にくべて焼くのが伝統的な食べ方だ。木くずや汚れを水で洗い流した後、二分ほどゆでてから焼くと、身が裂けて中身が出てくることもなく、お勧めという。

 内山さんが見守る中、ゆでた幼虫を串に刺してバーベキューこんろで焼いた。肉などタンパク質を焼いた時のように香ばしく、食欲を刺激する匂いが漂ってきた。塩味と照り焼きのたれを付けた二種類を味わった。あぶられてサクサクした食感。大豆のように淡泊で、クセもなく食べやすいと感じた。

 採取できたのは、いずれも長さ三センチほどのウスバカミキリの幼虫。内山さんは、カミキリの中でも美味というシロスジカミキリの幼虫を持ってきてくれた。長さ五センチ超で、栃木県で捕ってきたもの。同じようにゆでて焼いて食べると、表面のパリッとした食感の後、トロッとした甘みが広がった。内山さんは「おいしいでしょ」と満面の笑みを見せた。

 旧長谷村(現伊那市)出身で、実家が林業を営む県職員の保科千丈さん(54)は「子どもだった一九六〇年代後半〜七〇年代前半、まきで飯炊きや風呂だきをした時に焼いて食べていた。虫の中では一番おいしく、周りでも食べている人はたくさんいた」と振り返る。県内には約三百六十種類のカミキリムシが生息し、種類の別なく食べていたという。

 田下さんも「海無し県で食べる物がなかったから虫を食べると言われるけど、単純においしいから食べてたんだろうな」と頬張った。

 (高橋信)

ヤナギの倒木から見つかったカミキリムシの幼虫

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