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長寿しなの 彩食記

<第7部 癒やす自然の恵み> (16)花 

瓶詰めしたローズウオーターを持つ浅岡さん。施設では体験会用の蒸留器も備える=富士見町で

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 グラスを傾けた瞬間、優雅な甘い香りが広がった。八ケ岳山麓で育ったバラの風味を閉じ込めたローズウオーター。「古代ペルシャが起源。五千年以上前から美容と健康に使われてきた」。生産する富士見町のアサオカローズ取締役の浅岡正玄さん(60)が説明した。

 自社農園で無農薬栽培したバラの花弁を朝摘みし、水と蒸留器に入れて加熱する。香りと成分が溶け込んだ水蒸気を冷やす。ろ過、瓶詰め、煮沸を経て完成。香り高くまろやかな口当たりにするため三カ月ほど寝かせる。

 「香りは人をリラックスさせる大きな効果がある」と浅岡さん。ローズウオーターは化粧水など肌の手入れや飲料に世界各地で愛用されているという。

 愛知県西尾市でバラ園を営んでいたが、より自然に近い環境で良質のバラを栽培するため、二〇〇四年に富士見町へ。ローズウオーターを商品化した。五月中旬〜十一月上旬はバラ摘みとローズウオーターづくり体験もできる。「バラが持つ魅力と文化を知ってもらいたい。ここでしかできないローズウオーターを作りたい」と意気込む。

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 「花本来の美しさを保ったまま食べてもらいたい」。佐久市などで花を栽培する鈴木義啓さん(46)がエディブルフラワー(食用花)の魅力を熱く語った。生花店で扱える贈答品を作ろうと、キク科カレンジュラの花びら入りドレッシングを一四年にコンサルタントの友人と開発した。

 東京で生まれ育った鈴木さんは元デザイナー。三十歳ごろに東京でデザイン事務所を開き、国内各地を写真を撮って回った。〇二年夏に信州を訪れて気に入り、翌〇三年、東部町(現在の東御市)に移住した。

 花栽培を志し、小諸市の県農業大学校や農家で研修。土壌消毒をしていた際、防護マスクが外れ、農薬を吸って入院した。「呼吸がうまくできなくなって死ぬかと思った」。〇四年に佐久市で園芸施設を借り、無農薬でカーネーションの栽培を始めた。

エディブルフラワードレッシングの売り場で商品を確認する鈴木さん=軽井沢町で

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 当初は出荷の99%が切り花だったが、農薬を使っていないのでホテルやレストランにも食用で卸した。連作障害を避けるため品種を増やし、食べ物にあまりない青色系のセントーレアやビオラを栽培。コスモスは「ショウガのような辛みがある」といい、鈴木さんは「サラダや薬味のように味わえる花を選んで作っている」と話す。

 二年ほど前から注文が急増し、今では出荷の六割が食用だ。

 鈴木さんは「インスタ映えなど、見た目の良さが注目を集めている」と分析する。「花の市場は縮小しても、花自体の可能性は眠っている。ビタミンが豊富な花もあり、まだまだ開拓の余地がある」と力を込める。昨年三月に友人二人を仲間に加え、花の入った塩やスイーツなど新たな加工品づくりに取り組んでいる。

 (中沢稔之、高橋信)=第7部終わり

 

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