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長寿しなの 彩食記

<第7部 癒やす自然の恵み> (15)蜂蜜

巣箱のミツバチを見せる荻原さん=軽井沢町で

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 瓶を傾けてもなかなか出てこない。しばらく待つと、どろっとした黄金色の蜂蜜がスプーンにこぼれ落ちた。一口食べると、自然な甘さが口いっぱいに広がった。

 「ここの蜂蜜は濃いのが特徴。混じりけのない純粋な国産蜂蜜は、食べてもらえば違いが分かる」。浅間山の麓、軽井沢町で養蜂園を営む荻原義三さん(77)が胸を張る。

 アカシア、栗、リンゴ、そば…。蜂蜜といっても、さまざまな種類があり、色や風味が異なる。荻原さんは「花の咲く季節によってミツバチが集める蜜が違う」と説明する。

 荻原さんは「はちひげおじさん」としても知られる。ミツバチが活発に動く四〜十一月、あごの辺りから胸辺りまでを数万匹のミツバチが覆うパフォーマンスを披露する。きっかけは、三十年ほど前のテレビ取材。「何か変わったことをやってほしい」と頼まれ、思い付いたのが「はちひげ」だった。

さまざまな種類の蜂蜜

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 「ミツバチは友達。習性を熟知していないとできない」と荻原さん。女王蜂が分泌するフェロモンに集まる習性を利用し、フェロモンを体に塗って集める。刺激して一匹のハチが刺すと、他のハチも一斉に刺し始めるといい「一度に大量に刺されると危険。やり方を教えても普通は怖くてできない」と話す。

 長年、養蜂に取り組む荻原さんは「ハチの毒に対する免疫ができて、私は腫れない。膝とか腰とか痛いところに刺してもらうと、痛みが和らぐ」と笑う。最近は輸入蜂蜜が増えているが「本当においしい蜂蜜を届けたい」と力を込める。

 豊かな自然が残り、アカシアやトチノキなど蜜源が豊富にあることなどから、古くから養蜂が盛んな信州。農林水産省によると、県内のミツバチ飼育戸数と群数は全国トップ。二〇一四、一五年は生産量もトップになり、“三冠”を達成した。

全身をハチに覆われる荻原さん(中)=本人提供

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 県養蜂協会は、生産量一位になったことを記念して、蜂蜜の品質を競う「信州はちみつ共進会」を一六年に開催した。県内の養蜂家五十人が出品し、審査を受けた。依田清二会長(73)は「県内全域で共進会を実施したのは数十年ぶり。五年に一回のペースで開き、日本一の蜂蜜をアピールしたい」と話す。

 一般的に流通しているのは、明治以降に国内に持ち込まれた外来種セイヨウミツバチが集めた蜂蜜。在来種のニホンミツバチは収穫量が少なく、飼育も難しい。その飼育法を「信州日本みつばちの会」(中川村)が広めている。

 同会の富永朝和会長(80)は「ニホンミツバチはセイヨウミツバチと飼育法が違い、飼育環境が悪いと逃げ出してしまう」と指摘する。四十年ほど前から独学で飼育法の研究を続け、豊富な知識を伝授している。「飼育は難しいが、それだけにやりがいがある。技術を伝えて、ニホンミツバチの養蜂を広めたい」と話す。

 (安永陽祐)

 

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