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長寿しなの 彩食記

<第7部 癒やす自然の恵み> (14)樹液

◆白樺のハーブコーディアル 

間もなく樹液採取が始まる白樺=川上村で

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 必要は発明の母というけれど、川上村内に自生する白樺(しらかば)の樹液とハーブを組み合わせた濃縮シロップ「白樺樹液のハーブコーディアル」誕生の経緯にも、シロップを必要とした母の存在があった。彼女を動かしたもの、それは、村に小児科の医院がないことだった。

 先月半ば、濃縮シロップの考案者である同村内のレタス農家の主婦川上知美さん(37)を訪ねた。現在、夫耕志さん(43)とともに、長女萌音(もね)ちゃん(6つ)、次女葉月ちゃん(5つ)、長男隼輝(はやて)ちゃん(3つ)の子育てに奮闘中だ。

 宮崎県出身の川上さんは、東京の大学を卒業後大手外食チェーン店などに勤務。八年前、日本一のレタス産地である同村の農家に嫁いだ。

 人口四千人ほどの農村での生活は戸惑うこともあった。「農家の嫁は労働力としても期待されていて、敷かれたレールの上で生きているようだった」。子育てと農作業で人生が終わるのかと、落ち込んだこともあったという。

川上さんのアイデアが基になり生まれた「白樺樹液のハーブコーディアル」=川上村で

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 転機は、二〇一六年二月。村が「アイデアコンテスト」を開催するとの情報が飛び込んできた。村の女性が生き生きと活躍できる場の創出が目的で、新たな特産品や地域の課題解決の提案を募る内容だった。

 川上さんがすぐ思い浮かんだのが通院の問題。村内に小児科の医院がなく、最も近い病院でも、車で片道一時間はかかる。場合によっては半日がかりにもなる通院は、村内の母親たちの大きな負担になっていた。「普段から子どもが風邪をひかないよう、ハーブの力を活用してはどうかと考えました」

 コンテストでは通院をめぐる問題を紹介した上で、風邪予防のために各家庭でのハーブ栽培やハーブカフェの開設などを提案。最優秀賞に輝いた。このアイデアを形にしたのが「白樺樹液のハーブコーディアル」だ。ミネラルやアミノ酸などを豊富に含む白樺樹液は、北欧で体調不良に効果がある飲料として利用されている。村の白樺樹液の採取期間は春先の二十日間ほど。雪解け水をたっぷり吸った樹液はほんのりと甘いという。夫と二人、白樺林で幹にドリルで穴を開けて採取した。

川上知美さん(左)と長男隼輝ちゃん=川上村で

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 ハーブは、せき止め効果があるとされるマロウブルーなど三種を利用。樹液でハーブを煮出し、宮崎県産かんきつ「ヘベス」の果汁と、北海道産テンサイ糖を加えて仕上げた。

 昨年八月、自宅内に販売店「森の手当て屋さん」を開き売り出したほか、村内の野菜直売施設やスーパーでも並べた。ハーブの香りとヘベスの清涼感が特徴で、子育て中の母親らに好評だ。炭酸や湯、紅茶に希釈しての利用を薦めている。

 白樺樹液は村内産だが、ハーブは海外産。川上さんは今年から村内の女性たちの協力を得て家庭菜園での栽培をしたい考え。「今後は、村産ハーブを利用したシロップも製品化していきたい」と意気込んでいる。

 百ミリリットル入り千二百円(税込み)。(問)森の手当て屋さん=0267(88)7803

 (福永保典)

◆メープルシロップ 山間地ににぎわいを

シロップの採取に取り組む関係者=小谷村中土の中谷地域で

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 小谷村中土の中谷地域で、カエデ類の樹液からメープルシロップを作り、山間地の活性化につなげようとする動きが活発だ。

 樹液を採るのは、カエデ類が芽吹く前の一〜三月ごろ。木に穴を開けてホースを取り付けると、透明な樹液がしたたり落ちてくる。糖度2〜3%のショ糖を含み、なめるとほんのりした甘みがある。

 採取した樹液をポリタンクにためて持ち帰り、鍋で煮詰める。糖度66%以上になれば、メープルシロップの出来上がりだ。

 取り組んでいるのは、中谷地域の住民らでつくる協議会。関係者が二年ほど前に埼玉県秩父市でシロップ作りを見学。「面白そう。自分たちもやってみよう」とホースやタンクをすぐ購入し、試験的に始めた。

 今年はイタヤカエデ二十数本から計一トンほどの樹液を採取する見込み。樹液そのものや煮詰めたシロップを小谷産の新たな名物として、飲食店などに売ることも検討している。

 協議会の事務局を担う村総務課長の柴田友造さん(59)は「樹液は採取すると、自然の恵みのありがたさを感じる。地域の資源を有効に活用していきたい」と意気込んでいる。

 (林啓太)

 

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