挑む 浮世絵 国芳から芳年へ
2019年2月23日〜4月7日
名古屋市博物館
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長寿しなの 彩食記<第7部 癒やす自然の恵み> (11)信濃くるみ・エゴマ
「クルミは消毒も年二、三回でいいし、土日にたまに草むしりをしたら済む。本当に手がかからない」。クルミで地域活性化を目指す日本くるみ会議(東御市)の会長、花岡澄雄さんが力説した。 高齢で農作業ができなくなった両親のリンゴ畑を引き継ぎ、兼業で農業をできるようクルミに植え替えた。手間の少ないクルミは農業の担い手不足で荒廃した農地対策として注目を集め、国内各地や韓国から視察団が東御市を訪れるという。 二〇一二年の農林水産省の統計によると、県内のクルミ生産量は日本一。全国シェアは約七割を誇る。東御市を中心に東信地方では明治時代半ばごろに栽培が盛んになり、軽井沢に滞在する欧米人らに人気だったという。 クルミが専門の元信州大教授で日本くるみ会議初代会長の矢嶋征雄さん(72)と花岡さんによると、東信地方で栽培される「信濃くるみ」はテウチグルミとペルシャグルミが交配してでき、実が大きく殻が薄いのが特徴。 最盛期の一九七〇年代後半には東御市に四万本のクルミの木があったが、中国や北米の輸入品に押されて生産量が落ち込んだ。収益性の高いリンゴやブドウに取って代わられ、九七年には三千本以下に減った。 危機感を抱いた矢嶋さんが呼び掛け人となって、生産者や行政などと九八年に日本くるみ会議を発足させた。会議では、世界的産地の米カリフォルニア州を視察して栽培環境を調査。特に実が大きく味が良い六品種を優良品種として栽培を推奨し、品質を向上させてブランド化を進めた。 飲食店や洋菓子店などから国産が見直され、全国から注文が舞い込むようになった。花岡さんは「今は東御市に七千八百本くらいまで戻った。一万本以上まで増やしたい」と再興に意欲を燃やす。 ◇ ◇ クルミとともに栄養面で注目されるのがエゴマだ。長野短期大学の中沢弥子教授(53)によると、クルミやエゴマに含まれる必須脂肪酸のα−リノレン酸は、心臓血管系疾患の予防に有効。体内で合成されないため食物から摂取しなければならず、中沢教授は「肉や魚を多く食べられなかった長野では、エゴマやクルミから摂取できたのでは」と推測する。 県内のエゴマ生産量は二〇〇七年の統計で全国八位。上松町や長野市鬼無里地区で特産化の動きがある。 北信地域では、エゴマは「いくさ」「えくさ」の名でも親しまれ、おはぎやあえ物に使われる。「プチプチして食感が良く、癖がないのでいろんな料理に加えられる。健康にもいいので、若い世代にも親しんでもらいたい」と語る。 (高橋信)
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