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長寿しなの 彩食記

<第7部 癒やす自然の恵み> (10)イタドリ・朴葉 

萬屋で提供されるイタドリなどのピクルス=南木曽町で

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 ラーメンの具のメンマのようにシャキシャキとした食感。南木曽町吾妻地区の女性らでつくる「広瀬いたんどり会」会長の志水みち代さん(59)が、イタドリのピクルスを前に「元は酸味が強いが、処理をすればくせがなく、調理や味付けで味が変わる。おいしいですよ」と笑顔を見せた。

 吾妻地区にはろくろを回して木の器などを作る職人「木地師」の集落がある。木地師が木材を探しに山に入って山菜をよく食べることから、イタドリが伝統的に食べられてきたという。

 イタドリはタデ科の多年草で、繁殖力が強く英国などでは駆除に困っている。五月下旬〜六月上旬に採取して湯がき、水に一晩漬けて酸味を取り除く。しょうゆとかつお節で食べるのが定番という。

 そんなイタドリ料理を広めようと、広瀬いたんどり会が二〇一二年にできた。イタドリに生ハムやチーズを巻いたり、砂糖としょうゆで甘辛く味付けして酢飯に載せて寿司(すし)のようにしたり、多彩な食べ方を考案した。

採ってきたイタドリを処理する女性ら(広瀬いたんどり会提供)=南木曽町で

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 一五年に地区の古民家を改修し、地元食材などの料理でもてなす「キッチン&カフェ萬屋(まんや)」をオープンした。食事は予約制のコース料理で、旬の時期は豊富なイタドリ料理を提供。シーズン以外は麺類の具にしたり、ピクルスで出したりする。

 県外からの飲食客も多く、月一回は来店する岐阜県多治見市の与田和江さん(70)は「イタドリは珍しい。くせがなく、食感がいい」と頬を緩ませた。

 木曽地域の初夏に採れる山の恵みはイタドリだけではない。ホオノキの葉を使った朴葉(ほおば)巻きは、初夏の風物詩となっている。

 朴葉には殺菌作用があり、木曽地域では郷土食の朴葉ずしを作ったり、焼いた魚を載せる皿に使ったりしてきた。庭先でホオノキを育てる人もいる。

木曽地域で初夏の風物詩になっている朴葉巻き=木曽町で

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 朴葉巻きは、米粉や小麦粉の生地にあんを入れて丸め、朴葉で包み蒸し上げる。各家庭で親しまれてきたが、木曽町で創業三百三十年の老舗「宝来屋」十二代目店主の櫻井六左衛門さん(68)は「菓子屋で作るようになったのは四十年くらい前だろうか」と振り返る。

 初夏になると、宝来屋の作業場は、緑の香りが漂う。地域外からの注文も舞い込み、五月中旬〜七月ごろは、九十歳近いおばあちゃんらパート十六人を雇って休日返上で生産。多い日で一日五千個作る。朴葉の確保も一苦労で、シーズン中は男性店員四人が二日おきに一日中、朴葉採りに追われる。

 櫻井さんは「贈る人は懐かしい思い出を届ける気持ちもある。素朴な味を守っていきたい」と手作りにこだわり続けるつもりだ。

 (桜井祐二)

 

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