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長寿しなの 彩食記

<第7部 癒やす自然の恵み> (1)薬草の宝庫

県内で採取できる薬草から作られた生薬を手にする牧さん=上田市で

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 メグスリノキ、ダイオウ、ゲンノショウコ、ハンゲ…。さまざまな薬草があちこちに生えていた。上田市の菅平薬草栽培試験地。管理する県薬草生産振興組合の組合長、牧幸男さん(81)は「いろいろあって面白いでしょ」と誇らしげに語った。

 この試験地は標高千四百メートルにあり、総面積九・九二ヘクタール。約百種類の薬草と約四十種類のハーブを栽培し、県内で流通する生薬約二百五十種類のうち約百種類を研修棟で展示する。この辺りで江戸時代に上田藩が薬草を栽培した歴史から、県が土地の寄贈を受け、薬草の普及や研究につなげる目的で組合に運営を委託している。

 牧さんは「県内は南北に長く標高差が大きいため多様な自然環境があり、さまざまな薬草が育った」と語り、「薬草の宝庫」と呼ばれる理由を説明する。

 こうした薬草やハーブが豊かな環境に魅了された移住者がいる。

クロモジの葉や枝を見つめる府川さん=小谷村で

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 小谷村の山道で、薬剤師府川公広さん(59)が「あれだよ」と道沿いの木に歩み寄り、枝を切って差し出した。「いい香りでしょ」。葉っぱを取って煎じたお茶からは、フルーティーな香りがふわっと広がった。

 神奈川県でドラッグストアに務めていた府川さんは十五年前、「山があるところに住みたい」と学生時代にスキーでよく訪れた白馬村近くの小谷村に移り住んだ。村にはクロモジをお茶にして飲む習慣が今も残り、クロモジの枝を切って乾燥させたのが養命酒の主成分の一つ、ウショウだと知った。

 「これだけ香りがするのはすごい。県外の人にも知ってほしい」と昨年からクロモジ茶のインターネット販売を個人的に始めた。山に出掛けてクロモジの葉を採って水洗いし、製茶業者に製品化してもらっている。昨年は三十グラム入りを三百袋作って完売した。今年は八百袋ほど作っている。「雪が積もる小谷村でも育つクロモジをより多くの村民に栽培してほしい」と語る。

森の中に薬店を開いた小川さん=上田市で

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 日本人初というチベット医の小川康さん(47)も自然豊かな県内に移住した。薬売りの伝統が根付く富山県出身だが、チベット亡命政府のあるインド北部ダラムサラでチベット医の資格を取得し、帰国後の住まいに小諸市を選んだ。現在は上田市野倉に移り、運営する薬店「薬房 森のくすり塾」では、全国各地から集めた二十種ほどの伝統的和漢薬や入浴剤をそろえる。

 ヒマラヤの山間部に一カ月間こもり、薬草を摘んで学んだ経験を持つ小川さんは「長野には身近にさまざまな薬草がある。木曽地方の百草丸だけでなく、伝承薬が県内各地にあった」と指摘する。

 不定期で開くワークショップでは、山を歩いて薬草を採ったり、キハダを使って軟こうを作ったりする。「何でもある現代の世の中で、元々ある自然を生かして手作りする良さや知恵を伝えていきたい。それってかっこいいでしょ」と目を輝かせて語った。

 (中島咲樹)

    ◇

 県内は南北に二百十二キロあり、標高三千メートル級の山々まで起伏に富む多様な地形や気候に恵まれ、生育する植物もさまざまだ。薬用植物も五百種以上が自生し、古くから活用されてきた。暮らしに身近な薬草やハーブなどを紹介する。

 

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