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長寿しなの 彩食記

<第6部 戦争とのつながり> (2)ローメン

「ローメンはおやじの味」と話す萬里の店主、馬場さん。スープがあるスタイルは開発時と同じ=伊那市で

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 「先代はよく、旧満州(中国東北部)帰りの友人らとローメンを考案した頃の話をしてましたね」。伊那市坂下で飲食店が集積する入舟地区の料理店「萬里(ばんり)」店主の馬場元さん(60)が振り返った。先代とは、妻の父伊藤和弌(わいち)さん(故人)で、店の創業者だ。

 ローメンは羊肉と蒸し麺、キャベツなどを炒めた麺料理。主にスープと焼きそば風の二タイプある。伊那市のご当地グルメ「ローメン」を出す萬里は一九五五年に開業した。

 伊藤さんの文章を集めた冊子「萬里語録」などによると、開業からしばらくして、市内の精肉店から羊肉をもらったのがきっかけだった。

 伊藤さんは、満州で過ごしシベリア抑留を経て故郷に戻った南箕輪村の竹淵三郎さん(故人)ら親しい友人たちと肉の料理を相談。蒸し麺と一緒に調理することにした。旧満州の料理を知る竹淵さんの指導で、独特のスープがある「チャーローメン(炒肉麺、ローメン)」が完成した。竹淵さんは満州での経験を周囲にあまり語らず、開発当時を知る人もほとんど他界したという。

 馬場さんも伊那市出身で「幼い頃、父に連れられて萬里でローメンを食べたのはよく覚えている」と語る。ローメンは義父と実父の思い出が詰まった大切な「おやじの味」。忠実に守り続けるつもりだ。

「うしお」店長の潮田秋博さん(左)と「何度も試作して味を決めた」と振り返る浅子さん=伊那市で

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 萬里オープンの翌五六年に開業した同市通り町の食堂「うしお」でも早くから、肉とキャベツを炒めた料理と、蒸し麺を加えて炒めた焼きそば風のメニューを提供してきた。

 「確かこんな味だったかな」。旧満州牡丹江省(現中国黒竜江省)に出征して復員した唐沢正勝さん(故人)が、大陸での生活を振り返りながら監修した。唐沢さんは、潮田哲人さん(93)とともに店を切り盛りしていた妻浅子さん(95)の兄。浅子さんは「試作と試食を何度も繰り返しましたよ」と、兄妹で味を探求した頃を懐かしむ。

 提供開始当時はメイン商品ではなく、一日一、二食しか出なかったというが、いまは、席につく客の多くがローメンを注文する。

 浅子さんの孫で現店長の秋博さん(45)は「中国や台湾の人も来て食べてくれる」と喜ぶ。「最近、台北市を訪れた際に食べた『羊肉炒麺』という料理が、まさにローメンの味そのもので感激した。いつか大陸でも同様の麺を食べてみたい」とルーツへの関心を高めている。

 (近藤隆尚)

 <ローメンの広がり> 萬里やうしおで生まれた「チャーローメン」は、酒のさかなや食事として他店にも普及。1960年代以降の即席ラーメン人気などを受け、次第に「チャー」を外してラーメンに近い呼称が定着したとされる。97年、伊那市の提供店が伊那ローメンズクラブを設立。蒸し麺にちなんで6月4日を記念日に制定し、関連イベントでPRしている。会員は伊那市を中心に30店。会員外も含め、提供店は上伊那地域で約100に上るという。

 

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