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長寿しなの 彩食記

<第5部 山のおもてなし> (2)ジビエ

ニホンジカの肉を使った特製ジビエシチューを紹介する伊藤敦子さん。口コミで人気が広まった=三俣山荘で

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◆高山植物の食害発信

 「南アルプスの方でニホンジカによる食害を登山客から聞き、本当に人ごとじゃないと感じた」。大町市と富山市、岐阜県高山市の三県の境にある北アルプス・三俣蓮華岳(二、八四一メートル)と鷲羽岳(二、九二四メートル)のあん部にある山小屋「三俣山荘」。経営する伊藤圭さん(40)の妻敦子さん(37)が顔を曇らせた。高山植物を楽しみに訪れる登山客が少なくないからだ。

 伊那市耕地林務課と環境省松本自然環境事務所によると、南アルプスの高山帯では一九九八年ごろからニホンジカが現れ始め、二〇〇五年ごろから食害被害が深刻化。一部の山では高山植物の花畑が食べ尽くされ、はげ山と化した。

 北アルプスの高山帯でも、ニホンジカが侵入しているのが分かっている。食害被害はまだ確認されていないが、松本自然環境事務所の西尾治自然保護官は「雄と雌の両方が侵入している。今後繁殖していく可能性もある」と危惧する。

 北アの山々に忍び寄る高山植物の食害を知ってもらおうと、伊藤さん夫婦は六年前、ニホンジカの肉を使ったメニューの開発に着手した。

 「自然環境に興味のある人が集う山小屋。ここから発信して問題を知ってもらうきっかけになれば」と敦子さん。ステーキなどの案もあったが「できるだけ好き嫌いがなく皆さんに食べてもらえる」と選んだのがジビエシチュー(サラダやデザートなどセットで二千四百円)。調理方法や仕入れルートの試行錯誤を重ね、オリジナルレシピを完成させた。

 南アルプスで捕獲したニホンジカのもも肉を使う。ジビエ特有の硬さや臭みを和らげるため、宮田村の業者に頼んで塩こうじやハーブを調合した液に数日間漬け込んでもらい、冷凍パックで仕入れている。

 デミグラスソースや赤ワインをベースにしたスープに、肉やタマネギ、ニンジン、ズッキーニなどの食材を加えて圧力鍋で煮込む。五年前、夕食で提供を始めた。やや濃いめの味付けでご飯が進み、夏場の多い時は一晩で百五十食ほど出る。年を重ねるごとに口コミで人気が広まり、近くでテントに泊まる登山者も頼む人が増えた。

夕食でジビエシチューを味わう登山者ら=三俣山荘で

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 利用客からの要望を受け、ニホンジカの肉を牛丼のように甘辛く煮た「ジビエもみじ丼」を三年ほど前から昼食メニューに加えた。お土産用にしぐれ煮も用意した。

 ジビエ料理を増やす敦子さんは「ニホンジカを含め、山の自然環境を考えるきっかけになれば」と願う。

 (水田百合子)

 

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