トップ > 特集・連載 > 長寿しなの 彩食記 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

長寿しなの 彩食記

<第4部 豊かさ醸す発酵文化> (8)減塩

ハナマルキが販売している「かるしお」認定のみそ

写真

◆地道な県民運動が結実

 「塩を減らしつつ、おいしさを保つのは相当難しかった」。国立循環器病研究センターの減塩食品認定制度「かるしお」で、みそ業界第一弾として認定を受けたハナマルキ(伊那市)の広報平田伸行さん(49)が振り返った。

 日本食品標準成分表や既存商品より30%以上減塩するのが基本的な認定基準。塩を減らして味が物足りなくなるのを補うため、米こうじを多く使って甘さを強めたり、酵母を増やして香りやうま味を増やしたりと工夫を重ね、開発に五年かかったという。認定品は二〇一五年九月に発売し、現在は七種類そろえる。

 県短期大助教の村沢初子さん(70)によると、県味噌(みそ)工業協同組合連合会が一九八〇年代前半、酵母を増やすことで減塩しても品質や味を保つことができるとの研究成果をまとめた。村沢さんは「脳卒中の死亡率を下げようと、減塩意識が高まりつつあった当時の研究が今に生きているのでは」と語る。

 かつては県民一人当たりの塩分摂取量が多く、脳卒中などの死亡率は全国平均より高かった。長寿県に生まれ変わるのに貢献した一つが、県食生活改善推進協議会を中心とする「減塩運動」だ。

 一九六七年の協議会発足時から活動する南箕輪村の六波羅弘美さんは「各地に出向いて開く料理教室が活動の中心」と説明する。酢を使って漬物の塩を減らし、薄味のみそ汁にするため野菜をたっぷり入れてだしを利かせるなど減塩レシピの普及に努めた。

 八一年から三年間、漬物や汁物の塩分濃度を測ったり、県内七百人を対象に健康チェックをしたりする「県民減塩運動」が繰り広げられた。吉川さなえ県健康増進課長補佐は「県民に『減塩しなきゃ』という意識付けができたのは大きい」と語る。軌を一にして、食品メーカーも減塩に動きだした。

 「家庭で塩分を控える動きが広まるにつれ、漬物も減塩が進んだ」。県漬物協同組合理事長を務める丸井醸造(飯田市)の井村伸郎社長(61)は振り返る。

 井村社長によると、野沢菜の塩分濃度は三十年前、腐敗しやすい夏場で5%あった。流通過程の冷蔵技術が発達し、塩を減らしても品質を保てるようになり、十年前には2・0〜2・4%と半分ほどに減ったという。今では2%強の梅干しも登場し、井村社長は「選択の幅が広がっている」と指摘する。

汁物の塩分チェックを高校生に指導する食生活改善推進員(右)=県内で

写真

 まじめな県民性も手伝って減塩運動は実り、食塩摂取量は八〇年の15・9グラムから二〇一〇年には11・5グラムと三割近く減った。平均寿命も一〇年に男性80・88歳、女性87・18歳と男女そろって全国一位を達成した。

 六波羅さんは「漬物もみそも長野の大事な食文化。減塩したり、量を減らしたりしながら、暮らしの中で大切に長く使ってほしい」と願った。

 (沢田佳孝、斉藤和音、中島咲樹)

 =第4部終わり

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索