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長寿しなの 彩食記

<第4部 豊かさ醸す発酵文化> (6)しょうゆ豆やしょうゆの味

塩抜きした野菜の漬物が入っている本家田中こうじ店の「しょうゆの味」=飯田市で

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◆家庭の味、ご飯のお供

 湯気が立ち込める熱々のご飯と一緒に口に含むと、しょうゆの発酵した風味とご飯の甘みが口の中に広がり、箸がどんどん進む。濃い味付けは、野菜に添えたり酒のつまみにしたりしても相性抜群だ。

 蒸した大豆や黒豆にこうじ菌を付着させ、しょうゆやみりんなどで漬け込み、数日から数カ月熟成発酵させて作る伝統食。県内各地に伝わるが、地域によって呼び名が異なる。原料に麦や米を加えるなど作り方もそれぞれだ。

 信州の郷土食に詳しい県短期大の中沢弥子教授(調理科学)などによると、日持ちのする冬場に保存食として各家庭で仕込まれた。こうじに含まれる酵素の働きで、タンパク源の大豆の栄養が消化されやすくなる。北信は「しょうゆ豆」、中信は「しょうゆの実」、南信では「しょうゆの味(み)」などと知られていることが多いという。

 地域によって違いがあることについて、中沢教授は「店や家庭でおいしく作る工夫をそれぞれ凝らす中で、減塩志向のものや他の材料を加えたものが出てきたのでは」と語る。

 北信地方は大豆と米で作るシンプルなものが多いという。長野市の老舗みそ店「井上醸造」では、常連客に感謝の気持ちを込めて分けるのが古くからの習わしだ。二カ月ほど発酵させても黒豆の形が崩れないよう、表皮に傷がないかなど一粒一粒確認する。

「しょうゆの味」の原料になる蒸し上げた大豆と麦に、こうじ菌を付着させる作業員=同市の本家田中こうじ店で(同店提供)

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 「しょうゆの味」を作る飯田市の「本家田中こうじ店」は、蒸し上げた麦と大豆を混ぜてこうじ菌を付け、しょうゆで漬け込む。ナスやキュウリなどの漬物を塩抜きして最後に加えるのが南信流という。野菜を加えるとおかずの要素が強くなり、大豆に麦を混ぜることで甘みが増すという。

 「しょうゆの味」を子どもの頃から食べている中川村片桐の片桐充昭さん(76)は「戦前や戦後は今より食料が豊富でなかったので、おかずが足りない時のご飯のお供だった。自宅で漬け込み、お湯を注いでお茶漬けなどにして食べた」と懐かしむ。

 最近は自宅で作られることが少なくなった。本家田中こうじ店の四代目店主田中久雄さん(56)は「若者の中には存在を知らない人も多い。突出してブームになるものではないが、途切れることなく、末永く食べてもらえれば」と願っている。

 (牧野良実)

 

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