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長寿しなの 彩食記

<第1部 海なし県の魚たち> (9)塩イカ

◆名脇役 調味料の顔も

北陸で加工され「信州の味」となる塩イカ

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 凍(し)み大根の煮物、海藻のエゴを使った寄せ物−。小ぶりの器に入った料理が、豊かな色で盆を飾る。

 大町市の飲食店二十店が提供に取り組む料理セット「お祭りご膳」で組み入れている、小鉢料理の一部だ。「『お祭りご膳』仕掛け人会」の渡辺充子代表が、自身が市街地で経営する店「わちがい」で一鉢ずつ紹介してくれた。

 中でも、あんかけの「紫米まんじゅう」は、心地良さを感じる印象的な歯応え。皮をむいてゆでたイカを塩漬けにした塩イカ(塩丸イカ)を混ぜている。渡辺さんは「塩丸イカや煮イカを、お膳のいずれかの料理に使ってます。欠かせない」と話す。

 かつて海から塩や海産物が内陸に、山の幸が沿海に運ばれたルートは「塩の道」と呼ばれる。大町市を通る千国街道はその一つ。同市中心部は昔、荷が受け渡しされた地として栄えたという。

 市街地の旧家に、江戸時代の行事などに使われた献立表も残る。それらを参考に料理で地域おこしを図るのが、お祭りご膳の活動。四年目を迎えた。多彩な食材の中で、塩イカも重要な役を担う。

 家庭などでは、暑い時期、キュウリと一緒にもんだり酢の物にしたりして食べるのが定番だが、仕掛け人会が作った冊子には、塩イカの胴に大根とニンジンのなますを入れたり、塩イカをおやきの具に混ぜるといったアイデアレシピも登場する。

 大町市出身で、同会の活動に協力している料理研究家横山タカ子さん=長野市=は塩イカについて「昔は運ぶ間に熟成し風味が出た。貴重な塩分を含み、調理には重宝したはず。適度に塩抜きして調味料的に使えるので、今後も幅広く活用できると思う」と解説する。

 生イカが流通するいまも、塩イカは広く県民に好まれる。他にも食べられる地域があるようだが、県内の小売店では、包装に「信州の味」などと印刷されている商品が並ぶ。

大町市の飲食店20店が提供する「お祭りご膳」の小鉢料理。手前は塩イカを使った紫米まんじゅう=同市で

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 塩イカ生産の山下水産(福井市)では商品の大半が長野県向け、残りが岐阜県向けだ。山下泰彦社長は「食生活の変化からか近年は需要がやや減少気味だが、信州の人が食べ続けてくれるのはありがたい」と言う。

 伊那市観光協会は昨秋、首都圏からマツタケ狩りツアーの団体を受け入れた。山間地の集会施設での昼食で、マツタケを中心に塩イカ料理も添えて提供した。「地元の伝統食」との紹介に、客から静かな感嘆の声。「関心を持ってもらえたと思う」と協会職員の伊藤佐登子さん。好評だった昼食に、自らも満足したように話した。(近藤隆尚)(「長寿しなの 彩食記」は今後、二十三日以降の月曜日を基本に掲載予定です)

 <塩の道> 県内関連の塩の道は、千国街道のほか三州街道、秋葉街道が代表的。塩、魚介類といった物品だけでなく、風土、文化、信仰などを運んだとされる。これらは糸魚川静岡構造線や中央構造線などの断層に沿った道で、つなぐと本州中央を横断する線になる。

 

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