トップ > 特集・連載 > 長寿しなの 彩食記 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

長寿しなの 彩食記

<第1部 海なし県の魚たち> (5)つけばのウグイ

◆産卵期“誘う”伝統漁

ウグイを焼く西沢さん。「赤くなってつけばに集まる様子は神秘的」と語る=上田市で

写真

 串に刺したウグイが、ジワッと焼き色を増す。「香りが良い。懐かしさが漂う感じ」。上田市天神の川魚料理の「鯉西」本店。社長の西沢徳雄さん(51)が目を細めた。

 鯉西は、本店のほかに、毎年春から秋に、市内の千曲川河川敷で「つけば小屋」を設けウグイ、アユなどの料理を出す。来店者は日本海に向かう流れを目に塩焼き、唐揚げなどを堪能できる。

 小屋の近くに設けるつけばは、ウグイを人工産卵床に誘って捕る仕掛け。漁期は四〜六月。県内は東北中信の千曲川水系で盛んだ。

 上田小県地域の千曲川本流で主に設けられてきたつけばは、揚げ川式と呼ばれる。

 川の中に石や板で二本の仕切りを設け、水の通り道を作る。鯉西では、幅二メートル余り、長さ十メートルほどの規模。通り道の上流部に置いたおとり箱に生きたウグイを入れ、川を上るウグイをにおいで誘う。下流側に玉砂利を敷き産卵のため一部をくぼませる。集まったウグイは網などで捕る。

 「体を赤く染め、懸命に集まるウグイは神秘的。『赤備え』です」と西沢さん。朱色がかった独特の婚姻色を、昨年テレビドラマで話題だった真田家の武具に例え、熱く語る。

 高校卒業後しばらくして漁の世界に入った。結婚後に義父となる店の先代宇吉さん=二〇〇四年に七十二歳で他界=が師匠だ。

 高身長で太い声。「デカ西」の異名もあった宇吉さんは厳しかった。網は干したか。砂利はよく洗え−。連日怒鳴られた。二十代前半、つらくて一年逃げ出した。反省し店に戻っても指導の厳しさは続いたが、西沢さんは仕事に正面から向き合うように。いま、仕事をしながら思い出す宇吉さんの言葉は、温かく感じる。

 半生をかけてきたつけばや、つけば小屋だけに、設置数が減っているのは残念に思う。

 上田小県地域などを範囲とする上小(じょうしょう)漁協によると、管内のつけばは昭和五十年代に六十カ所ほどだったが、昨年は十三カ所。料理提供の小屋も十五年前の十カ所から昨年二カ所に。カワウやブラックバスの捕食によるウグイ減少▽漁や小屋関係者の高齢化▽食生活の変化−が要因らしい。

上小漁協資料室にある、つけば模型。中央の砂利のくぼみあたりにウグイが産卵する=上田市で

写真

 そんな中でも、西沢さんは「漁を生業にするのは簡単じゃないが、関心は高い」と明るく話す。本業を持ちながら伝統漁法を学ぶ“弟子”は七人いる。「今後、ブラックバス料理を開発すればウグイも増える。一挙両得」。少ししゃがれた力強い声は、師匠に似てきた。(近藤隆尚)

 <千曲川の川魚漁> つけばとは「種付け場」の意味。漁法は瀬付け漁とも呼ぶ。上小漁協や国交省の資料では、江戸時代に始まったとされる。揚げ川式のほか、川に堰(せき)を作って産卵に来たウグイを投網で捕る方法などがある。千曲川では、竹や木を組んで作るやなでアユを捕る「やな漁」も見られる。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索