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長寿しなの 彩食記

<第4部 豊かさ醸す発酵文化> (4)信州みそ

◆シェア5割 技術“熟成”

蒸し上げた米でこうじを作る室内=長野市のマルコメで

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 見た目は、薄茶色のみそ。一部を指ですくってなめると、塩辛いだけだった。水に漬けて蒸した大豆に米こうじや食塩を加えてミンチ状に砕いたもの。長野市安茂里にあるみそ製造最大手マルコメの本社工場で、広報担当の須田信広さん(46)は「熟成させることで、みそ特有のうま味と甘み、香りが出る」と語った。

 この工場には、八十五〜百四十五トンの大型タンクが百五十五本ある。「ここまで大きなタンクは他社にないのでは」と須田さん。一度にむらなく発酵させるため、酵母は自社開発した。出荷までの熟成期間は最短で二カ月。別の蔵では職人が五年間熟成させるみそも造る。

大豆や米こうじ、塩を混ぜたものをミンチ状にする工程=長野市のマルコメで

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 マルコメは一九七八年以降、販売量で業界トップを維持する。昨年の出荷量は十万七千七百トン。国内シェアの25%を占め、須田さんは「だし入りみそをいち早く発売するなど、さまざまな試みを先駆けてきた結果」と説明する。

 県味噌(みそ)工業協同組合連合会などによると、信州みそが全国的な知名度を高めた最初のきっかけは、一九二三年の関東大震災。大打撃を受けた東京に県内からみそが救援物資として送られた。当時、製糸業が集積した諏訪地方で女性工員の食事向けにみそ造りが盛んになっていた。

 製糸業が落ち込んだ戦後は、工場跡地をみそ生産に転用する動きが相次ぎ、空襲で荒野となった東京に供給。戦後は食糧難に見舞われ、全国で「信州みそ」をうたう粗悪品が出回った。県は、検査を経ないと「信州みそ」として売れないよう県味噌検査条例を制定。品質管理を徹底し、信頼を高めた。

 県内のみそ出荷量は国内シェアを年々高め、昨年はほぼ五割に達した。業界に君臨する信州勢だが国内市場は長年右肩下がりだ。

 このため、マルコメは一二年ごろから、液みそや塩こうじなど商品の幅を広げ始めた。上田市の老舗「信州イゲタ味噌醸造蔵元 酒の原商店」は〇六年からみそを使った菓子や甘酒に力を入れ、甘酒ヨーグルトが人気商品になった。

 県味噌工業協同組合連合会の上畑裕常務理事(66)は「各社の新たな商品開発は、みそ造りで培った発酵技術がないとできない」と指摘。「この発酵技術や和食の文化を伝えるためにも、今の子どもたちが大きくなった時にみそ汁を飲む習慣があってほしい。この気持ちは、どのメーカーも同じはず」と話す。(中島咲樹)

◆販売上位3社 長野勢が独占

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 県味噌工業協同組合連合会などによると、県内のみそ出荷量は昨年、二十万一千五百二十六トンで、国内シェアは過去最高の49・19%に達した。

 国内のみそ出荷量は右肩下がりで、ピークを迎えた一九七三年と比べ、昨年は30%減だ。県内は徐々にシェアを高め、東京五輪のあった六四年に30%を超えた。国内全体が縮小する中、県内企業は出荷量を維持し、シェアは三十五年連続で高まっている。

 昨年はマルコメを筆頭に、伊那市のハナマルキ、下諏訪町のひかり味噌と全国上位三社を長野が独占。五位の宮坂醸造(東京。七月一日から「神州一味噌」に社名変更)も諏訪市が発祥で、同じ宮坂ホールディングス(東京)傘下の別会社が日本酒「真澄」を手掛ける。

 同年の国内出荷量は前年比0・2%増で、九年ぶりの増加となった。和食の国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産登録や発酵食品ブームが追い風になっているとみられ、全国味噌工業協同組合連合会の広報担当鈴木亮輔さん(60)は「出荷量減少の底を打った」とみている。

 国内のみそは、大豆を発酵させるこうじの種類によって三分類され、米みそ、東海地方中心の豆みそ、九州地方などの麦みそがある。生産の八割を米みそが占め、代表的な信州みそは辛口の米みそ。

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