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長寿しなの 彩食記

<第4部 豊かさ醸す発酵文化> (1)漬物王国復権へ

◆減塩や無添加売りに

わさび漬けを仕込む花村さん=安曇野市穗高で

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 直径五十センチほどの木おけに、酒かすとワサビの千切り、三ミリの長さに切ったワサビの茎が順に手際よく入れられていった。十五分ほどかけて丁寧に混ぜ合わせた職人花村耕さん(45)は「もみ込んでいくほどワサビの味が染み込み、おいしくなる」と笑顔を見せた。

 安曇野市穂高の大王わさび農場にある工房。出来上がったばかりのわさび漬けはほんのりした酒かすの甘さが強いが、数日たつとワサビのツーンとした辛さが酒かすに浸透していき、ピリッとした辛みとうま味のあるわさび漬けになるという。

 年間百二十万人の観光客が訪れる農場の看板商品となっているわさび漬け。広報室長の浜重俊さん(72)は「昔は県内のどこの家に行ってもあった食卓に欠かせないもの」と語る。古くなって酸味を伴うようになった漬物も「わさび漬けをちょっと付けると生き返るんだよ」と幅広い食べ方を紹介した。

 中信地域を中心とするわさび漬け以外にも、全国的に知られる野沢菜や南信地域などで作られる小梅漬け、木曽地域のすんき、木曽起菜など、県内は多様な漬物文化が根付く。

 経済産業省の工業統計調査などによると、長野県の野菜の漬物出荷額は一九九三年まで七年連続で全国首位を誇った。県漬物協同組合の久保広登理事長(69)は「野沢菜やわさび漬けなど県内各地の特産的な漬物のおいしさが、県内を訪れたスキー客らを通じて全国に広がった」と全国的な漬物産地になった理由を説明する。

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 梅干し人気の高まりなどで九三年には南高梅で有名な和歌山県にトップを奪われ、二〇一四年は栃木、群馬県に次ぐ全国四位。県の組合に加盟する企業も二十年ほど前から半減し、現在は約八十社となった。

 塩分を敬遠する風潮の高まりや食の洋食化が進んだ影響で漬物の生産額も伸び悩んでいるが、県内の業者も手をこまねいているわけでない。久保理事長は「浅漬けを増やすなど、塩分を画期的に減らす努力をしている企業も多い」と強調する。

大王わさび農場で販売される、ワサビなどを使った多彩な漬物=いずれも安曇野市穗高で

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 南信などで生産される「竜狭小梅」を使用した小梅漬けが人気商品の一つとなっている茅野市の松尾商店は、小梅を漬ける際にうま味調味料を使わない。四代目店主の柳沢広明さん(43)は「健康志向や無添加食品を好む消費者から好まれ、東京などからの注文も少なくない」と語る。

 漬物王国復権へ挽回を目指す久保理事長は「漬物は発酵食品でもあり、健康に貢献できる部分もある。信州の食文化として、積極的にPRしていきたい」と言葉に力を込める。(佐藤裕介)

 

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