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長寿しなの 彩食記

<第3部 そばの源流> (6)乾麺

◆地道に改良 日々進化

機械につるされたそばの束。時間をかけて乾燥させる=長野市風間のしなの麺工房で

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 一本二・五メートルほどの細長いそばの束が、すだれのようにつるされてゆっくり動いていた。湿度の異なる四部屋の乾燥室を巡り、約六百メートルを十一時間前後で移動する。時間をかけて乾かすのは、風味を損なわないためだ。

 日本三大そばに数えられる「戸隠そば」の地元、長野市戸隠にあるそば製造会社「おびなた」。標高一、〇〇〇メートルにあるそばの乾麺工場は、山でろ過された地下水が豊かで、夏の湿気の少ない空気は乾燥に適している。社長の大日方大治さん(69)は「(自然を生かせる)戸隠に工場があるのは自慢」と胸を張る。

  ◇  ◇

 農林水産省の統計では、乾麺のそばの県内生産量は二〇〇九年、一万九千八百七十五トンで全国一位。全体の39・8%を占め、二位の山形県(9・4%)を大きく引き離した。その後の統計はないが、全国乾麺協同組合連合会の安藤剛久専務理事は「現在も長野県が一位で間違いない」と断言する。

 関係者が誇る信州の乾麺のそばは、明治時代に長野市で誕生したとされる。

石臼でそば粉をひく工程

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 県信州そば協同組合によると、長野市のそば屋「大和屋本店」の塩入三代吉が生そばから乾麺を作ったのが始まり。当時九州で使われていたそうめん向け製麺機を利用するなど、アイデアを駆使したという。同店はいまはなく導入の動機を記した記録もないが、副理事長の金沢勝さん(66)は「都会などに出荷するため、日持ちのするものを作りたかったのだろう」と推測する。

 農水省によると、県内で生産される乾麺のそば粉の配合割合は、統計のある〇九年時点で平均34・5%。数値を公開している道府県全体の平均20・3%を大きく上回っている。「(県内事業所が)そば粉を多く使って差別化を図ってきた」(安藤専務理事)結果だ。

 乾麺はつるして乾燥させるため、そば粉の割合が高いと切れやすくなる。安藤専務理事は「そば粉の割合を落とさずに乾燥させる技は企業秘密。県内にはそば打ち職人が多いで、それぞれノウハウを蓄積できたのだと思う」と話す。

 金沢さんが社長を務めるそば製造の「しなの麺工房」(長野市風間)は一九六〇年ごろ、全国に先駆け、ソバの実と殻を分けて粉をひく欧州の手法を導入した。金沢さんは「麺の色や食感が調整しやすくなった」という。

  ◇  ◇

自社製の乾燥そばについて話す大日方さん=同市戸隠のおびなたで

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 大日方さんは、出勤日はいつも、昼食にそばを食べる。自社製の味を確認するほか、おいしいと評判の他社製も試す。試食を参考に、のどごしを良くするため、そば粉をより細かくひいたり、そば粉と小麦粉の配合割合を変えたりと改良を重ねている。

 乾麺のそば日本一が維持される背景には、地道な工夫の積み重ねがある。大日方さんは「日々進化していて、おいしいんですよ」と誇らしげに語った。(中島咲樹)=第3部終わり

 

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