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長寿しなの 彩食記

<第2部 寒さ生かす知恵> (5)角寒天

◆体にいい料理を発信

寒天博覧会で審査員の皿に盛られた天寄せ=茅野市で

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 リンゴやナガイモ、干し柿にクリームチーズ−。さまざまな食材を寒天で固めた「天寄せ」が登場するたびに、会場から感心する声が漏れた。今月四日に茅野市で開かれた寒天博覧会。地元の主婦ら十六人が諏訪地域特産の角寒天を使い、彩り豊かな料理を披露した。

 エゴマの天寄せを出品した富士見町の女性(69)は「地域の集まりで、お茶請けに欠かせないのは漬物と天寄せ。天寄せは手軽で、おやつにも、お客さんに出すごちそうにもなる」と語る。家庭では角寒天をサラダに載せたり、みそ汁に入れたりするという。

 諏訪地域は角寒天の生産で日本一を誇る。厳寒期に、海藻類のテングサやオゴノリの煮汁を固め、棒状に切り分け、収穫を終えた田んぼに並べて天日干しする。凍結と乾燥を繰り返し、水分が抜けきると角寒天が出来上がる。日を浴びてキラキラと光る光景は、冬の風物詩となっている。

 茅野市西部の宮川地区を中心とする地域は、冷え込みが厳しくて晴天率が高く、短い日照時間が寒天作りに適し、稲作農家の副業として根付いた。

 海藻類はかつて、伊豆から川をさかのぼって現在の山梨県富士川町まで舟で届けられ、馬に乗せて七十キロ以上運ばれた。「何年も保存が利く乾物。当時は寒天やのりの需要が非常に大きく、どんなに作っても売れた」。県寒天水産加工業協同組合の小池隆夫組合長(72)は内陸地でも産業として発展した理由を語る。

 角寒天は食物繊維が豊富で低カロリー。肥満の改善に効果があると脚光を浴び、組合は二〇〇六年、地元の医師三人の協力を得て健康調査をした。

 茅野市内の六十人に三カ月間、週五回以上寒天を食べてもらったところ、体重や血糖値、悪玉コレステロールの低下が見られた。調査に当たった茅野市の小口晋平医師は「短期間の調査だったが、予想以上の結果が出て驚いた。鉄分も一緒に体外に出してしまうと言われていたが、そんな弊害もみられなかった」と振り返る。

天日に干して作られる角寒天=茅野市で

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 健康面で見直される一方、需要が年々減っているのも事実。そんな地域の特産を現代風に提案して消費拡大を図る動きもある。

 角寒天を使ったスイーツやところてんを販売するカフェと工場を併設した諏訪市四賀の「トコロテラス」。角寒天製造販売会社が一五年十一月に開設し、ところてんを生産する様子も見学できる。マネジャーの倉根信一さん(44)は「角寒天の使い方やさまざまな食べ方を知ってもらい、産地が盛り上がるきっかけになれば」と話している。(中沢稔之)=第2部終わり

  <諏訪地域の角寒天> 江戸後期、玉川村(現・茅野市玉川)の小林粂(くめ)左衛門が京都で和菓子に使われていた寒天に出会い、修業を経て180年前の1837(天保8)年に製法を故郷に持ち帰ったのが始まり。生産量は1940(昭和15)年の1245トンがピーク。ゼリーなどゼラチンを使う洋菓子が好まれるようになり、より手軽な粉末寒天も普及。2013年以降は100トンを下回り、今年は85トンだった。業者数も戦前は200軒を超えていたが、現在は11軒だけになった。

 

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