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長寿しなの 彩食記

<第2部 寒さ生かす知恵> (4)凍み大根・凍り餅

◆寒暖差で独特の食感

凍み大根(右)と、保科さんが凍み大根を使って創作した一品=大町市のホテルからまつ荘で

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 あめ色に輝く野菜をほおばる。シャキシャキとした歯応え。たっぷりと染み込んだぽん酢の酸味や、カツオだしの風味が口の中に広がった。

 この野菜は「凍(し)み大根」。大町市平のホテル「からまつ荘」の料理長保科洋平さん(39)が「面白い食感。味が染み込みやすい特長も生かせる」と創作料理の酢の物に使った。

 凍み大根は信州の中でも寒さの厳しい地域で作られる。大町市は名産地の一つだ。

 地元の農家は一月下旬の大寒ごろ、皮をむいた大根にひもを通し軒下に並べて干す。昼夜の寒暖の差で凍ったり解けたりを繰り返し、一カ月ほどで完成だ。縮んでしなび、うっすらとした茶色を帯びる。

 料理研究家の横山タカ子さん(69)=大町市出身=は「干すことで縮み、生の同じ量より多くの食物繊維が取れる」と指摘する。夏ごろまで食べられる保存食となり、煮物などの材料として珍重された。

 保科さんの創作料理は、今夏に市内で開かれる北アルプス国際芸術祭を鑑賞しに訪れる観光客らに提供する。保科さんは「国内外から来た方々に、珍しいなと喜んでもらえれば」と期待する。

 大町市には、凍結と解凍を繰り返してできる特産が他にもある。凍り餅だ。

 農産物直売所「かたくり」(大町市常盤)で活動する凍り餅部会の主婦ら約三十人は一月に切り餅を作り、水に数日間浸す。和紙にくるんで十個ずつひもで結び、さおにつるして寒風にさらす。

 直売所の作業場には、五万五千個がずらりとつるされる。昼夜の寒暖の差で凍結と解凍を繰り返し、二カ月ほどで完成する。

大量につるされた凍り餅=同市の農産物直売所「かたくり」で

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 凍結と解凍を繰り返すため、切り餅は中に空気の層ができる。調理しなくても食べることができ、サクサクとした食感だ。水に浸してフライパンで焼いたり煮たりすれば、普通の餅のようにも食べられる。

 凍り餅部会長の栗林みち子さん(63)は「昔は忙しい農作業の合間に、手軽に食べられ腹持ちの良い食品として重宝した」と話す。

 民家の軒下に凍み大根や凍り餅が並ぶ光景はかつて、市内の農村で普通に見られた風物詩だった。しかし、近年は二つとも作る人がめっきり減った。

 栗林さんは「小さいころ、風邪をひくと母親が凍り餅を柔らかくして食べさせてくれた」と思い出を語り、地域の伝統を守る決意を新たにしている。(林啓太)

 

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