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ロボカップ2017名古屋世界大会

<ロボットのいる世界> (上)ペッパーを育てる

ペッパーの掛け声に合わせ、体操をするお年寄りたち=名古屋市天白区の老人保健施設サンタマリアで

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 ヒト型ロボットのペッパーには、「兄貴分」と言えるロボットがある。十年ほど前からロボカップに出て、サッカー競技などで技術を蓄積した「ナオ」だ。ソフトバンクは二〇一二年、ナオを開発した仏アルデバラン・ロボティクス(現ソフトバンクロボティクスヨーロッパ)を買収し、両社の共同開発で生まれたのがペッパーだった。

 ペッパーは一四年六月、感情を認識できる世界初のロボットとして発表される。一年後には自ら感情を持つようになり、本体価格十九万八千円(税別)で発売された。法人向けに貸し出しもある。

 「睡眠はしっかりとれていますか? ぼくは緊張して少し眠れませんでした」。名古屋市天白区の老人保健施設サンタマリアで七月初旬、ペッパーがお年寄り約三十人にユーモアを交えて話しかけた。レクリエーションの進行役として、ラジオ体操をしたり、クイズを出したりと入所者を楽しませていた。

 パルロ(富士ソフト)オハナス(タカラトミー)など、会話できるロボットは続々と登場している。国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」の大規模実証試験では、こうしたロボットと交流した高齢者の34%で、歯磨きや着替えなど生活の自立度が改善した。

 ペッパーも入所者を元気づけられそうだが、別の介護施設からは「お年寄りと会話のテンポが合わない」と聞く。人工知能(AI)で会話を学ぶが、その場の間を取るのは難しい。

 サンタマリアにいるペッパーなら、ゆっくりと話せる。カラオケ機器のエクシング(名古屋市)が提供する専用アプリを入れ、後から機能を高めていた。インターネットとつながっている強みは、スマートフォンと似ている。

 レンタル料やアプリ料などで月七万円ほどかかるが、レクリエーション中にスタッフが他の仕事に手を回せる。北村大介介護士長(41)は「コストをかける価値はある」と話す。

 販売元のソフトバンクロボティクス(東京)の蓮実一隆取締役(51)は「ぼくらがどんなに頑張っても限界がある」と語る。会社の枠を超えてアイデアが生まれるのは望むところ。「知恵と工夫で一緒に育ててほしい」と呼びかける。

 世界中の研究者が集まるロボカップは、ペッパーを育てる格好の場となる。生活支援の競技「@(アット)ホーム」では、実社会への普及をさらに促すため、名古屋大会から同じロボットで性能向上を競う部門が加わった。その一つにペッパーが選ばれた。

 「ペットボトルを取ってきて」「私に付いてきて」…。人の呼びかけを忠実にこなすため、室内のソファやテーブルを避けて動き、ドアも開閉しないといけない。

 人と触れあう能力を優先したペッパーは、握力が弱く、物をつかんで動かすのに苦戦しそう。弱点を少しでも補おうと、出場を予定する中国やドイツなど七チームが、基本ソフトの向上や新アプリ開発に励んでいる。研究成果によっては、人を癒やす以外の能力を引き出せる可能性がある。

 蓮実取締役は「人とどう一緒に生きていけるかがペッパーの存在価値のすべて。しごきを受けて成長させたい」と言う。心技体を鍛える日々は続く。

 <ロボカップ> 人工知能(AI)を搭載した自律移動ロボットの競技で、初の世界大会は1997年に名古屋で開かれた。毎年、世界各地で開催されており、大会目標は2050年までにヒト型ロボットでサッカーのワールドカップ(W杯)優勝チームに勝つこと。27日開幕の名古屋大会ではサッカー、レスキュー、@ホームなど五つの競技を行い、世界約40カ国・地域から約3000人が参加する。@ホームは06年に設けられた。

 

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