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鉄道まるっと切り抜き帳

3月末で130年近い歴史に幕 JR石勝線夕張支線

3月末で廃線となるJR石勝線夕張支線。夕張駅のホームは鉄道ファンなどでにぎわう=夕張市で

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 真っ暗な雪原に青白い光の筋が差し、立ち枯れたカラマツと幻想的な池が浮かび上がった。「おおっ」とわきあがる歓声。氷点下5度、凍り付いた空間が白や青のライトアップで刻々と姿を変える。夏の間は水面の青さで人気の北海道美瑛(びえい)町の「青い池」は、雪と氷に閉ざされた冬も海外からのお客さんを中心に熱気であふれていた。

 ブルーリバーの異名を持つ美瑛川。水に含まれる微粒子が太陽光を乱反射して美しい青色になるという。同町観光協会の庄司篤史事務局長(46)によると、1988〜89年の十勝岳噴火による砂防工事で、美瑛川の川筋を付け替えた際に偶然小さな青い池ができた。山深い場所だが観光資源になるとひらめいた役場が少しずつ整備を進めたが、当初は知る人ぞ知る場所にすぎなかった。

 ブレークの端緒は青い池の写真が米アップル社のパソコン壁紙に採用されたこと。世界の各地から人が来るようになり、「何が幸いするか分かりません」と庄司さん。冬場のライトアップは3年前から。パッチワークのような広大な丘陵農地の風景を楽しむ夏の観光は定番だが、ライトアップで青い池を幻想的に再現することで真冬の観光の目玉に育て上げた。

 冬の目玉といえば、美瑛町の北、旭川市の旭山動物園。週末は動物園行きのバスが朝から満員になる人気ぶりだ。雪上のペンギン散歩や、動物たちの「もぐもぐタイム」に大人も子どもも感嘆の声を上げる。

 水中トンネルを行くアザラシが、気になる子どもを見つけるとじゃれつくしぐさをしたり、のんびりのイメージのカバが見せる水中での軽快さに驚く。「カバのおなかを下から見たり、キリンの足元を間近に見られたりする動物園はここだけ」と坂東元(げん)園長(57)。金網に座るユキヒョウは真下から見上げたら、毛皮のソファのように見えた。「動物の多彩な動きや魅力的な表情を自然に見せたい」と、動物に心地よい環境を工夫する。解説や案内板はほぼ全部手作りで、イラストや写真を多用し親近感がわく作品ばかり。「経費節減で始めたんですけどね」と、坂東さんは笑った。

 130年近い歴史を持つ鉄路が3月末で廃線になると聞き、夕張市のJR石勝線夕張支線に足を延ばしてみた。1両の気動車を目当てに鉄道ファンらしき人たちでほぼ満席だった。

 終着の夕張駅で「お帰りなさい。」のメッセージが入った手作り記念品(つまようじ入れ)を乗客1人1人に手渡し、黄色いハンカチを振る元気な女性に出会った。市内の観光ガイドや語り部を務める松宮文恵さん(71)。夕張が舞台になった映画「幸福の黄色いハンカチ」を地で行く。

 市の財政破綻後の2009年から、有志で活動を始めたという。ユーモアあふれる軽妙な語り口で、石炭博物館など市内各地で夕張の歴史を伝え続ける。「再生に向け行動して街を守るのは市民の自分たちだべさ」

 夕張をたつ時、私も松宮さんが振る黄色のハンカチに見送られた。急速な人口減少と高齢化が進む夕張。鉄道がなくなるという苦境でも、アイデアを絞って街の再生に熱を入れる人たちに勇気づけられる旅だった。

 (文・写真 五十住和樹)

 

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