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鉄道まるっと切り抜き帳

福井地震発生直前の切符所持 あわら・鬼瓦職人西郡さん

福井地震が発生した当日の国鉄の切符

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「よく生きていたものだと思う」と70年前を振り返る西郡さん=あわら市春宮1の西郡鬼瓦工房で

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 「自分ながら、よう生きていたと思います」。あわら市で越前鬼瓦を作り続ける「鬼師」の第一人者・西郡正義さん(89)は、福井地震を振り返った。その手には色あせた切符。西郡さんが、長野・善光寺へ出掛ける母親に頼まれ、地震発生の数時間前に買ったものだ。「地震はいつ起こるか分からん」。見るたびに、あの日の衝撃がよみがえる。 

 当時、西郡さんは瓦産業に従事し、工場で被災した。「地面にうずくまった同僚の腕を引っ張り、離れた途端に工場がつぶれてきた」。安堵(あんど)感で脱力したのも一瞬。崩壊した隣の繊維工場から「助けてー」といくつもの悲鳴。皆で必死に救助したが1人は亡くなった。

 近くの国鉄細呂木駅前も火事に。「数時間前に、切符を買いにいったのに」。火の粉を避けながら、貨物倉庫で荷運びを手伝った。翌日、食糧を受け取りに向かった金津地区の中心部はがれきと化し、まだ火がくすぶっていた。「あまりの光景に、金津が震源だと思った」。集まった人々から、丸岡や福井の惨状を聞いた。

 福井・片町の映画館が倒壊、炎上して大勢が死んだと聞き、驚いた。3日前の25日、友人と行ったばかりだった。戦時体制でお蔵入りになっていた人気映画の上映とあって満員。「蒸し暑かったが夢中になって見た。犠牲者も地震が起きるなんて夢にも思わずにいたんだろう」

 家は壊れたが、家族は無事だった。終戦に地震が重なる苦難の中、建物の取り壊しなど日雇い仕事には事欠かなかった。「瓦産業も上向きになって、朝から晩まで働いた」。あれから70年。「天災は忘れた頃にやってくる、という。私たちは天災、人災にかかわらず、常に危険にさらされているのかもしれない」と、心構えの大切さを訴える。

(北原愛)

 

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